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 『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)が出揃ったので、今年も三つの平均順位を出してみた。基本ルールはこんなところである。

・各ランキング20位までを対象に平均順位を出したもの
・管理人の好みで海外部門のみ実施
・原書房の『本格ミステリ・ベスト10』はジャンルが本格のみなので対象外としている
・いち媒体のみのランクインはブレが大きくなるため除き、参考として記載した

2022年度ランキング比較

 今年は三年振りに三冠独占はならなかったものの、それでもホロヴィッツの『ヨルガオ殺人事件』は強かった。もちろん面白い作品だし、個人的にも昨年の『その裁きは死』よりも良い作品だとは思うのだが、やはり同じ作家の同傾向の作品が四年も続くのはなあ、という気持ちになってしまうのだ。
 他の作品がだらしないというのなら仕方ないけれど、今年も昨年同様、ライバルとなりうり作品がけっこう多かっただけにちょっと予想外だった。凝った仕掛けではあるが、万人に受け入れられやすいサプライズと親しみやすさ、それが多くの投票者からまんべんなく得票を集めているのだろう。

 昨年も少し書いたのだが、ホロヴィッツの作品がそもそも特殊であり、それでいて高い娯楽性を備えているため、単なる超B級作品あたりでは難しいかもしれない。この牙城を崩すとしたら強烈な知的興奮かつヒューマンドラマによる感動を与えてくれる大作が必要かもしれない。例えば『薔薇の名前』のような。
 今年でいえば、まあ自分の読んだ範囲ではあるが、『父を撃った12の銃弾』『悪童たち』『第八の探偵』『狼たちの城』あたりが勝てる可能性を持った作品だと思っていたが(自分の評価や好みではなく、あくまでランキング予想として)、それらを差し置いてトップの一角に食い込んだのが『自由研究には向かない殺人』というのは意外だった。これ、自分も大好きな作品で個人的にもこちらを上位に推したい作品だが、ミステリ部分の弱さがあるので、ランキング争いでは不利かなと予想していたのだ。
 ちなみに『自由研究には向かない殺人』もボリュームは相当ながら、それを気にさせないキャラクターと語り口があり、それが万人に受けた印象がある。もしかすると、ミステリの世界も世の中の流れにのって、傷つきにくい優しい作品が求められているのかもしれない。

 あと、アジア圏の作品が増えてきたのをあらためて実感したランキングでもあった。アジア圏といってもほぼ華文ミステリだし、そもそも優れた作品しか紹介されていないはずなので、レベルが高いのは当然でもある。もちろん全体でみればまだまだだろうが、既成のミステリにないアイデアを備えた作品が多いのが魅力であり、トップクラスの作品は間違いなく欧米に比べても遜色がない。この波がアジア全体に広がると、また違った魅力がミステリに加わるような気がする。

 ところでランキングの上位はいつも似たようなものだが、下位はけっこうランキングによって特徴が出る……と思っていたら、今年は下位も案外似ていて笑ってしまう。
 以前だと警察小説や犯罪小説が有利な「このミス」、話題作や大御所、受賞作品が有利な「文春」、中道の「ミスマガ」みたいなイメージで(まったくの個人的な印象です)、ベストテン作品を見ただけでどのランキングか当てる自信があったけれど、今年のはおそらく無理。
 ただ、そうなると本当に複数のランキングが必要なくなるので、雑誌の特集でやっている「文春」や「ミスマガ」はともかく、「このミス」は真剣に考えるときではないのかな。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 クラシックミステリの同人誌『Re-Clam vol.7』、その別冊の『Re-Clam eX vol.3』が先日到着。本日は『ミステリマガジン750号』を購入。
 『Re-Clam vol.7』は森英俊氏とジョゼフ・カミングスの特集、『Re-Clam eX vol.3』はクロフツの短篇特集、『ミステリマガジン750号』は年末恒例「ミステリが読みたい!2022年版」である。

 

