- Date: Sat 19 07 2014
- Category: 海外作家 ライス(ジェフ)
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ジェフ・ライス『事件記者コルチャック』(ハヤカワ文庫)
ジェフ・ライスの『事件記者コルチャック』を読む。
オールドファンならご存じだろうが、『事件記者コルチャック』とは1970年代に放映されたSFテレビドラマである。内容は極めてシンプル。冴えない中年新聞記者のコルチャックが毎回、不思議かつ怪奇な事件に遭遇するが、不屈の記者魂と行動力で事件の真相を突きとめるというものだ。
比較的新しい作品でいうと『X-ファイル』、古くは『ウルトラQ』のような内容を想像してもらえればほぼ間違いはない。
見どころはいろいろあるけれど、まずは主人公コルチャックのキャラクターだろう。私生活はだらしないけれど、一本筋の通った男が上司や警察とぶつかりながらも信念を貫き通す。むちゃくちゃベタだけれども、やはりこういう痛快さは魅力だ。
また、ノリ的にはライトなB級ハードボイルドといったところだが、これにホラー風味が加わるのがミソ。組み合わせの妙といってもよい。シリアスなホラー物ならいくらでも思いつくけれど、こういうライトな味つけでSFホラーを成立させたところが新鮮である。
シリーズの脚本陣にはリチャード・マシスンやロバート・ブロック、ビル・S・バリンジャーといったミステリファンにはお馴染みのライターが揃っているのだが、彼らの果たした役割は決して小さくないはずだ。
本書はそんなテレビドラマの原作本なのだが、実はちょっと成り立ちが複雑である。
本書には「ラスヴェガスの吸血鬼」と「シアトルの絞殺魔」という二つの作品が収められている。そのどちらも本シリーズではなく単発のパイロット版が元になっているのだが、「ラスヴェガスの吸血鬼」は紛れもなくジェフ・ライスの原作。この作品がTVプロデューサーの目にとまり、単発の長篇ドラマが作られた。そのときの脚本を担当したのが、あのリチャード・マシスンである。
そして「シアトルの絞殺魔」はリチャード・マシスンが書いたオリジナル脚本を、今度はジェフ・ライスがノヴェライズしたものである。
つまりTVドラマの原作とノヴェライズがカップリングされているわけで、しかもジェフ・ライスとリチャード・マシスンが相互に関与しているのが面白い。ここにはなかなか複雑な事情があるのだが、要は駆け出しライターのジェフ・ライスが著作権の問題で損をしたため、先輩のマシスンがフォローした結果なのである。このあたりの事情は解説に詳しいので、興味ある方はぜひそちらをどうぞ。

さて、話を肝心の中身に移すと、テレビ版の雰囲気をしっかり再現した物語となっている(当たり前と言えば当たり前だが)。テレビ版では追い切れない心理描写が多く盛り込まれているので、その分感情移入もしやすいのがいい。
ただ、そうはいっても、派手なアクションシーンなどを読むと、やはり基本的には映像向きの作品だなとは思ってしまう。「ラスヴェガスの吸血鬼」では吸血鬼と警官たちの格闘シーンがあるけれども、吸血鬼が肉弾戦で複数の警官と闘うシーンというのはおそらく初めて読んだはず。吸血鬼を扱っているとはいえ、上で書いたように、ノリはあくまでB級ハードボイルドというのが楽しい。
これでもう少し吸血鬼との決着のつけ方に工夫があるとか、ミステリ的な捻りがあるとなお良かったが、残念ながらそこまでの期待に応えてくれてはいなかった。
そういう意味では「シアトルの絞殺魔」の方が多少なりともテクニカルで、ここにジェフ・ライスとマシスンの差があるといえるだろう。
なお、本シリーズはジョニー・デップ主演で映画化の計画があるという。確かにコルチャックの頑固ながらも軽妙な感じというのは、ジョニー・デップに打ってつけかも。ちょっと楽しみ。
