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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

さいたま文学館「江戸川乱歩と猟奇耽異」

 NHK-BSで放映された「シリーズ江戸川乱歩短編集」を観たり、『うつし世の三重 江戸川乱歩三重県随筆集』を読んだりと、最近、急に乱歩づいているが、本日も乱歩絡みの話題である。さいたま文学館で始まった「江戸川乱歩と猟奇耽異」展を見てきたので、そのレポートなど。
 この展示会については最近、知ったばかりなのだが、もともとは1月16日〜3月7日という会期だったらしく、それがコロナの影響で3月24日〜4月18日に変更されたもの。通常どおり開催されていたらすっかり見逃していたところなので、これはラッキーであった。先日、東京で唯一取扱している書店で『うつし世の三重 江戸川乱歩三重県随筆集』を買えたこともそうだが、少し探偵小説の神様から守られているのかもしれない(笑)。

 それはともかく。
 本展示会は乱歩の没後55年記念ということで、そのテーマは探偵小説と一般文壇の繋がりに置かれている。早い話が乱歩と純文学作家の交流に着目したものだ。だから乱歩以外の作家は、佐藤春夫や坂口安吾、谷崎潤一郎といった純文学畑がメイン。それらの作家が探偵小説に残した足跡、あるいは乱歩との交流の証を、生原稿や書簡という形で目にすることができる。
 もちろんこの辺の作家と探偵小説の関係はザクっとは知っているし、そういったアンソロジーもあるぐらいだが、久米正雄や正宗白鳥、萩原朔太郎あたりはこういう形で取り上げられることも少ないし、改めて見るとやはり面白い。
 特に朔太郎と乱歩の親密さにはちょっと驚いた。少年愛、酒に関してだけは不一致だったらしいが(笑)、それ以外はすべてに趣味が合致し、初めて会ったその日の夜遅くまで新宿のゲイバーなどで盛り上がったという。ただ、そもそも乱歩の作品に感激した朔太郎が、自ら乱歩に会いにいったくせに、後で「二人の関係はなるべく内密に」と乱歩に頼んだというのがひどい(苦笑)。

 まあ、そんなエピソードなども知ることができたし、ともあれ内容的には悪くない。残念なのはスケール的にそれほど大きくないところと、埼玉県桶川市というアクセスぐらいか。しかし常設展示の方でもミステリ関係があるし、近場の方は見ておいて損はないだろう。多少、遠い方でも、桶川名物のうどんを食しがてら出かけてみてはいかがだろうか。
 ちなみにTwitterで呟いた入場制限だが、慎重なのはよいけれど、あの人の少なさで制限かけるのはさすがにいかがなものかなぁ。

江戸川乱歩と猟奇耽異03
▲さいたま文学館。建物自体は素晴らしいのだが、どうにも活気が……

江戸川乱歩と猟奇耽異02
▲入り口にあったのぼり。個人的にはもっともっと煽ってほしい。

江戸川乱歩と猟奇耽異01
▲お土産の図録。左は付録のセル製しおり。これがなかなかいい。

 さあ、次は横浜の神奈川近代文学館で開催されている『創刊101年記念展 永遠に「新青年」なるもの』だな。
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Comments
 
ううむ、今はオンラインでもいろいろイベントがありますが、わたしもやはり生で見たい方です。そもそも展示会がオンラインで開催されても、図録を見てるのと変わりませんしね。
ただ、ようやくこの手のイベントが再開され始めたのはいいけれど、また感染者数も悪化していますからね。悩ましいところです。
ちなみに「江戸川乱歩と猟奇耽異」はわたしが行ったときは場内はがら空き、むしろ入場規制で並んでいる状態がはるかに密という、いかにもお役所的な対応にがっかりしました。
 羨ましき限り。
 こういう催し物は、やはり現地に行って直に見てみたいものです。
 元々が東北の地方都市住まいなので遠距離なのはありますが、仕事柄、会社から一都三県に加え、現在では宮城、山形も行っちゃ駄目の御触れが出ておりますので、基本県外へは出られませぬorz

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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