 『Re-Clam vol.7』は相変わらず企画が面白い。ジョゼフ・カミングズの作家特集などはまあ普通だが(いや、商業誌では決して特集できるような作家ではないから、全然普通じゃないんだけど)、森英俊特集というのがやはり驚く。
 森氏といえば、もちろん海外のクラシックミステリに関する紹介や翻訳などでその名は知られているし、その貢献度は素晴らしいと思うが、基本的には裏方、しかもまだまだ現役でやっている方だ。だから作家であればともかく、評論家や翻訳者あたりだとよほど高名な人でないかぎり特集されることはない。しかも最近は専門的であっても作家特集が組まれるのは亡くなったときぐらい。
 そういった現状を踏まえたかどうかはともかく(笑)、今回の企画はかなり攻めていて面白い。まあ、『Re-Clam』はこれまでもシャーロック・ホームズのライヴァルだったり論創海外ミステリを特集するなど、メジャーどころが決してできない企画ばかり組んで楽しいかぎり。マニア相手の同人誌だから、そりゃあハードルが高いところもあるけれど、たとえ初心者であってもミステリ好きが読めばちゃんと面白いのである。なあに、多少わからないところがあってもネットで調べればいいし、それでもわからなければすっ飛ばして読めばよいいのだ。
 ともあれ連載記事も含めて、非常に楽しくタメになる雑誌である。なお『Re-Clam eX vol.3』は短篇集なので、感想は別の機会に。

 さて、一方の『ミステリマガジン』。ミステリ出版業界ではやはりメジャー的存在だが、その特集がマンネリすぎて本当に悲しい。
 750号の特集は年末恒例「ミステリが読みたい!2022年版」。さすがにこればかりは企画云々を言ってもかわいそうだが、それにしてもベストテンに関しては後発なので、もう少し内容を工夫すべきだろう。現状は、ほんと、結果と投票者のコメントだけだなので、いくらなんでもスカスカすぎる。
 ちなみに海外ランキングのベストテンでは、順位はともかくラインナップはほぼ予想どおり。でもいくつかは個人的に完全ノーマークだった作品もあって、なかでも『彼と彼女の衝撃の瞬間』は気になる一冊。
 なお、1位は読んだばかりのアレでびっくり。

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 『新青年』の創刊101年を記念して神奈川近代文学館で開催中の「永遠に「新青年」なるもの」を観覧する。戦前の探偵小説関係の催し物など滅多にないのに、今年はさいたま文学館で「江戸川乱歩と猟奇耽異」もやっているし、ありがたいことである。ことに今回はテーマが『新青年』ということもあるので、戦前探偵小説好きにとって行かないという選択肢はない。
 場所もいい。神奈川近代文学館は過去にも「大乱歩展」を開催してくれた思い出深い場所だが、単純に立地がいいのだ。港の見える丘公園に隣接しているだけでなく、その隣にはさらに元町や山下公園、中華街なども広がり、観覧後の散歩や買い物に最適である。
 唯一面倒だったのは、今回は日時指定の事前予約が必要だったことだが、私ごとになるけれど、最近、会社勤めをやめたこともあって、空いている平日に行けたのでノープロブレムである。

永遠に「新青年」なるもの_02
▲神奈川近代文学館の入り口にある案内板。

 展示物は『新青年』に関与した作家や翻訳者、編集者の生原稿や製作物がメイン。江戸川乱歩や横溝正史の生原稿はこれまでもいくつか見てきたので今更驚かないけれど、今回は小酒井不木や大下宇陀児、甲賀三郎、浜尾四郎、木々高太郎、渡辺温、渡辺啓介、夢野久作、小黒虫太郎、佐藤春夫、谷崎潤一郎などなど圧倒的なラインナップ。
 加えて松野一夫や木村荘八といった面々の挿画、さらには探偵小説以外に紙面を彩ったスポーツ選手やファッションなどの同時代のグッズの数々、トドメに『新青年』全冊の一挙展示と、眺めているだけでちょっと頭がクラクラするぐらいの陣容である。
 今後トークイベントや講演会も各種予定されているので、タイミングが合えばぜひ参加したいものだ。ただ、土曜開催が多いので、ちと人出が心配ではあるが。

