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 エドマンド・クリスピンの短編集『列車に御用心』を読む。

 列車に御用心

Beware of the Trains 「列車に御用心」
Humbleby Agonistes「苦悩するハンブルビー」
The Drowning of Edgar Foley「エドガー・フォーリーの水難」
Lacrimae Rerum 「人生に涙あり」
Within the Gates「門にいた人々」
Abhorrèd Shears「三人の親族」
The Little Room「小さな部屋」
Express Delivery 「高速発射」
A Pot of Paint「ペンキ缶」
The Quick Brown Fox 「すばしこい茶色の狐」
Black for a Funeral「喪には黒」
The Name on the Window 「窓の名前」
The Golden Mean「金の純度」
Otherwhere 「ここではないどこかで」
The Evidence for the Crown 「決め手」
Deadlock 「デッドロック」

 収録作は以上。上から十四作がシリーズ探偵のジャーヴァス・フェン教授もの、残りの「決め手」と「デッドロック」がノンシリーズと、なかなかのボリュームである。基本的にはどれもまっとうな本格ミステリで、しかも日本では初のクリスピン短編集だから、クラシックミステリ好きには見逃せない一冊といえるだろう。

 実は個人的な好みの問題が大きいのだが、クリスピンの作品に対してはこれまで長篇での相性が悪く、いまひとつのめり込めない作家だった。ところが本書は意外なほどすんなり読める。
 理由を少し考えてみたのだが、まずは各作品が比較的短いこともあって、本格ミステリとしての胆がシンプルに打ち出されていることが挙げられるだろう。また、シンプルだけれども設定そのものはよく練られており、趣向が明確に伝わってくることも大きい。独特のユーモアなどは健在だけれど、短編ではピリッとした味つけに転化されている印象で、つまりは長篇の灰汁がほどよく取り除かれたということになるのだろうか。
 ただ、クリスピンのちゃんとしたファンは恐らく管理人と真逆の感想を持っているに違いない(笑)。
 
 そんなわけで、トータルでは満足度の高い一冊。中には「え?」と感じるようなアンフェアな作品もあったり、多少のバラツキもあったりはするのだが、まあ疵も含めてクラシックを読む際の味ととらえればまったくOKである。
 ちなみにマイ・フェイヴァリットは「デッドロック」。本書中では異色作だが、やはりこういう暗めの路線が個人的には好みなんだよなぁ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ボジョレー・ヌーヴォー解禁。さっそく1本空けてみたが、今年は当たり年という前評判どおり、なかなかさっぱりしていて美味しい。とはいうものの、実はワインの善し悪しというのがもうひとつピンと来ない(笑)。日本酒やビール、ウィスキーなら多少は自信があるのだけれど、なぜかワインは駄目なのだ。もちろん味の好き嫌いはあるのだけれど、それがそのままワインの出来に直結しない。つまり1000円のワインでも大変美味しく飲むこともあれば、5000円のワインでもそれほど美味く感じないこともあるわけ。日本酒ならそんなことはないんだがなぁ。

 エドマンド・クリスピンの『大聖堂は大騒ぎ』を読む。こんな話。
 友人のフェン教授からイギリスの地方都市トールンブリッジに招かれた音楽家のジェフリイ。大聖堂のオルガン奏者が何者かに襲撃されたため、その代わりを務めてほしいという。不安を抱えながらもトーンブリッジに出かけようとするジェフリイだが、行く先々で命を狙われ、ようやく到着したトールンブリッジでも次々と事件が勃発。いったいトールンブリッジにはどんな秘密が隠されているというのだろう?

