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 マイクル・コナリーの『ブラックボックス』読了。
 二十年前のロス暴動事件の際に発生したデンマークの女性ジャーナリストが殺害された事件を追うボッシュ。ついに突き止めた凶器の拳銃から、なんと湾岸戦争との関わりが浮かび上がってくる。この拳銃こそ、ボッシュが信念とする“ブラックボックス”になる存在なのか?

 ブラックボックス(下)

 なるほど。上層部の圧力にも屈せず、あくまで一匹狼の姿勢を変えることなく捜査にこだわるボッシュの姿はこれまでどおり。娘や恋人との人間関係も彩りを添え、今回も安定の面白さではあるのだが、同時に物足りなさも感じないではない。

 その最たる原因は事件の弱さだろう。湾岸戦争の影が浮上するあたりではかなり期待させるのだが、その後の広がりが緩いうえに小粒である。国際的な陰謀にしろとまではいわないけれども、結局このレベルの事件かと思わせる肩透かし感。
 また、重要な情報が何でもかんでもインターネットで集まってしまい、ボッシュの捜査がとんとん拍子に進みすぎるのも気になる。 あっと驚くようなどんでん返しもなく、ひと昔前のネオ・ハードボイルドっぽい感じか。

 そんななかクライマックスだけはかなりのページを割いて、久々にボッシュの活劇が楽しめる。ここで一気にフラストレーションを解消させたいところだが、これはこれでボッシュが強引すぎたり、唐突に“助っ人”が登場したり、やや無茶な展開ではある。
 この“助っ人”の扱いをもっと掘り下げておけば、より可能性を感じる作品になった気もするのだが。

 ただ、それらがすべてマイナス要素というわけではなく、普通に楽しめるレベルであることはいっておこう。他の作家が書いていれば、おそらくもっと褒めていたはず。
 しかしながらシリーズを通してボッシュの変遷を追っている読者としては、これぐらいでは大満足とは言い難いのである。前作『転落の街』がなかなかの出来だっただけに、余計その思いが強くなった次第。


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 マイクル・コナリーの『ブラックボックス』をとりあえず上巻まで。
 ロス市警の未解決事件班で任務にあたるハリー・ボッシュの次なる事件は、二十年前に発生したロサンジェルス暴動の最中に起こった殺人事件だった。1992年。暴動によって荒れ狂うロスで、一人の外国人女性ジャーナリストが殺害される。取材中での強盗被害かと思われたが、暴動騒ぎのなかで十分な捜査は不可能。ボッシュも別の事件へと外されてしまう。
 それから二十年。ロス暴動20周年ということもあり、当時の未解決事件を集中して捜査することになったボッシュは再び外国人女性ジャーナリスト殺害事件を追うことになる。だが、またしてもボッシュの前に市警上層部の政治的圧力が……。

 ブラックボックス(上)

 タイトルになっている「ブラックボックス」とは、事件の解決につながる鍵のことをいい、すべての事件にはブラックボックスがあるという。ボッシュはそのブラックボックスの存在を信じて捜査を続ける。
 政治的圧力や娘さんとの交流などといった味付けはいつもどおりながら、リーダビリティは相変わらず高い。若干、おとなしめの展開が少々気になるところだが……さて、下巻ではどの程度、物語が広がるか。
 詳しい感想は下巻読了時に。


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 マイクル・コナリーの『転落の街(下)』読了。
 今回、ややネタバレ気味ですので、未読の方はご注意を。

 転落の街(下)

 過去の婦女暴行事件と市議の息子の転落事件を捜査するというのが、本作の大雑把なストーリー。その二つの事件は密接に関係するというのではなく、今回はいわゆるモジュラー型。直接のつながりはないのだが、ボッシュの生き方に大きな影響を与える事件として描かれている。
 まあ、考えたらこれまでの作品も結局、事件の本筋よりも、むしろその事件がボッシュにどのような影響を与えるか、すべてはそこに集約されているような気がする。