永遠に「新青年」なるもの_01
▲お土産は恒例の図録。左にあるのは図録購入者に付録としてもらえる「新青年バッジ」

永遠に「新青年」なるもの_03
▲バッジのアップ。缶バッジと言われなければわからないぐらいい雰囲気です

 ということで、こちらは5月16日(日)までの開催。この方面が好きな人なら大変楽しめるのでぜひどうぞ。日時指定の事前予約が必要ですが、密もしっかり回避しております。さいたま文学館もそうだったけれど、むしろ閑散としていて、そこが少し心配なんですが……。

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 NHK-BSで放映された「シリーズ江戸川乱歩短編集」を観たり、『うつし世の三重 江戸川乱歩三重県随筆集』を読んだりと、最近、急に乱歩づいているが、本日も乱歩絡みの話題である。さいたま文学館で始まった「江戸川乱歩と猟奇耽異」展を見てきたので、そのレポートなど。
 この展示会については最近、知ったばかりなのだが、もともとは1月16日〜3月7日という会期だったらしく、それがコロナの影響で3月24日〜4月18日に変更されたもの。通常どおり開催されていたらすっかり見逃していたところなので、これはラッキーであった。先日、東京唯一の書店でたまたま買えた『うつし世の三重 江戸川乱歩三重県随筆集』もそうだが、少し探偵小説の神様から守られているのかもしれない(笑)。

 それはともかく。
 本展示会は乱歩の没後55年記念ということで、そのテーマは探偵小説と一般文壇の繋がりに置かれている。早い話が乱歩と純文学作家の交流に着目したものだ。だから乱歩以外の作家は、佐藤春夫や坂口安吾、谷崎潤一郎といった純文学畑がメイン。それらの作家が探偵小説に残した足跡、あるいは乱歩との交流の証を、生原稿や書簡という形で目にすることができる。
 もちろんこの辺の作家と探偵小説の関係はザクっとは知っているし、そういったアンソロジーもあるぐらいだが、久米正雄や正宗白鳥、萩原朔太郎あたりはこういう形で取り上げられることも少ないし、改めて見るとやはり面白い。
 特に朔太郎と乱歩の親密さにはちょっと驚いた。少年愛、酒に関してだけは不一致だったらしいが(笑)、それ以外はすべてに趣味が合致し、初めて会ったその日の夜遅くまで新宿のゲイバーなどで盛り上がったという。ただ、そもそも乱歩の作品に感激した朔太郎が、自ら乱歩に会いにいったくせに、後で「二人の関係はなるべく内密に」と乱歩に頼んだというのがひどい(苦笑)。

 まあ、そんなエピソードなども知ることができたし、ともあれ内容的には悪くない。残念なのはスケール的にそれほど大きくないところと、埼玉県桶川市というアクセスぐらいか。しかし常設展示の方でもミステリ関係があるし、近場の方は見ておいて損はないだろう。多少、遠い方でも、桶川名物のうどんを食しがてら出かけてみてはいかがだろうか。
 ちなみにTwitterで呟いた入場制限だが、慎重なのはよいけれど、あの人の少なさで制限かけるのはさすがにいかがなものかなぁ。

江戸川乱歩と猟奇耽異03
▲さいたま文学館。建物自体は素晴らしいのだが、どうにも活気が……

江戸川乱歩と猟奇耽異02
▲入り口にあったのぼり。個人的にはもっともっと煽ってほしい。

江戸川乱歩と猟奇耽異01
▲お土産の図録。左は付録のセル製しおり。これがなかなかいい。

 さあ、次は横浜の神奈川近代文学館で開催されている『創刊101年記念展 永遠に「新青年」なるもの』だな。

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新年明けましておめでとうございます。
昨年は「探偵小説三昧」をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
本年も何卒宜しくお願いいたします。

 さて、今年一発目の更新ではあるが、読みおえた本もないので特に書くこともないのだが、Twitterで「#ことしもよろしくの頭文字でオススメの本のタイトル」というタグが流れてきたので、ちょっと自分でもやってみたのがこちら。

こ 殺し屋/ブロック
と 特別料理/エリン
し 死の扉/ブルース
も 木曜の男/チェスタトン
よ 夜の来訪者/プリーストリー
ろ ロゼアンア/ヴァールー
し 死体置き場で会おう/ロスマク
く クリスマスに少女は還る/オコンネル

