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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ジェイムズ・クラムリー『ファイナル・カントリー』(早川書房)

 『バイオハザードIIアポカリプス』視聴。
 原作はゲームであるが、共通なのは基本的な設定のみで、映画は別物だと思ってよい。また、ゾンビをテーマにしたホラー映画という冠も、本作ではもはや当たらないだろう。観客はただただミラ・ジョヴォヴィッチの痛快なアクションを楽しむだけでよいのだ。
 なるほどアクション映画としては確かに面白い。ただ、サービス過剰というか、あざとさが先に立ちすぎるのが欠点だ。特にラストのオチはエンターテインメントと割り切っていても納得いかないうえに、続編作りますという宣伝臭も強すぎてなんとも不快。アクション映画であれば、もう少し潔い作り方ができないものか。

 読了本はジェイムズ・クラムリーの『ファイナル・カントリー』。
 久々のミロ・ドラゴヴィッチもので、CWAのシルヴァー・ダガー賞に輝いた作品である。
 事件の発端は、酒場で出会った美女。「危険なまでに魅惑的」な女モリーと関係をもったミロだったが、やはり裏があった。レイプされて殺された妹の敵討ちを手伝ってほしいというのだ。モリーを囮にし、犯人とおぼしき男を罠にかけるはずだったが、罠にかけられたのはミロの方だった……。
 とにかく作者が詰めるだけ詰め込んだという印象が強く、サービス満点の一作。60歳を迎えたミロだが恐ろしいほど元気いっぱいで、アルコールにドラッグ、セックス、ケンカと退屈するヒマもない。だが単なる派手な話に終わらず、このシリーズが持っているしみじみとした味わいも損なわれていない。そしてそれを引き立てる文章の上手さ。この動と静のバランスの良さこそ本作の肝といってよいだろう。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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