 本作では特にそれが顕著。
 事件を通して、組織やパートナーとの確執(毎度のことではあるが)が生まれたり、ボッシュが引退を考えるようになったり、娘マディとの交流を深めたり、さらには新しい恋人ができたりと、まあ忙しいこと。
 もちろん、こういうサイドストーリーが縦に横にと張り巡らされることで、ボッシュ・シリーズの深みや厚みが増していることは間違いないし、だからこそファンとしては先が気になるのである。
 管理人としてはボッシュのロマンスも去ることながら、娘マディとのやりとりがもっとも癒される部分ではある。刑事志望の彼女がボッシュをあっと言わせる部分はこれまでなら考えられない展開だが、ボッシュの引退問題、さらには彼女が成長して実際に警察に入ることまで考えさせるわけで、あざとさも若干は感じるけれど、やはりコナリーは上手くなったと思わずにはいられない。

 また、こういうサイド・ストーリーの面白さだけでは、もちろんない。
 肝心の二つの事件も、それぞれ単独で成立するぐらいの中身はある。
 例えば市議の息子の転落事件では、殺人・事故・自殺という三つの選択肢を提示しつつ、この中でどんでん返しを見せてくれる手腕は鮮やか。死体についた傷やビデオなど、地味ながら説得力あるネタを小出しにしつつ、最後は意外な形で事件の様相を反転させる。おまけに、その事件をとりまく政治的状況でさらに一捻りする。
 かたや過去の婦女暴行事件は、容疑者が当時八歳の少年だったという、ある意味、不可能犯罪的な状況を作り出す。まあ、さすがにこれは大した仕掛けもないのだが、オーソドックスなサイコスリラーという雰囲気で、転落事件ほどの面白みはないけれども、犯人逮捕のシーンはさすがに練られていて見事。こちらはボッシュの新しいロマンスが絡み、それに伴ってボッシュの刑事という人生そのものが問われるあたり、やはりただでは終わらない。

 事件がボッシュにどのような影響を与えるか、すべてはそこに集約されているような気がすると先に書いたが、こうして要素要素を出してみると、ストーリーのメインとなる事件とサイドストーリーが実に巧みに融合されている印象だ。だからこそクライムストーリーでありながら、ボッシュ自身の物語にもなっているのだなと再確認した次第。
 最近のボッシュ・シリーズは面白いことは面白いけれど、もうひとつ食い足りない部分もあっただけに、本作はかなり満足。次の『ブラックボックス』もぜひこの調子を期待したい。


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 マイクル・コナリー『転落の街』をとりあえず上巻まで。
 日本でもコナリーの新作はまずまず安定して紹介が続いているが、ハリー・ボッシュものとなると、ゲスト出演を除けばおそらく2014年の『ナイン・ドラゴンズ』以来だからけっこう久しぶりだ。

 転落の街(上)

 こんな話。
 ロス市警で未解決事件の特別捜査を担当するボッシュの次なる任務は、とある婦女暴行殺害事件。しかし、DNA再調査で容疑者と思われた男は当時八歳の少年だった。警察のミスか、それとも……?
 捜査を続けるボッシュのもとに緊急連絡が入る。高級ホテルの一室から市議の息子が転落するという事件が起こたのだ。自殺あるいは事故、それとも殺人? 被害者の父親である市議はボッシュの仇敵でもあったが、なぜか彼はボッシュに捜査を懇願する。
 二つの事件が錯綜するなか、ボッシュはさらに捜査を進めていくが……。

 いやあ、ボッシュものはやはりいいなぁ。リンカーン弁護士も悪くはないが、個人的にはボッシュもののほうが好みである。今回も小さなところから事件の様相がガラリと変わってくるシーンがあったり、なかなか好調。
 詳しい感想は下巻読了後に。
 

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 マイクル・コナリーの『証言拒否 リンカーン弁護士』、下巻も読了。

 今回は徹底した法廷ミステリである。2011年の作品だが、当時アメリカで大きく取りあげられていたサブプライムローンの問題を背景に、持ち家の差し押さえを受けた女性が、その恨みから銀行副社長を殺害したという事件を扱っている。
 この容疑者の女性がなかなか癖のある人物で、殺人容疑を受けているにもかかわらずスタンドプレーが多く、事件の映画化の誘いに乗って後援者まで獲得したリする。
 そんな中で我らがリンカーン弁護士のミッキー・ハラーは遂に本作で事務所を構え、スタッフとともにチームでこの難事件に取り組んでいく。

 証言拒否(下)