 翻訳ミステリ縛りでやってみたが、「も」と「ろ」がそもそも作品数が少なく、ちょっと苦労した。反対に「し」は二つも入っているのにオススメが目白押しなので、まあ、とりあえずといったところ。

 ついでに今年の目標などという大したものではないが、一応、ロスマク読破計画とカー読み残し消化はやっておきたいところである。あと、クリスティ読破計画は今年とりあえずスタートさせてみたい。それと並行して論創海外ミステリと論創ミステリ叢書の遅れの消化、さらにこちらも遅れが出ている各種同人系も何とかリアルタイムで読めればなぁと思う次第。その冊数だけで絶対無理そうなんだが。

 読書以外でいうと、今年はけっこう大きな動きが公私共にある予定なので、それらが読書にもいい影響を与えてくれることを願っている。さっそく今日おみくじを引いたら「吉」だったので、なんだか現状維持的な匂いもするが、すでに心の中ではおみくじを引いていないことになっているので、まあ、なんとかなるでしょ。

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 ようやく『Re-Clam』のVol.5を読む。今号はロス・マクドナルド特集で、法月綸太郎氏、柿沼瑛子氏といったプロの作家や翻訳家の寄稿が楽しめる。同人誌であるにもかかわらずプロの執筆陣が参加していることはもちろん目を惹くけれども、個人的に気に入ったのは、「初心者のためのロスマクドナルド読書案内」。
 こちらでは、ロスマク入門一冊目として(内容だけでなく入手しやすさも考慮)、『象牙色の嘲笑』を挙げているのが、なかなかいい線をついていると思う。個人的にロスマク入門書をあげるなら『象牙色の嘲笑』にプラスして、『死体置場で会おう』と『ギャルトン事件』も推しておきたい。ただし、この二冊は入手難というだけでなく文庫にもなっていないのが困りもの。

 なお、次号は「ホームズのライヴァルたち」特集ということで、これまたナイス企画である。しかし、本来こういった企画は『ミステリマガジン』がやってほしいことなんだよなぁ。売れるものしか特集したくないのはわかるけれど、テレビドラマやアニメに頼ってばかりでは本当のミステリファンが離れるばかりではないか。別にマニア相手のクラシックミステリばかり特集しろと言っているわけではない。『ミステリマガジン』の本筋たる翻訳ミステリをもっと紹介してほしいだけなんだけどねえ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 今年も各ミステリのランキングが出揃ったようなので、三誌の平均順位などを出してみた。なお、これも毎年、書いていることだが、管理人の好みで海外部門しかやっていないので念のため。
 以下、基本ルール。

・『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)の各ランキング20位までを対象に平均順位を出し、それを元にしたランキングとする
・原書房の『本格ミステリ・ベスト10』はジャンルが本格のみなので対象外としている。
・いち媒体にしかランクインしていない作品はブレが大きくなるため除き、参考として記載した。

2021年度ランキング比較_2

 ランキング自体のあり方については、こちらの記事で書いたり、Twitterでも少し呟いたりしたせいか、そこそこガス抜きができてしまったので(笑)、本日は純粋に作品を見てみたい。
 といっても今年は例年以上に各ランキングが似通ってしまい、本当にやばいことになっている。ここまで似てくると発売日の遅いランキングは誰も見なくなるだろうし、「このミス」が投票期日の〆切を今年から変えるのは、おそらくそれが理由ではないかと邪推している(笑)。

 それにしてもアンソニー・ホロヴィッツは強い。これで三冠三連覇。正直、今年は作品の水準、対抗馬の強さを考えると、どう贔屓目に見ても無理だろうとは思っていたのだが。まあ、これは複数冊を投票できるシステムのせいが大きいとは思うけれど、いや、それにしても。
 ホロヴィッツの三連覇した作品は、どれもミステリのもっとも古典的かつ基本的なスタイルである本格だ。謎を解く楽しさをきちんと中心に据えところがまず魅力であり(しかもきちんと現代風にアレンジして)、加えてキャラクターの魅力、メタミステリーな全体の仕掛けをわかりやすく取り込んでいるところなどが評価される理由だろう。
 早い話、総合力が高い。作品全体に目配りが効いている。弱点が極めて少なく、それがまんべんなく票を集めたことにつながったと言える。