オールドファンならご存じだろうが、『事件記者コルチャック』とは1970年代に放映されたSFテレビドラマである。内容は極めてシンプル。冴えない中年新聞記者のコルチャックが毎回、不思議かつ怪奇な事件に遭遇するが、不屈の記者魂と行動力で事件の真相を突きとめるというものだ。
比較的新しい作品でいうと『X-ファイル』、古くは『ウルトラQ』のような内容を想像してもらえればほぼ間違いはない。
見どころはいろいろあるけれど、まずは主人公コルチャックのキャラクターだろう。私生活はだらしないけれど、一本筋の通った男が上司や警察とぶつかりながらも信念を貫き通す。むちゃくちゃベタだけれども、やはりこういう痛快さは魅力だ。
また、ノリ的にはライトなB級ハードボイルドといったところだが、これにホラー風味が加わるのがミソ。組み合わせの妙といってもよい。シリアスなホラー物ならいくらでも思いつくけれど、こういうライトな味つけでSFホラーを成立させたところが新鮮である。
シリーズの脚本陣にはリチャード・マシスンやロバート・ブロック、ビル・S・バリンジャーといったミステリファンにはお馴染みのライターが揃っているのだが、彼らの果たした役割は決して小さくないはずだ。
本書はそんなテレビドラマの原作本なのだが、実はちょっと成り立ちが複雑である。
本書には「ラスヴェガスの吸血鬼」と「シアトルの絞殺魔」という二つの作品が収められている。そのどちらも本シリーズではなく単発のパイロット版が元になっているのだが、「ラスヴェガスの吸血鬼」は紛れもなくジェフ・ライスの原作。この作品がTVプロデューサーの目にとまり、単発の長篇ドラマが作られた。そのときの脚本を担当したのが、あのリチャード・マシスンである。
そして「シアトルの絞殺魔」はリチャード・マシスンが書いたオリジナル脚本を、今度はジェフ・ライスがノヴェライズしたものである。
つまりTVドラマの原作とノヴェライズがカップリングされているわけで、しかもジェフ・ライスとリチャード・マシスンが相互に関与しているのが面白い。ここにはなかなか複雑な事情があるのだが、要は駆け出しライターのジェフ・ライスが著作権の問題で損をしたため、先輩のマシスンがフォローした結果なのである。このあたりの事情は解説に詳しいので、興味ある方はぜひそちらをどうぞ。

さて、話を肝心の中身に移すと、テレビ版の雰囲気をしっかり再現した物語となっている(当たり前と言えば当たり前だが)。テレビ版では追い切れない心理描写が多く盛り込まれているので、その分感情移入もしやすいのがいい。
ただ、そうはいっても、派手なアクションシーンなどを読むと、やはり基本的には映像向きの作品だなとは思ってしまう。「ラスヴェガスの吸血鬼」では吸血鬼と警官たちの格闘シーンがあるけれども、吸血鬼が肉弾戦で複数の警官と闘うシーンというのはおそらく初めて読んだはず。吸血鬼を扱っているとはいえ、上で書いたように、ノリはあくまでB級ハードボイルドというのが楽しい。
これでもう少し吸血鬼との決着のつけ方に工夫があるとか、ミステリ的な捻りがあるとなお良かったが、残念ながらそこまでの期待に応えてくれてはいなかった。
そういう意味では「シアトルの絞殺魔」の方が多少なりともテクニカルで、ここにジェフ・ライスとマシスンの差があるといえるだろう。
なお、本シリーズはジョニー・デップ主演で映画化の計画があるという。確かにコルチャックの頑固ながらも軽妙な感じというのは、ジョニー・デップに打ってつけかも。ちょっと楽しみ。
もちろん『ラスヴェガスの吸血鬼』のドンパチ感も嫌いじゃないです。特に吸血鬼と警官たちの格闘シーンにはしびれました。あれはぜひとも映像版を観てみたいものですが、ブルーレイやDVDにはなってないんですよね確か。