FC2ブログ
ADMIN TITLE LIST
Selected category
All entries of this category were displayed below.

 エジプトの遺跡から発掘された青銅のランプ。そのランプには持ち主が消失するという呪いがかけられていた。しかし、発掘した考古学者セヴァーン卿やその娘のヘレンはそんな噂を信ずることなく、ヘレンはイギリスに持ち帰ることにする。そしてヘレンが自宅に入った瞬間、彼女の姿は忽然と消失してしまったのだ……。

 カーター・ディクスンの『青銅ランプの呪』は人間消失をテーマにした作品だ。カーがエラリー・クイーンと一晩語り明かしたときに、推理小説の発端として「人間消失」に勝るもの無しという意見の一致をみたことから生まれた作品であるという。
 で、それを実践した『青銅ランプの呪』だが、恥ずかしながら私はきれいにだまされてしまいました(苦笑)。だからといって本書が傑作かというと、決してそんなことはなくて(笑)。トリックそのものは「なんだ」という感じだし、伏線も丁寧に張ってあるので、おそらくはかなりの人が謎を解き明かしてしまうのではないだろうか。
 言い訳を承知で書くと、私が見破れなかったのは、本書がなかなか面白く読ませるからに他ならない。一応、オカルト趣味ではあるが、その実、コミカル度も非常に高く、H・M卿とマスターズの掛け合いや、ベンスンとの写真自慢合戦など、とにかく楽しい。トリックはイマイチながら、個人的には悪くない一冊だと思う。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 カーター・ディクスン『パンチとジュディ』読了。
 結婚式を明日に控えたケン・ブレイクは、英国情報部の元上司であるヘンリー・メルヴェル卿に突然呼び出され、ドイツの元スパイの屋敷に潜入しろという命令を受ける。その元スパイが、国際指名手配中の怪人物Lの正体を明かすといってきたため、真偽のほどを確かめろというのだ。しぶしぶ屋敷に向かったケンだったが、そこで目にしたものは元スパイの死体だった。

 導入部のケンとH・M卿の電報でのやりとりからしてコミカルだが、本作は強烈なドタバタ劇のオンパレードで、実は個人的にもっとも苦手なパターンである。カーの作風をいまひとつ飲み込めていなかった頃、中学生ぐらいだったと思うが、そのときにやはりドタバタ一色ともいえる『盲目の理髪師』あたりを読んでトラウマになってしまったこともあるほどだ。
 ただ、ドタバタが苦手といっても、ギャグそのものは嫌ではない。それよりもドタバタから生じる無茶なストーリー展開とか登場人物たちの強引な言動が気になるのである。とはいうものの、ドタバタ劇そのものが往々にして伏線だったり、必然性があったりもするので、一概にはケチをつけるわけにもいかないのだが。
 そういう個人的な好みの部分にさえ目をつぶれば、本作はパズラーとしては意外に正攻法で、楽しめる一冊ではある。ラストの犯人当ても楽しい。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 明日は東京にも雪が降るらしいが、さすがに一月に入ってからは寒い日が続く。夜ベッドに入って読書するときにも、布団から出ている手がかじかむこともあり(仰向けになって読んでいるので)、なかなか苦行に近いものがある今日この頃。だが暑いよりは遙かに読書に集中できるのはなんでだろう?

 本日の読了本はカーター・ディクスンの『かくして殺人へ』。
 女流作家としてデビューしたばかりのモニカは、運良く映画の脚本を任されることになり、撮影所を訪れた。ところが彼女の初仕事は、自分の小説ではなく、他の探偵作家が書いたミステリの脚本化であった。しかも一方の探偵作家ビルは、反対に彼女の小説を脚本にするという。そんなバカな。お互いが不満を抱えつつも渋々と仕事にとりかかるなか、なぜかモニカの命をつけ狙う事件が立て続けに巻き起こった。

 これはなかなか。カー特有のファース趣味+ラブロマンスが全面的に出た作品で、ときにはそれが鼻につくこともあるのだが、これは舞台が映画界ということもあってうまくマッチングしており、展開が派手なこともあってリーダビリティは高い。また、カーの映画界に対する恨み節みたいなところも見られ、そういう意味でも興味深い。
 トリックに関しては弱いところもある。だが伏線の張り方は悪くないし、フーダニットとしては十分に成功していると思う。ドイルの某作品への挑戦である、みたいなことが解説に書かれていたが、クリスティの某作品との類似性もあり、この二重の罠が個人的にかなりツボである。カー作品の中ではあまり評価されていない作品のようだが、そんなに捨てたものではないと思うぞ。