 これに対抗するには、いわゆる超二流、超B級では難しいのかもしれない。知的興奮と娯楽性、大人も楽しめるストーリーの奥行き、少なくともそれらは満たしていないと、なかなか牙城は崩せないと見る。
 ただ、当然ホロヴィッツも飽きられる可能性は十分にあるわけで、来年以降はさすがにこう簡単にはいかないだろう(実は今年も絶対、無理だと思っていたのに三冠だから嫌になる)。
 今年でいえば、管理人の予想では『指差す標識の事例』や『あの本は読まれているか』がくると思っていた。前者は翻訳者四人を擁した話題性、1000ページもあるボリューム、歴史ものという知的興味をくすぐるジャンル性など、対抗馬としては圧倒的な存在感だ。後者も歴史もので、かつテーマが秀逸、穴馬の可能性も十分だったはず。
 ところが蓋を開ければ両者ともザリガニにも抜かれる始末。まあ、どちらも肝心のミステリ的な部分が弱かったのがやはり響いたかなとは思うが、これで勝てないとなると来年はどうなることやら。

 あと、ホロヴィッツも強いが創元も強い。ホロヴィッツ以外に先ほどの『指差す〜』や『あの本は〜』をはじめ二十位内に六冊もランクインしている。一誌飲みのランクインでも二冊入っている。早川書房もランクインした数自体は匹敵しているが、上位に来る作品がやや弱い。それでも今年は『ザリガニの鳴くところ』で救われたが、むしろ『死亡通知書 暗黒者』が伸びきらなかったのが惜しい。というか、なんでハヤカワミステリなのに「ミステリが読みたい!」でランクインしなかったのか(笑)。
 版元でいうなら、地味な作品が多いせいか上位にはなかなか上がってこないけれど、この数年の集英社文庫と小学館文庫はいい作品を出し続けているイメージ。集英社はフランスミステリ、小学館は警察ものが多い印象だけれど、管理人もあまり読めてないので、来年の宿題か。

 宿題というほどでもないが、年末年始あたりで読んでみたいのは、まず『ザリガニの鳴くところ』。あとは『言語の七番目の機能』、『パリのアパルトメン』あたりか。ただ、昨年もそんなことを書いておいてまだ読んでないものもあるしなぁ。とりあえずハードカバーの新刊だけは早く読むことにしたい。文庫オチするとショックだし(笑)。

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文春&ミスマガ2020ベストテン

 今年も残り一ヶ月を切ってしまって、ミステリ界隈では年末ベストテンの季節到来である。すでに『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」と『週刊文春』の「ミステリーベスト10」が発表され、なんと両ランキングの海外部門でアンソニー・ホロヴィッツの『その裁きは死』が1位を獲得してしまった。しかもホロヴィッツは三連覇達成である。
 この調子では、もうすぐ出るはずの(もう出てるかな)『このミステリーがすごい!』もおそらくトップは堅そうな気配で、なんだかなぁという感じである。

 いや、いいんですよ。面白い作品であれば福岡ソフトバンクホークスみたいに四連覇しちゃっても。実際、ホロヴィッツの作品だってつまらないわけじゃなく、作品としてちゃんと面白い。ただ、正直、前の二作よりは明らかに落ちるし、当然、評価は少し下がっていいはずだ。ところが蓋を開ければ堂々のV3。ランキングは相対的なものだから、他の作品がそれ以下の出来であれば仕方ないけれど、対抗馬だっていろいろ出ているからね。

 このあたりについては、当ブログでも毎年のように書いているのだが、結局、各ミステリベストテンの選考方法がアバウトすぎて、そこがどうも素直に楽しめない原因になっている。
 気になるところはいくつかあるのだが、やはり一番問題なのは、投票者がその年の新作ミステリをどれだけ読んで投票したかということだろう。全部読んで、そのうえでランキング投票していればいもちろん問題はない。しかし、本当に素晴らしい作品なのに、知名度がなかったり、刊行が投票〆切日に近いため読むのが間に合わなかったりで、いい作品を未読のまま投票している可能性がずいぶん高いのではないか。
 ミステリ評論家や書評家なら、かなりの範囲、かなりの冊数を消化していると信じたいが、それだって怪しい。ましてや業界関係者以外が自分の好みとは異なるジャンルを含め、新刊ばかり何十冊も読んでいるとはとても思えない。
 だから結局はメジャーな作家、宣伝しまくった作品、インターネットで評判になった作品ばかりが読まれることになり、自ずと票も集めてしまう。