 基本的にはいつもどおり安心して読める作品である。
 上下巻ながらほぼだれることなく読ませる力はさすがにコナリー。特にミッキー・ハラーものはボッシュものよりライトな味付けということもあって、非常にテンポ良くストーリーを運んでいく。
 もちろん読みどころは、メインストーリーとなる検察側と弁護側の攻防である。最初はジャブの応酬ながら、徐々に決まる互いのクリーンヒット。そして最終的にハラーが狙っていた逆転パンチが明かされるところは非常に鮮やかだ。

 また、メインストーリー以外にも物語を膨らませるサイドストーリーたるエピソードがいくつかあるのだが、それらエピソードの出し入れと本筋への絡ませ方が巧い。
 例えばハラーと元妻の検事補マギーとのロマンスなどは、愛情と仕事上の関係が入り混じって、最終的にはハラーの生き方や考え方そのものを問う流れとなる。シリーズとしては決して小さくない要素なのだが、決して本筋を邪魔することなく、それでいて事件にも影響を与える部分もあり、このバランスが絶妙なのである。

 これだけでも十分法廷ミステリとしては成功なのだが、コナリーは例によって駄目押しともいうべきどんでん返しを加えている。ところが、この駄目押しが実はいただけない。
 もちろんストーリーとしての驚きはあるけれど、肝心のトリックがしょぼいのである。そもそもそんな程度の仕掛けなら公判中に誰も言い出さない方がおかしいし、そういう不安定な要素を含んだまま判決がおりてしまう裁判制度にも疑問が残る。
 ストーリーやテーマとしては非常に意味あるものなのだが、その手段がコナリーらしくない拙さ。実に残念。

 したがって全体に満足できる作品ではあるが、今回ばかりはラストが大きく足を引っ張って、個人的には70点といったところ。
 ちなみにやや古い作品ではあるが、本作を読んでウィリアム・ディール『真実の行方』を思い出した。リチャード・ギア主演で映画化もされたはずだが、法廷ミステリとサイコミステリを合わせたようなタイプでおすすめ。


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 本日の読了本はマイクル・コナリーの『証言拒否』を上巻まで。リンカーンを事務所代わりにして刑事弁護に奔走するミッキー・ハラー・シリーズの四作目。
 ハリー・ボッシュとの共演がしばらく続き、どうしても事件とは別方面の興味で引っ張ってきた印象もあるが、本作は久しぶりにハラー独自の物語のようだ。

 証言拒否(上)

 今回の依頼人はシングルマザーの女教師リサ。ローン未払いを理由に家を差し押さえられた彼女に対し、ハラーは銀行の違法性を主張して訴訟に乗り出す。だがひとつ問題があった。彼女は同じような立場の仲間を集め、銀行の違法性に抗議するデモを繰り返すなど暴走癖があり、非常に取り扱いが難しい依頼人だったのだ。
 そんな中、当該銀行の副社長を撲殺した容疑でリサが逮捕される。ハラーは新人弁護士や腕利きの調査員とともに弁護に打って出るが、彼女の暴走は止まらず、事件の映画化を狙うプロデューサーまでを後継者として引き入れてしまう……。

 今回はシリーズ原点に立ち返るというか、本格的な法廷ミステリの様相である。検察側との対決も法廷内外でばちばち行われ、上巻ではまさに一進一退。ここに想定外の問題が降りかかってきて……というのはある意味お約束だが、それらをバランス良く配して非常にリーダビリティが高い。
 ま、詳しい感想は下巻読了時に。


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 マイクル・コナリーの『判決破棄』読了。まずはストーリーから。

 二十四年前の少女殺害事件に対し、有罪判決が破棄され、審理の差し戻しが行われた。DNA鑑定によって、被害者のワンピースについていた体液が犯人とは別人のものだと判明したのだ。
 検察側は勝算が薄いとみて、刑事弁護士のミッキー・ハラーに特別検察官を依頼する。しかし、ハラーは服役囚が犯人であることを確信し、あえてその依頼を受ける。条件として出したのは元妻の検事補マギーとロス市警殺人課のハリー・ボッシュをチームに加えることだった……。

 判決破棄(下)

 ミッキー・ハラーとボッシュが共演し、おまけにレイチェル・ウォレスまで特別出演するという派手なキャスト、しかもハラーが冤罪の可能性大という少女殺害事件に検察側として乗り出すというのだから、その設定だけでお腹いっぱいである。
 ところが実際にいただいてみると、中身の方は意外なほどにあっさりめ。法廷では主にハラー、法廷外ではボッシュが中心に物語が進められるが、どちらのパートもいつもに比べると比較的淡白な味わいだ。