 ところで本書の版元の新樹社だが、一時期は熱心に古典を発掘していたのに、近頃はさっぱりのようだ。いろいろと事情はあるのだろうが、また頑張ってほしいものである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 久々のカーである。読む読むと書いておきながら、去年はたった六冊、一昨年は十三冊とかなりトホホな数字。今年こそは全冊読破といきたいが、まだ二十五、六冊は残っているはずなのでやっぱ無理か。こればっかり読んでりゃ二ヶ月でなんとかなるだろうが、絶対あきるに決まってるし(笑)。

 警察が監視する空き家で、一人の男が射殺された。すぐに踏み込んだ警察だったが犯人の姿は影も形もなく、後に残されたのは死体、凶器の拳銃、孔雀の羽根模様のテーブル掛け、十客のティーカップ。そして姿なき殺人者による予告殺人が、またも警察に届けられる。

 発端はけっこう魅力的。なんせ警察の下に殺人を予告する手紙が届き、そのうえで犯人が殺人を犯して消え失せるというのだから、不可能犯罪ものの極地である。これに胡散臭いティーカップを巡る秘密結社やら、個性的なキャラクターたちが登場して、なかなか読ませる物語に仕立て上げている。
 特に感心したのは二人の登場人物で、まずは何といってもジャネット・ダーウェントの存在。最初はよくある喜劇的な役回しかと思っていたのだが、これがどうして、カーには珍しい(はず)徹底的な悪女で、彼女と事件の関わり方がどうなるのか最後まで興味を引っ張ってくれる。
 また、ジャネットほどではないが、ポラードという刑事部長が地味ながら存在感がある。何となく感じただけだが、カーはポラードに警察の普遍的なイメージを託したのではないか。名探偵に馬鹿にされる存在ではなく、庶民が頼りにするもっと一般的な警察のイメージである。今回は警察の活躍する場面も多いのだが、それだけに物語もきびきび動くし、締まっている印象も受けた。なんだ、毎回、これぐらいやってくれりゃいいのに(笑)。

 さて、本書の最大の売りだが、これはH・M卿の謎解きである。最終章では32の手がかりをピックアップして不可能犯罪の種明かしをするという見せ場を設けているのだ。どちらかというと読者に向けての、カーならではの遊びというわけだが、その点だけでも本格ファンは読んでおく意味があるだろう。
 これで肝心のトリックがもっと良ければかなりの傑作になったはずだが、そうならないところがカーらしいと言えばカーらしい。うむ、惜しい一作です。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 こういうのも「嵐の山荘」ものといってよいのかな。
 カーター・ディクスンの『九人と死で十人だ』は、第二次大戦中、ドイツの潜水艦攻撃という危険にさらされながらアメリカからイギリスへ向かう貨物船を舞台にしたミステリ。いつものファースは陰を潜め、カーの作品中でもとりわけシリアスな一品である。
 物語はすべて船内での出来事であり、その限定された空間での殺人劇は、戦争というもうひとつの緊迫感とも相まって、一種独特のムードを醸し出す。

 最近、連発してカーの作品で物足りない思いをしてきたので、今回はちょっと間を空けたのだが、いや、これぐらいの作品ばかりだったら文句ない。メインの指紋トリックを初めとして、それほど大がかりな仕掛けはないが、灯火管制や避難訓練など、戦時下の状況をプロットや謎に上手く利用しているなどはさすが。犯人もなかなか意外性はあるし、しかも言われてみりゃなるほどという感じで、きれいに背負い投げを決めてみせている。
 個人的に「嵐の山荘」ものが好みということもあるのだが、これは十分楽しめる一冊であった。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本はカーター・ディクスンの『剣の八』。
 スタンディッシュ大佐の家では、近頃奇妙な出来事が立て続けに起こっていた。ポルターガイストは発生するわ、犯罪マニアの主教は階段を滑り降りるわ、牧師はインク壷を投げられるわでてんてこ舞いである。おまけにトドメとばかり、離れに居候していた男がピストルで撃たれて死んでいるのが発見される。死体の近くには八つの剣が描かれたタロットカードが……。

 カーの作品としては比較的初期のものだが、カーの特徴を示す要素はわりともれなく網羅されている。ポルターガイストや不吉なタロットカードに代表されるオカルト趣味。主人公的な役目を持つ青年の存在、そしてその青年とヒロインによる恋愛。ファースの要素ももちろんあるし、おまけにフェル博士以外の探偵役を設定し、推理合戦まで繰り広げる。おお、こう書くとなかなか面白そうじゃないか。

