- Date: Sun 15 04 2012
- Category: 映画・DVD 東宝特撮映画
- Community: テーマ "特撮・SF・ファンタジー映画" ジャンル "映画"
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山本迪夫『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』
先頃、無事に完結した「東宝特撮映画DVDコレクション」全六十五巻だが、観る方はそんな簡単にはいかないわけで、本日もなんとか一本消化。
ものは山本迪夫監督の『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』。公開は1970年。
本作は七十年代に制作された「血を吸う」シリーズの第一作。吸血鬼を題材にした、東宝特撮映画の中でも屈指の異色シリーズだ。当時はそれなりにヒットしているが、いかんせん所詮は徹底したB級テイスト。いまでは知る人ぞ知るシリーズとなってしまったが、これがまた悪くないのである。
雷雨の夜、婚約者の夕子を訪ね、蓼科の山中にある生家を訪れた和彦。そこには夕子の母親とその下僕が二人きりで暮らすばかり。なんと夕子は半月ほど前に交通事故で亡くなったというのだ。ところが和彦はその夜、泊まった屋敷の窓から死んだはずの夕子を目撃し……。
一方、なかなか帰京しない和彦を心配する妹の圭子。彼女は恋人の高木浩を誘って屋敷を訪れるが、夕子の母から聞かされたのは、和彦が既に帰ったという話。しかし和彦のカフスボタンを発見した二人は、車の故障を口実に屋敷に泊めてもらい、密かに調査を開始しようとする……。

人里離れた山中の洋館を舞台に繰り広げられるゴシック・ホラー。
設定そのものは海外ホラーからいろいろと拝借している感じ。ただ、それらを海外ホラーのごとくたたみかけるように見せるのではなく、国産の怪談の手法とミックスして見せているのが印象的だ。
例えば、まずはショッカー的な仕掛けで登場人物の男(もちろん観客もいっしょに)をドッキリさせる。その男が慌てて逃げ出し、ようやく立ち止まって肩で息を切らせている……ここで一瞬の間があり、何気なく横を見やると……などという演出はわかっちゃいるが怖いわけである。そんなに斬新な手ではないけれど組み合わせが巧い。今できることを最高の状態でやってみましたという感じか。
キャストもいい。導入から中村敦夫だし、それを受ける南風洋子に高品格、一応は主人公にあたる二人には松尾嘉代に中尾彬という布陣。現在からすると濃すぎるほどのメンバーだが、当時はさすがにそれほどではなく、適度なアクの強さが心地よい。
そして何といってもヒロイン夕子を演じる小林夕岐子の存在感。この女優さん、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』では原住民のお姉ちゃんを演じたり、『ウルトラセブン』ではアンドロイド少女を演じたりと、東宝特撮系ではけっこう特殊な役柄が多い人なんだが、本作においては決定的なハマリ役。役柄上ほぼセリフもないが、その微笑や憂いを含んだ透明感溢れる表情が絶品である。薄幸の美少女の、まさに典型。これがもう一方のヒロイン松尾嘉代と役柄が逆だったら、ここまでの作品にはならなかっただろう(笑)。
けっこう褒めてはいるが、もちろん欠点もいろいろある。なんたってB級ですから。
決定的なのはヒロイン夕子の秘密で、これがけっこう胡散臭い理屈で押し通してしまうのがなんとも(苦笑)。それに絡んでラストもなんでこうなるの?という疑問は否めない、というか夕子の言動(いや”言”はないか)に意外と一本筋が通っていない嫌いがある。ううむ。
でもいいのである。本作は演出やキャストの熱演をこそ味わい、ゾクッとくればいい映画なのだから。
最後に蛇の足。
吸血鬼が題材のシリーズといいながら、本作に関してはまったく吸血鬼は関係ない。単なる比喩的な意味合いに留まる。
上で腐したメインのネタだが、実はポーの「ヴァルドマアル氏の病症の真相」が元ネタらしい。まじか。