 ウィットの利いた会話やユーモアで彩られた上品な本格ミステリが、クリスピンの持ち味だが、本作ではそれに加えて、怪奇趣味やロマンス、不可能犯罪とまさに盛り沢山。だがそのためテイストに統一感が感じられず、はっきりいって大味である。また、肝心の謎解き部分もそれほど推理するという見せ場がなく、終盤は事件の方で勝手に転がっていく印象は免れない。だが、トリックはなかなか奇抜だし、やりすぎと思われるほどの導入部のエピソードなどは個人的には嫌いではない。また、探偵役のフェン教授のキャラクターも後期のやや落ち着いたそれとは違って、かなりエキセントリックなのもそれはそれで楽しい。粗っぽい作品ではあるのだが、そういった部分も含めて、とりあえず本格ファンは読んでおいて損はない作品である。

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 エドマンド・クリスピンの『白鳥の歌』読了。
 オックスフォードで催される歌劇の初日を間近に控え、稽古も佳境を迎えていた……はずだったが、主役のショートハウスは歌手としては一流ながら、人間的には最低レベル。指揮者や作曲家の兄、恋敵の歌手などなど様々なトラブルを巻き起こし、開幕すら危ぶまれる状態だった。そんなある夜、歌劇場の楽屋でショートハウスの首吊り死体が発見される。事件の解明に乗りだしたお馴染みのフェン教授だが、さらに怪事件が次々と勃発してゆく……。

 以前に『永久の別れのために』読んだとき、クリスピンの作品に対して「印象が薄い」という感想を書いた。客観的にみても安定した良質の作品を書いている作家だとは思うのだが、個人的にはどうにも相性が合わないのである。残念ながら本作を読んでも、それほどクリスピン作品に対するイメージは変わらなかった。
 適度なユーモア、ちょっとばかり高尚な蘊蓄、意外な結末など、要素一つひとつは悪くないのに、相変わらず読んでいて物足りなさが残る(ただ、本作においてはトリックに無理があるとは思う)。やはりクリスピンでなければ、という強烈な個性が感じられない。例えばトリックにはもっと無理があり、ユーモアと言うより寒いギャグも多い、カーの諸作品がなぜ印象に残るのか。もちろん単純に比較はできないが、完成度は低くともカーの作品は輝いて見えるのである。

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 本日の読了本は、エドマンド・クリスピン『永久の別れのために』(新樹社)。正直言って、私のなかではいまひとつクリスピンの持つ作品イメージが希薄である。『消えた玩具屋』『お楽しみの埋葬』『愛は血を流して横たわる』『金蝿』あたりは一応読んではいるが(『白鳥の歌』は長らく積読)、どうにも印象が薄い。悪いのではなく「薄い」のだ。クリスピンの作風と言えば、ユーモアを前面に押し出したスラップスティック風な展開とか、ときに見せるペダンティックな味付けとかだと思うのだが、いままでに読んだ作品名を見ても「そんな感じだったっけ?」という感想しか出てこない。困ったもんだ。

 『永久の別れのために』はこんな話だ。とある村へやってきたダチェリー氏は、村に中傷の手紙が横行していることを知る。被害は拡がり続け、ついには自殺者まで出してしまうが、さらにその数日後、手紙の送り主を調査していた男性教師が死体で発見される。村に移り住んできた女性医師ヘレンが容疑者として目されるのだが……。

 「中傷の手紙」テーマというのは英国ミステリの一ジャンルといえるぐらい度々使われるらしい。なぜに「中傷の手紙」が英国作家に人気があるかは知らぬが、その陰湿なイメージと相まって、今回の作風もいつもの明るい雰囲気とはうって変わって、やや暗めである。晩年の作品だけに、作者の体験や心情が反映されている感じも受ける。ただし、個人的にはもっと暗いのが好きなんだが。
 本格ミステリとしては伏線なども丁寧で、最後の謎解きシーンはさすがに魅せる。ネタ的には驚くほどのものではないが、クリスピンが真面目に書いているのが感じられるし、(詳しく書くとネタバレになるが)ちょっとしたご愛敬があるのも本書の魅力だろう。
 ただし、客観的にみて「どうしても読まなければ」という作品ではないだろう。オーソドックスな英国ミステリが好きな人、クリスピンのファンなら、といったところか。というわけで、私にとっては、やはりしばらくすると印象が薄れていく作品のひとつになりそう。相性が悪いのかも。

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