 だが悲しいかな、実際はかなりヘナヘナの出来なのだ(笑)。
 上に挙げた要素のほとんどが未消化というか、あまりに中途半端に終わっているのである。どっちつかずというのではない。どれをとっても書き込み不足なのだ。伏線というわけではないにせよ、前半で触れた要素を最後まで引っ張ることができず(あるいはまったく意識しなかったのか)、尻切れトンボに終わっている。
 また、前半で特に感じたことだが、登場人物たちの会話がどうも噛み合っていない印象を受ける。ある発言に対して、なぜそんな受け答えを?という会話が多く、正直読んでいてかなり疲れた。
 過去に読んだカーの作品では、もしかするとワーストに入るかも。とにかく久々に萎えた一冊でした。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 DVD『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を購入。わはは、ついに映画を観ることができなくてDVDを買う羽目になってしまった。さっそく視聴したが、いや、よくできてるじゃないですか。さすがに子役たちの成長は隠しようもないけれど、あの長い原作を見事にまとめ上げる監督の手腕に感心する。ミステリっぽい味付けもいい感じで生きているし。ああ、やっぱり劇場で観たかったなぁ。

 本日の読了本はカーター・ディクスン『五つの箱の死』。
 サンダース博士はハリス毒物学研究所に勤める医学者。その日はある報告書のために残業となり、研究所を出たのが深夜の一時であった。
 その帰宅途中のことである。博士は一人の若い女性から街中で声をかけられた。雲をつかむような話しながら、請われるままにある家に入ってみることになった博士。そして、そこで見たものは、毒か薬のために意識不明の三人の男女と、背中を刺されて死んでいる一人の男性の姿だった。
 異様な状況のなか、駆けつけた警察らの調べで、さらに彼らの所持品から不思議なものが次々と見つかるに及び……。

 導入部はかなり引き込まれる。四人の被害者という状況、なぜ一人だけが刀で殺されていたのか、毒はどのようにして盛られたのかなどなど興味は尽きない。しかも四人の奇妙な所持品やタイトルにもある五つの箱の謎など、読者を飽きさせない工夫が目白押しだ。
 だが、いざ蓋を開けてみると、どうにも腰砕けのネタが多い(特に毒の盛り方など気づかない方が不思議だと思うのだが)。また、いつも以上に無駄なドタバタが多く、ストーリーの芯が通っていない印象を受ける。

 ちなみにこの作品では新たなワトスン役としてサンダース博士が登場するが、事件に巻き込まれてヒロインと知り合い、いっしょに素人探偵の役回りをこなすうち、彼女もゲットだぜ、という黄金パターンはしっかり守られている。このパターンも多用しすぎているので、少なくともこの二人は最初から除外できるし、加えてこの二人がいなかったらもっとすっきり事件が解決したのでは、というのも御同様。
 盛り込みすぎの失敗作、というところまではいかないにせよ、さすがにこれをカー初心者におすすめするのは気がひける。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 やっとの思いで『死者はよみがえる』を読む。これまた1週間ぐらいかかってしまったが、早く仕事楽にならんものかね。
 この間に生島治郎が亡くなるというビッグニュースもある。生島治郎は一般の人にとってはやはり『片翼だけの天使』(だっけ?)が知られているのだろうか? 私にとっては『追いつめる』を書いたという一点のみで忘れられない作家である。というか、他はほとんど読んでない(笑)。

 それはともかくとして、『死者はよみがえる』。
 ううむ、はっきり言って辛い。久々に相性の悪いカー作品に出会ってしまった。出だしはそれほど悪くなかったのだが。

 南アフリカにあるビール会社社長の息子であり、作家のクリストファー・ケント。彼は自分の恵まれた境遇を揶揄する友人に反発し、ある賭をすることになった。一文無しでヨハネスブルグを出発し、10週間後にロンドンのホテルで落ち合うというものだ。
 その約束の日の前日、ケントは無事にロンドンに着いていたがあいにく金を使い果たしてしまい、落ち合う予定のホテルで宿泊客を装って食い逃げを図る。ところが運の悪いことに、係りに伝えたでたらめな部屋の番号の前客が、部屋に腕輪を忘れたという伝言が入り、ケントはポーターと部屋へ入るはめになる。そしてそこでケントが見たものは、女性の惨殺死体であった。ケントはホテルから逃走し、フェル博士に助けを求めた。