 思えばこういう状況は、かつての『週刊文春』の「ミステリーベスト10」で顕著だった(まあ、文春は今でもだけど)。当時は今みたいにインターネットが普及していなかったから、サイトやSNSで情報を集めることが難しかった。ハズレを掴むリスクはを避けたいので、おのずとメジャーな作家の作品、出版社が宣伝に力を入れた作品ばかりに注目してしまい、そのなかからランキングが生まれてきたといっても過言ではない。
 まあ今となっては、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」の権威主義的なところはお家芸のようにもなっており、むしろメジャーが有利なベスト10ということで特化している感すらあるので、それはそれでいいかもしれない(苦笑)。そういう観点で割り切ってランキングを眺めればよいわけである。
 ただ、文春のアンチテーゼとして誕生した宝島社の『このミステリーがすごい!』と最後発の『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」まで、同じような状況になっては駄目でしょう。
 この両誌は投票者の個人ランキングも晒しているから、まだ良心的ではあるが、惜しむらくは何と比べたうえでのランキングか知りたいわけである。
 極端なことをいうと、10冊しか読んでない人が投票したら、どんな駄作でもランキング入りする羽目になってしまうではないか。

 とはいえ、その年の新刊すべてを読んだ人しか投票してはいけない、なんてことは現実的に無理なのもわかる。
 ではどうすべきか。一番、無理がないのは、投票者に公平に判断してもらうため、30作ぐらいをノミネートして、そのノミネート作品を最終審査員が全作読んだうえで投票する形である。
 ノミネートする作品はそれこそ人海戦術で多くの読み手に参加してもらい、第一次審査的な形にする。もちろん漏れが出てはいけないから、一作につき最低二〜三人は読むようにしたい。一次審査する数が多いので、かなりコストがかかる欠点はあるけれど。
 また、最終審査については、投票だけでなく、完全合議制にするのも面白い。早い話が、文学賞の選考スタイルである。こちらであれば、最終審査員の人数はかなり絞ることも可能だろう。というか、絞らないと収拾がつかなくなる危険大だろう。

 あと、別の話にはなるが、どうせやるならベストテンをやっている出版社が共同で開催するのはどうか(共同開催が大変なら、持ち回り制という手もある)。
 そもそもランキングの数が多すぎる。本ミスも入れると4種類だし、ほかにもネットでファンが開催しているものなどもあるわけで、これではボクシングやプロレス並にタイトルが多いではないか。そこで一本に絞るわけである。
 あ、別に絞らなくても、各ランキングの一位の本を担当した編集者が集まって、最後にビブリオバトル形式でチャンピオンを決める手もあるな(笑)。

 まあ、グダグダと書いてみたが、せっかくのお祭りなので、もう少しスッキリ楽しめるほうがいいし、もっと盛り上げる工夫はあったほうがいいよなぁ、というお話。



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 この数年、この時期になると各ミステリのベストテンのまとめや比較みたいなことをやっているが、今年も大トリの『このミステリーがすごい! 2020年版』が発売され、ほぼ各種ランキング本が出揃ったようなので、ちょっとまとめてみた。管理人の好みゆえ海外部門だけではあるが、興味ある人はご覧ください。

 一応、基本ルールなどを書いておくと、基本的には『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」(以下「ミスマガ」)、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」(以下、「文春」)、宝島社の『このミステリがすごい!』(以下、「このミス」)の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すというものである。原書房の『本格ミステリ・ベスト10』もけっこう知名度はあるが、ジャンルが本格のみなので対象外としている。
 また、ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月から9月、他は11月から10月)、ひとつの媒体にしかランクインしていない作品は除いている。
 ただ、ひとつしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、参考として記載した。

