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 本日の読了本は島田一男の『黄金孔雀』。サブカル系の評論家、唐沢俊一氏が監修した〈カラサワ・コレクション〉からの一冊である。
 〈カラサワ・コレクション〉とは古本を趣味とする唐沢氏が古い少女小説を復刊した選集である。2003年から2004年にかけて四冊刊行されたが、そのうちの西条八十 『人食いバラ』と本書『黄金孔雀』がミステリ寄りの作品となっている。
 ちなみに〈カラサワ・コレクション〉は四冊で刊行が終了しているのだが、実は本書の最後には次回配本である島守俊夫の『宇宙探偵・星に消える子』の広告が載っている。いま現在、刊行された形跡はまったくないので、おそらくは売れ行き不振で頓挫したのだろう。「あっ、きこえる!  エメラルドすい星の、地球に近づく音が……」という惹句がなかなかに素敵だったので(笑)、ちょっと気になっていたのだが、なんとも残念なことだ。

 いきなり話がそれたが、さて島田一男の『黄金孔雀』である。島田一男のジュヴナイルというだけでレア度は高いが、中身もなかなか他所ではお目にかかれないような代物であった。

 こんな話。誕生日を明日に控えた真夜中のこと。小玉博士の一人娘ユリ子は庭の方から聞こえるパタパタという音で目を覚ました。不思議に思って窓を見やると、なんとそこには孔雀の覆面をした怪人の姿が! しかもその孔雀の怪人は自ら「黄金孔雀」と名乗り、ユリ子を守るために現れたのだという。
 驚くユリ子であったが、さらにそこへ現れたのが、額に角を生やした不気味な「一角仙人」であった。黄金孔雀に宣戦布告をした一角仙人の笑い声に、ユリ子は恐怖のあまり気を失ってしまう……。

 黄金孔雀

 のっけから敵味方の怪人が登場するという派手なオープニングだが、まず驚かされるのはその造形である。
 上のカバー絵の右側が敵の親玉「一角仙人」、左に小さく描かれている方が正義の怪人「黄金孔雀」なのだが、典型的な悪人面の一角仙人はいってみれば予想どおりでそれほどの驚きはない。
 むしろ注目は正義の怪人「黄金孔雀」である。体に西洋の鎧もどきをつけているのはいいとして、孔雀の覆面がやはり異様。とにかく頭があれではすごい邪魔としか思えないのだが。しかもどういう構造かわからないが、ちゃんと羽も広げるし。

 で、このアブノーマルな二人がユリ子に隠された秘密をめぐってユリ子争奪戦を繰り広げるというのが一応メインストーリー。ただし、実はそれだけでは終わらず、さらにはここにユリ子の親友ルミ子とそのお兄さんの名探偵・香月先生(本職は少年少女新聞の編集長)が加わり、三つ巴の展開となるのがなかなか面白い。
 他にも黄金孔雀の部下の少年パンド・ランガ、一角仙人の手下・一つ目行者など、個性的なキャラクターが目白押し。そんな彼らの丁々発止のやりとりでラストまで一気に突っ走ってくれる。
 なんせ昭和二十五から二十六年にかけて連載された小説である。ツッコミどころは山ほどあるけれど、まあ、それも含めて楽しみながら、古き良き時代の少女活劇小説の世界にどっぷり浸るのがよいだろう。
 なお、ミステリとしても予想以上にトリックを使っていたり、怪人の正体なども工夫していたりで、レベルはともかく(笑)、サービス精神にあふれているところは好感度大である。

 島田一男には他にもいろいろジュヴナイルを書いているのだが、ううむ、それこそ論創ミステリ叢書あたりでまとめて出してもらえないものだろうか。

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 じんま疹。だいぶ治まったが完治にはまだ数日かかりそうな気配。虫歯。1本治療し終えたが、引き続き2本目を治療中。ここ数年医者になどかかったことがなかったのに、ここにきて2件、同時進行である。しかも来週のどこかで人間ドック後の再検査も受けなきゃいかんし。なんだかなあ。

