- Date: Wed 03 09 2014
- Category: 海外作家 フリーマン(オースティン)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
- Response: Comment 4 Trackback 0
R・オースティン・フリーマン『猿の肖像』(長崎出版)
長崎出版のGem Collectionから久々に読み残しを消化。ものはR・オースティン・フリーマンの『猿の肖像』。
こんな話。ある夜、診療に出かけたオールドフィールド医師は、帰り道で瀕死の警官を発見する。付近で起こった宝石泥棒の犯人に殴打されたらしいが、事件は未解決のまま、いつしかオールドフィールドも事件のことを忘れていった。
そんなる日、オールドフィールドは原因不明の腹痛に悩む陶工のピーター・ガネットを診療する。処方の効き目もなく、困ったオールドフィールドは恩師であるソーンダイク博士へ相談する。ソーンダイクは病状からそれが砒素中毒であると見抜き、ガネットは命をとりとめるが……。

いかにもオースティン・フリーマンらしい、実にオーソドックスな本格ミステリ。相変わらず地味ではあるが、結末に至るまでの組み立て、あるいは伏線といったものがきちんとまとまっており、真っ当な本格探偵小説を書くんだというフリーマンの意志がしっかり伝わってくる。
いかんせん注目すべきトリックなどがなく、それほど複雑な話でもないので、ラストはかなり想像がつきやすい。これが書かれたのが1938年だが、その当時にあってもサプライズの乏しさはやや苦しいものがあるだろう。
ただ、繰り返しになるが、本格ミステリとしては非常にまとまっており、好感の持てる作品である。浮世の煩わしさから離れ、しばしクラシックの雰囲気に浸りたい向きにはおすすめではなかろうか。
味付けの部分ではあるが、当時、流行していた新しい芸術運動とか陶芸についての蘊蓄や描写が思いのほか多いのは興味深い。フリーマン自身はそういった新しい波に否定的だったのだろうなというのが、文章の端々から感じられ、ちょっと面白かった。
ちなみにタイトルの"猿の肖像"というのは、作中に出てくる陶器の置物のこと。実際どんなものかはわからないが、以前に読んだジェフリー・ディーヴァーの『石の猿』のジャケット絵のインパクトがあったせいで、読んでいる間、ついつい脳内変換されて困った(苦笑)。
こんな話。ある夜、診療に出かけたオールドフィールド医師は、帰り道で瀕死の警官を発見する。付近で起こった宝石泥棒の犯人に殴打されたらしいが、事件は未解決のまま、いつしかオールドフィールドも事件のことを忘れていった。
そんなる日、オールドフィールドは原因不明の腹痛に悩む陶工のピーター・ガネットを診療する。処方の効き目もなく、困ったオールドフィールドは恩師であるソーンダイク博士へ相談する。ソーンダイクは病状からそれが砒素中毒であると見抜き、ガネットは命をとりとめるが……。

いかにもオースティン・フリーマンらしい、実にオーソドックスな本格ミステリ。相変わらず地味ではあるが、結末に至るまでの組み立て、あるいは伏線といったものがきちんとまとまっており、真っ当な本格探偵小説を書くんだというフリーマンの意志がしっかり伝わってくる。
いかんせん注目すべきトリックなどがなく、それほど複雑な話でもないので、ラストはかなり想像がつきやすい。これが書かれたのが1938年だが、その当時にあってもサプライズの乏しさはやや苦しいものがあるだろう。
ただ、繰り返しになるが、本格ミステリとしては非常にまとまっており、好感の持てる作品である。浮世の煩わしさから離れ、しばしクラシックの雰囲気に浸りたい向きにはおすすめではなかろうか。
味付けの部分ではあるが、当時、流行していた新しい芸術運動とか陶芸についての蘊蓄や描写が思いのほか多いのは興味深い。フリーマン自身はそういった新しい波に否定的だったのだろうなというのが、文章の端々から感じられ、ちょっと面白かった。
ちなみにタイトルの"猿の肖像"というのは、作中に出てくる陶器の置物のこと。実際どんなものかはわからないが、以前に読んだジェフリー・ディーヴァーの『石の猿』のジャケット絵のインパクトがあったせいで、読んでいる間、ついつい脳内変換されて困った(苦笑)。
- 関連記事
-
-
R・オースティン・フリーマン『キャッツ・アイ』(ちくま文庫) 2019/05/12
-
R・オースティン・フリーマン『オシリスの眼』(ちくま文庫) 2017/05/05
-
R・オースティン・フリーマン『猿の肖像』(長崎出版) 2014/09/03
-
オースティン・フリーマン『ポッターマック氏の失策』(論創海外ミステリ) 2013/03/17
-
R・オースティン・フリーマン『ペンローズ失踪事件』(長崎出版) 2008/05/03
-
コメントありがとうございます。「海外クラシック・ミステリ探訪記」はいつも楽しませていただいております。
写真の件ですが、調べてみるといろいろ出てきました。さすがに『石の猿』とはずいぶん違っていましたが(笑)、雰囲気は悪くないですね。
まあ、それはともかく、トリックとロジックはついついセットで考えることが多いですが、正直ロジックだけで勝負するのは厳しいですよね。大がかりなトリックはなくてもかまわないですが、小説としての魅力が何らかの形でないことには、読者にアピールするのは難しいです。フリーマンの作品でもやはり成功しているものはプラスαが感じられます。
ところで長崎出版が倒産しているとは不覚にもまったく知りませんでした。ミステリはともかく「こびとずかん」あたりは人気だったので、まさかそういう状況だとは夢にも思いませんでした。仰るように、Gem Collectionもこれで絶版、稀覯本の道を歩みそうですね……。