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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ジョナサン・ケラーマン『イノセンス 女性刑事ペトラ(下)』(講談社文庫)

 『イノセンス 女性刑事ペトラ(下)』めでたく読了。まずはストーリーから。

 体に18ヵ所もの切り傷を受けた女性の遺体が発見された。被害者は有名な俳優の元妻。過去にはテレビ上で暴力事件を起こしたこともある元夫妻だけに、容疑は俳優に絞られつつあった。その一方、家庭内の暴力に耐えきれずに家を出て、浮浪者同然の生活を送る少年がいた。少年の名はビリー。彼はこの事件を偶然にも目撃し、恐怖からロスの街を逃げまどう……。

 上巻を読んだ限りでは、アレックス・シリーズとの大きな違いは感じなかったが、結局、すべてを読み終えてもその印象は変わらなかった。
 さすがにケラーマンの手になるだけに退屈はしないのだが、わざわざペトラという主人公を創る意味があったのかどうか疑問である。ペトラは特別アクの強い主人公ではない。まあまあ肉付けはされているし、好感の持てるキャラクターだが、必然性というか、主人公はペトラでなければ、という意味が希薄なのである。
もう一人の主人公と言ってよいビリーについてはかなり掘り下げているだけに、よけいペトラの印象が弱く、最後に二人の出会いがあっても、そこに大きな感動はない。
 また、構成も若干不満が残る。本作はペトラを中心とした部分、ビリーの視点による部分、犯人の視点による部分、そしてある老嬢の生活を語る部分という4つのパートから成っている。これが必要以上に凝りすぎており、逆に流れを中断する結果につながっている。少なくとも犯人の視点による部分、老嬢の生活を語る部分は余計だ。この二つはどちらも創りすぎていてあざとい。さくっと省いてペトラとビリーに絞った方がより効果的だったのではないか。

 ちなみに本作では、最後にちらりとアレックスが顔を出す。シリーズ読者には嬉しいサービスだが、うがった見方をすると、本作はもしかすると営業的な必要性から書かれたものかもしれない。もしそのとおりだとすると、ちょっとガッカリではある。
ううむ、なんかかなり否定的意見ばかりになってしまったが、好きな作家だけにあえて厳しく言わせてもらおう。


ジョナサン・ケラーマン『イノセンス 女性刑事ペトラ(上)』(講談庫文庫)

 会社の同僚の披露宴に出席するため、新宿の小田急ホテルセンチュリーサザンタワーへ。マイクロソフトとかが入っているあのビルですな。最近、披露宴に出るたびに乾杯の音頭やら何だかんだと役目を仰せつかっていたが、本日は久々に何にもなし。けっこう気が楽だったせいか、ついつい飲み過ぎてしまう。帰りに古書店など寄ろうと思っていたが、どうでもよくなってさっさと帰宅。

 ジョナサン・ケラーマン『イノセンス 女性刑事ペトラ(上)』読了。アレックス・シリーズではなく女性刑事ペトラを主人公にしたノン・シリーズ。ただ、雰囲気やテイストに特別大きな違いはないように感じる。詳しくは下巻読了時に。
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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