 久々の島田一男。『社会部記者』を読む。
 著者の島田一男は本格でデビューした作家だが、途中から記者という経歴を生かした社会部記者シリーズを書き始め、そのスピーディーな展開や会話が人気を博して一気にブレイクした作家である。
 本書はその社会部記者シリーズの短編集。第四回の日本推理作家協会賞(当時は日本探偵作家クラブ賞)短編賞を受賞した「午前零時の出獄」をはじめ「遊軍記者」「新聞記者」「風船魔」の計四短編を収録している。
 全編に共通していえるのは、上でも触れたように、スピーディーな展開と漫才の掛け合いでも見るような記者同士のやりとり、素晴らしい連携を発揮する仕事ぶり、記者魂とでもいうべき仕事に対する誇りなど。今読んでも、いや、今読むからこそかえって新鮮なのだろう。
 とりわけ注目したいのは、当時の日本のミステリ・シーンではまだ珍しかったであろうチームワークでの捜査の描写だ。超人的な探偵はいないけれど、それを補うのが圧倒的な機動力と連携。文章も走っているので、いっそう勢いが増し、とにかく読んでいて心地よい。実際の地名が頻出したり、当時の風俗もけっこう描かれているので、そういう楽しみ方もまた一興かと。
 収録中の四作の中では、記者たちの機動力が特に活かされる「午前零時の出獄」、殺された有名女性ダンサーが風船に揺られて空中遊泳するという魅力的な導入の「風船魔」がおすすめ。

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 続けて島田一男をもういっちょ。こちらは著者の長篇第一作で、テイストは『錦絵殺人事件』同様、ペダンティズム溢れるバリバリの本格。探偵役も同じく少年タイムスの編集長、津田皓三。
 物語はその津田の元に旧友の考古学者・曽根辞郎の訃報が届くところから幕を開ける。曽根は多摩の古墳群を発掘調査していたが、その古墳の中で頭部を殴打されて殺されていたのだ。曽根の遺した謎の詩、船を模した奇妙な館。衒学趣味もあいまって、まさに日本のファイロ・ヴァンス模倣探偵譚といえる作品。
 その借り物的文体から坂口安吾に酷評された作品でもあるが、安吾が何をミステリに求めていたのかは知らないが、まあ、そこまでいう出来ではない。確かに機械的トリックなどはイマイチだし、主人公の津田ももうひとつ魅力不足。島田一男自身の作品と比べても、次作の『錦絵殺人事件』の方が上でしょう。ただ、系統立てて日本の探偵小説史を語る際には(いつそういう状況があるのかは知らんが)欠かすことができないので、本格探偵小説ファンは読んでおいても損はない。

 ちなみに島田一男はこの苦悩の時期を乗り越え、後に独自の文体と作風を生みだし、人気作家となったのはご承知のとおり。それを思えば安吾の酷評もそれなりに意味のあることだったのかも。

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 事件記者などのシリーズに代表されるように、島田一男の作風はスピーディーなストーリー展開や軽快な会話が特徴だ。ミステリの王道からは外れるにしても、娯楽小説の王道をひた走った作家であることは間違いないだろう。『錦絵殺人事件』は、島田一男がそんな作風を確立する以前に書かれた、本格探偵小説に真っ向から挑んだ作品でもある。

 少年タイムスの編集長、津田と神奈川県地方検事の小原が旅先で出会った日南と名乗る男。彼に導かれ、二人は子爵の鬼頭竹彦邸を訪れる。折りもおり、鬼頭家では二ヶ月前に当主の竹彦が失踪しており、死亡したとみなした家人らによって、遺言状の開封を行おうとしていた。その矢先、悪名高い弁護士の白川が、密室で胸を刺されて死んでいるのが発見された。

 錦絵をモチーフにし、義経伝説を絡めた見立て殺人劇。ひと言でいうとこんなところだが、そのペダンティックな描写やトリックなど、いわゆる本格探偵小説としての体裁はなかなか堂に入ったものだ。もつれあう人間関係や小道具としての遺書、見映えのする殺人現場なども、実に効果的で雰囲気を醸し出す。
 もちろんそれらはリアルの極北に位置するものではあるが、これこそ本格探偵小説の王道であり、島田一男がそこを走っていた頃もあったのだと再認識できる。傑作とは言えないまでも、このトリックと舞台設定、ペダンティズムだけでも十分に楽しめる作品といえるだろう。この作品を悪く言うとき、よくヴァン・ダインがたとえに出されるが、私は何となく『本陣殺人事件』を思い出してしまった。
 と、まあ、もっともらしいことを書いてみたが、実は島田一男の長編を読むのはこれが初めて。昔から気になっていた作家なのだが、あまりに多作なのでちょっとひいていた作家でもある。著作自体は山ほど買ってきてはいたのだが。とまれ、島田一男もしばらく読み続けてみたい作家となった。

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