ものは山本迪夫監督の『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』。公開は1970年。
本作は七十年代に制作された「血を吸う」シリーズの第一作。吸血鬼を題材にした、東宝特撮映画の中でも屈指の異色シリーズだ。当時はそれなりにヒットしているが、いかんせん所詮は徹底したB級テイスト。いまでは知る人ぞ知るシリーズとなってしまったが、これがまた悪くないのである。
雷雨の夜、婚約者の夕子を訪ね、蓼科の山中にある生家を訪れた和彦。そこには夕子の母親とその下僕が二人きりで暮らすばかり。なんと夕子は半月ほど前に交通事故で亡くなったというのだ。ところが和彦はその夜、泊まった屋敷の窓から死んだはずの夕子を目撃し……。
一方、なかなか帰京しない和彦を心配する妹の圭子。彼女は恋人の高木浩を誘って屋敷を訪れるが、夕子の母から聞かされたのは、和彦が既に帰ったという話。しかし和彦のカフスボタンを発見した二人は、車の故障を口実に屋敷に泊めてもらい、密かに調査を開始しようとする……。

人里離れた山中の洋館を舞台に繰り広げられるゴシック・ホラー。
設定そのものは海外ホラーからいろいろと拝借している感じ。ただ、それらを海外ホラーのごとくたたみかけるように見せるのではなく、国産の怪談の手法とミックスして見せているのが印象的だ。
例えば、まずはショッカー的な仕掛けで登場人物の男(もちろん観客もいっしょに)をドッキリさせる。その男が慌てて逃げ出し、ようやく立ち止まって肩で息を切らせている……ここで一瞬の間があり、何気なく横を見やると……などという演出はわかっちゃいるが怖いわけである。そんなに斬新な手ではないけれど組み合わせが巧い。今できることを最高の状態でやってみましたという感じか。
キャストもいい。導入から中村敦夫だし、それを受ける南風洋子に高品格、一応は主人公にあたる二人には松尾嘉代に中尾彬という布陣。現在からすると濃すぎるほどのメンバーだが、当時はさすがにそれほどではなく、適度なアクの強さが心地よい。
そして何といってもヒロイン夕子を演じる小林夕岐子の存在感。この女優さん、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』では原住民のお姉ちゃんを演じたり、『ウルトラセブン』ではアンドロイド少女を演じたりと、東宝特撮系ではけっこう特殊な役柄が多い人なんだが、本作においては決定的なハマリ役。役柄上ほぼセリフもないが、その微笑や憂いを含んだ透明感溢れる表情が絶品である。薄幸の美少女の、まさに典型。これがもう一方のヒロイン松尾嘉代と役柄が逆だったら、ここまでの作品にはならなかっただろう(笑)。
けっこう褒めてはいるが、もちろん欠点もいろいろある。なんたってB級ですから。
決定的なのはヒロイン夕子の秘密で、これがけっこう胡散臭い理屈で押し通してしまうのがなんとも(苦笑)。それに絡んでラストもなんでこうなるの?という疑問は否めない、というか夕子の言動(いや”言”はないか)に意外と一本筋が通っていない嫌いがある。ううむ。
でもいいのである。本作は演出やキャストの熱演をこそ味わい、ゾクッとくればいい映画なのだから。
最後に蛇の足。
吸血鬼が題材のシリーズといいながら、本作に関してはまったく吸血鬼は関係ない。単なる比喩的な意味合いに留まる。
上で腐したメインのネタだが、実はポーの「ヴァルドマアル氏の病症の真相」が元ネタらしい。まじか。
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「血を吸う」シリーズはあと二本残ってますし、ゴジラはデストロイア以降まるまる、あとは『ミカドロイド』とか『怪談』、『大冒険』と先は長いです。そのあとは007全作も計画中なんですが(笑)。
それはともかく、確かにこの映画、作りが丁寧です。変にバタバタせず、落ち着いた日本流ゴシックホラーに仕上がっていますよね。納得の一本です。
『アンドロギュノスの裔』は楽しんでいただけたようで何よりです。夜寝る前に短篇を少しずつ、というのは、この本の最高に贅沢な読み方じゃないでしょうか。