E・S・ガードナーといえば圧倒的に弁護士ペリイ・メイスンものが有名だが、他にもいろいろなキャラクターを残している。本日の読了本『レスター・リースの冒険』も、そんなガードナーの生んだキャラクターの一人、義賊レスター・リースが活躍する中編集である。

The Candy Kid「キャンデイーだまし」
Something Like a Pelican「鵜をまねるカラス」
Monkey Murder「モンキー・マーダー」
Lester Leith, Impersonator(別題A Thousand to One)「千ドルが一ドルに」
収録作は以上。
ほぼパターンは決まっていて、毎回、下男(実は警察の潜入スパイ)のスカットルが新聞の犯罪記事をリースに見せるところから幕を開ける。リースはそこから事件の真相を見抜き、解決に乗り出していくのだが、面白いのはここから。リースは事件解決に動きつつも、最後にはちゃっかり犯人の盗んだ物を奪い取ってしまうのである。警察と犯人の裏をかいていく手口が見せ場であり、一見、意味不明のリースの行動が最後に種明かしされるという趣向が楽しい。
などと書いてはみたものの、ミステリ的にどうのというより、やはり本作はキャラありき。盗む相手は常に犯罪者に限られ、奪った金品は慈善事業に寄付、おまけに高身長でスマートかつハンサムな青年という設定は、まあベタではあるが、人気が出そうな要素は残らず詰め込みましたという感じでむしろ潔い。
ガードナーがペリイ・メイスンで大ヒットを飛ばす前、まだパルプ雑誌で短篇を書き散らかしている時代に発表されたシリーズということだが、こういうパターンを確立させた方が書く側も量産がきくし、読者も安心して楽しめるということなのだろう。
気になったのは、どれも中編のせいか手軽な読み物の割には中途半端にボリュームがあって、ストーリーがややだれ気味なこと。作品の性質上もう少し短く締めてくれたほうが良かった気はする。
とはいえガードナーらしく作品ごとのムラが少ないのはさすが。突出したものはないが、ユーモアもいい味つけで、ひまつぶしには恰好の一冊である。