 ここまではなかなか興味深い展開だ。ただ、このあとがよくない。
 ケントがあっさりと容疑者から外れるのはまだいいとして、以後延々と関係者への事情聴衆が繰り返される。ここがすこぶる退屈。会話だけ、議論だけで展開してもかまわないが、そこに読者を退屈させないだけの何らかの魅力や工夫があればいいのだが、残念ながら本書にはそれがないのだ。個性的な人物も少ないうえ、フェル博士もいまひとつ遠慮がちで、ハッタリを効かすふうでもない。なんだか推理クイズを読んでいる感が強い。
 よく言えば本格のエッセンスに満ちた作品、悪く言えば構成の甘さが目立つ作品、もしくは小説の面白さが欠落した作品といえるだろう。個人的にはカーのワースト5に入れたいぐらいのれなかった。なお、トリックもあれれ、という感じで、本格ファンが読んでも不満が残るとは思うが。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 とにもかくにも仕事でここまで修羅場になったことはかつて記憶にないほどだ。本をまとめて読む時間がとれるのは通勤電車のなかと就寝前ぐらいだが、電車の中でもついつい眠ってしまうし、ベッドに入っても速攻で意識がなくなるのでどうしようもない。
 本日の読了本はカーだが、いまひとつ印象が弱くなるのは、こちらの気力のせいもあるだろう。

 さて、その読了本『絞首台の謎』だが、これはカーの第二作にして、バンコランものの二作目にあたる作品である。この頃はまだファースという要素は見あたらず、とにかく怪奇趣味を全面に押し出した物語が特徴だが、本作もその例外ではない。
 バンコランたちが目撃した死体が運転する車、忽然と深夜のロンドンに現れた絞首台、ロンドンのどこを探しても見つからない不思議なストリート、いつのまにか部屋に出現した絞首台の模型などなど……全編を覆う怪奇趣味が大変スリリングで、絞首台というモチーフがうまく効果を上げている。犯人の意外性も高く、トータルではそれほど悪くないが、残念なことに肝心のトリックが意外にしょぼいのが欠点だ。本格としてのカタルシスはもうひとつといったところだろう。

 しかし、徹底的に怪奇趣味を追求した本作は、カーの一面を理解するという意味では間違いなく読むべき作品であり、特にラストシーンのバンコランは絶対に見逃せない。
 本作の中にも、バンコランに追われるよりは悪魔に追われる方がましだ、みたいなセリフが出てくるが言い得て妙である。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 昨年のうちにディクスン・カーを本腰入れて読破してやろうと思っていたのだが、あっさりギブアップ。全著作数は90作近くあるはずだが、読了したのはまだ半数の40作ほどである。今年中にはなんとかしたいが、そうすると月平均で3冊か、おお、これならいけそうじゃん。とか思っていたら結局は1月は1冊も読んでない。ダメじゃん。
 ともあれ、そういうわけで久々でカーに手を出す。創元推理文庫版の『魔女の隠れ家』。ギデオン・フェル博士の輝かしき初登場作品である。

 かつて監獄が存在し、絞首刑が行われていたという「魔女の隠れ家」。代々その監獄所の署長を務めていたスタバース家には不思議な儀式があった。スタバース家を継ぐ長男は、真夜中に元監獄の所長室に行き、中に設置された金庫から、ある物を持って帰らなければならないのである。
 また、スタバース家にはもうひとつ、悪しき伝説があった。代々の当主は首の骨を折って死ぬことが多いのだという。実際、2年前にも現当主マーティンの父が死亡している。
 そして今夜、マーティンは家を継ぐために、「魔女の隠れ家」へと向かったのだが……。

 カーの初期作品、しかもフェル博士の初登場作品ということもあるのだろうか。その後のカーの活躍を彷彿とさせるような要素が目一杯詰まった作品である。すなわち(オカルト+ロマンス+ファース)÷論理。
 オカルトにしてもロマンスにしても描写はけっこう執拗なのだが、この作品でそれが鼻につかないのは、すべての要素が程良いバランスでミックスされているからだろう。アッと驚くようなトリックがないのは残念だが、時計のネタとかタバコの吸い殻ネタとか小技は利いているし、まるで謎解きの教科書のようにピシッと決めてくれるところはさすが。古典が好きなら決して読んで損はないでしょう。
 ちなみに……以下ネタバレか?

 フェル博士が犯人に対して暗に自害を勧めるという、ミステリでは割と見かけるシーンがあるのだが、本作もそのパターンを踏襲している。しかし、驚くべきことには、犯人が自らを正当化してなかなかに往生際悪く、挙げ句の果ては結局自殺に踏み切れなかった、というエンディングなのだ。こういう外し方ってかなり珍しいのではないか。
 ある意味、意表を突くエンディングで、個人的にはこのラストが読めただけでも満足でした。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



Prev | HOME | Next

Design by mi104c.
Copyright © 2020 探偵小説三昧, All rights reserved.