 2020年ランキング比較

 昨日の記事でも触れたが、このところ各誌のランキングはかなり似通っている印象である。特に昨年はひどくて一位、二位が三誌とも同じ、ベストテン作品もかなり被っていて、もうどれ買ってもいいじゃんぐらいの感じであった(昨年の記事はこちら)。
 そこで今年のランキングだが、一位がまたしても三誌とも同じで、アンソニー・ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』という結果になってしまった。上位も似てはいるが、それでも昨年よりは多少バラツキも見られる。
 例えば「文春」でのメジャー・大御所が強いところはある意味ブレがなくて素晴らしい(笑)。よそでは二十位にもランクインしていないルメートルやディーヴァー、アルテ、インドリダソンといった人気作家がしっかり入っているのは「文春」ならでは。唯一、意外だったのはSFの『三体』が入っていたこと。他誌ならともかくまさか「文春」で入るとは。
 一方の「ミスマガ」はオーソドックスでバランスよいイメージ。本格、ハードボイルド、サスペンス、ノワール、ファンタジー系もソツなく入れているのだが、「文春」ですら入れている自社の『三体』が入っていないのが不思議だ。いや、むしろ、これを入れてきた「文春」を褒めるべきか。
 「このミス」も全体的には「ミスマガ」に近いが、けっこうジャンルのボーダーライン的な作品が好まれる傾向が強い。ただ、昔よりはずいぶんマイルドになってしまったというか、ここが最近の「このミス」の物足りないところである。『1793』とか『愛なんてセックスの書き間違い』、『戦火の淡き光』あたりが「このミス」らしさといえばいえる。

 ちなみに昨年のワンツーフィニッシュを飾った創元は今年も強く、一位をはじめ二十位以内に五冊ランクイン。しかし早川も負けておらず、今年は六冊ランクイン。早川は昨年も六冊ランクインさせているが、今年特徴的なのはすべてポケミスだということだ。一誌のみのランクイン作品にもポケミスは多く、しかも初紹介の作品が多いのは編集部の目の確かさを証明しているともいえ、実にお見事である。
 創元も好調とはいえ、どれも過去に好評を博した著者の続刊が多く、そういう意味ではうかうかしていられないだろう。

 最後に管理人の気になるところは、『償いの雪が降る』、『黄』、『国語教師』、『1793』あたり。刊行当時はあまりマークしていなくて内容もなかなか面白そう。明日にでも買いにいきますかね。


※2019/12/15追記
14位『名探偵の密室』のランキング合計と平均が間違っている旨ご指摘がありました。
最後に表をまとめるとき関数を打ち間違えたようで、正しくは合計が26、平均が13となります。
なお、順位は変わらず、そのままで大丈夫です。
画像はそのうち直しますので、それまでは上の数字を読み替えてくださいませ。
ご指摘いただけた方、ありがとうございました!

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 昨日はそごう横浜店内にあるそごう美術館で開催されている「不思議の国のアリス展」をのぞいてくる。
 美術館主催ということで、文学的な考察や展示ではなく、アートとしてのアプローチというのがちょっと新鮮か。ルイス・キャロル自身が描いたアリスをはじめとするスケッチだったり、『不思議の国のアリス』の挿絵画家ジョン・テニエルの下絵、さらにはその他の挿絵画家や現代のアーティストによるアリス関連作品の展示という具合である。
 そのほか日程や時間によっては、アクセサリー作り等のワークショップ、朗読会、リアル脱出ゲームなどのコラボ企画があったり、なかなか賑やかである。
 とりあえず管理人的にはキャロルのスケッチとテニエルの原画が見られれば満足だったのだが、意外に現代アーティストたちの作品にも面白いものが多かった。とりわけウラジミール・クラヴィヨ=テレプネフ氏の写真作品、清水真理氏の製作した人形は、どちらもノスタルジーにゾクッとする色気や怖さがプラスされており、これらを見ることができたのは大きな収穫である。

 不思議の国のアリス展3
 ▲イラストで紹介するストーリーのコーナーのみ撮影可能

 不思議の国アリス展4
 ▲『鏡の国のアリス』コーナーはチェスをもじったモノトーンがオシャレ

 不思議の国のアリス展1
 ▲図録は絶対に買ってしまう。このほかブックカバーと栞も購入

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