一応、本日が仕事納め。一応と書いたのはもちろん明日も出勤するため。ここ数日は挨拶回りや忘年会、近刊の準備などで忙しなく、その他の業務がすっかり滞ってしまっているのだ。しかしとりあえずは年を忘れたいので、形の上だけでも業務を終え、夜には会社の忘年会に繰り出す。
シリル・ヘアーの『いつ死んだのか』を読む。
故郷に帰ってきた元弁護士のペティグルー。妻とともに休暇を楽しんでいたはずの彼だが、「暴走馬の茂み」と呼ばれる場所を散歩しているとき、男の死体を発見する。ペティグルーは近くで狩りをしていた集団に遭遇し、死体の元へと案内するが、なんとあるはずの死体が消え失せているではないか。ところがその3日後、死体がふたたび同じ場所で発見され、事態はさらに謎を深めてゆく……。
短めの長篇といった感じで、後半が法廷ミステリーの趣を見せる、シリル・ヘアーらしい一作(ちなみにこれが遺作)。
内容もかなりシンプルにまとめられており、ポイントとなるのは遺産相続にからむ死亡日時の問題である。つまりペティグルーが発見したはずの死体が、タイトルそのままに「いつ死んだのか」という謎である。ボリュームの関係もあって、ともするとクイズ的になりそうな内容を、お得意のユーモアや心象風景の描写によって味つけしており、素直に楽しめた。いや、昨今のミステリのように長大でないからこそ、逆に一本筋が通っている印象を受けるのかもしれない。ラストのひねりも小気味よく決まっており、個人的には高く評価したい作品である。