 決してつまらないわけではない。検察側と弁護側のジャブの応酬から、終盤の激しい打ち合いまでまったく退屈はしない。最後の決着のつけ方がやや曖昧なところは残念だが、ミステリとしては十分及第点といえるだろう。

 ではその淡白さの理由は何か。これは事件と関係者の関わり方の薄さにあるのではないか。事件が少女殺害であり、ハラーもボッシュも自分の子供がいることから、それぞれ被害者の痛みを自己に重ね合わせてはいるのだが、そこが中途半端なのである。これがボッシュ・シリーズであれば、そういう子供への犯罪に対する徹底的な掘り下げをするところを、表面的に流している感じなのである。
 より極論すると、法廷ものならではのゲーム性で勝負するのか、それとも少女殺害というテーマを訴えたかったのか、作品のテイスト自体が中途半端だった嫌いもある。
 上巻の感想でシリーズ主人公の共演する意味合いみたいなことに触れたのだが、本作は物語の骨格としてはハラーものなのだが、テーマとしてはむしろボッシュものに寄せており、それが結果的にそれぞれのシリーズの良さを逆に弱めていると感じた次第だ。

 繰り返しになるけれど、一作でハラーとボッシュの活躍両方が楽しめる良さはあるし、決してつまらない作品ではない。だが最近のシリーズの中ではやや落ちる方だろう。


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 マイクル・コナリーの『判決破棄』を上巻まで。

 判決破棄(上)

 昨年の秋頃に出た弁護士ミッキー・ハラー・シリーズの最新刊だが、別シリーズの主人公ハリー・ボッシュやレイチェル・ウォリングも共演する豪華版である。
 といっても最近のコナリーの作品は共演が当たり前になってきているので、最初のころはともかく、今ではそれほどのワクワク感はない。むしろ共演が多すぎて、どうなんだろう?と思うこともしばしばである。

 それぞれのシリーズは、それなりの意味や目的があって主人公を変えているはず。つまりシリーズごとにテーマが異なるのである。だからそんな意味合いが違うシリーズの主人公を共演させることで、そのテーマやメッセージ性がぼやけるのは避けられない。
 まあ一回や二回の共演なら相乗効果、あるいは個性がぶつかることで違った魅力が生まれる場合も期待できるだろう。とはいえダラダラ共演を続けてしまってはマンネリは避けられないし、おそらくどちらかの主人公の輝きは失せていってしまうのではないか。そんな不安があるのだ。

 本作は果たしてこの不安を吹き飛ばすような物語になっているのか。作品そのものの出来はもちろん気になるが、シリーズの先行きにも注目しつつ下巻にいってみよう。


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 マイクル・コナリーの『ナイン・ドラゴンズ』読了。
 南L.A.で発生した中国人店主の殺人事件。背後に中国系犯罪組織"三合会"の存在を突きとめるが、容疑者を捕らえたロス市警刑事ボッシュのもとには、香港にいる娘の監禁されている画像が送られてきた。娘を取り戻すべく、ボッシュはただちに香港へ向かった……というのが上巻の主な粗筋。
 下巻では香港へ到着したボッシュが、前妻のエレノア、そして彼女の協力者サン・イーと共に娘の捜索を行うという展開を見せる。
 これがまた徹底したエンタメ路線であり、コナリー版『ダイハード』あるいは『24 TWENTY FOUR』とでもいった趣き。実はけっこう衝撃的なエピソードもあるので、今回は完全にこのスタイルで通すのかと思っていると、さすがはコナリー。終盤で事件の構図を一気にひっくり返す荒技をたたみかけてくる。

 ナイン・ドラゴンズ(下)

 いやいや実にお見事。
 単独のミステリ作品として評価するなら、問題なく傑作である。以前にも何回か書いたが、コナリーは『暗く聖なる夜』あたりからミステリを書くテクニックが急激にレベルアップしたように思う。プロットや仕掛けもとにかく練られているし、上手くなったという印象である。
 本作でも中国人店主の殺人事件、娘の誘拐事件それぞれをストレートに描いてもけっこう面白そうなのだが、まずはそれぞれに仕掛けを施し、なおかつそれを絡め、加えてボッシュと娘や前妻、同僚らとのドラマにも膨らみを持たせるという結構。一見すると中国のギャング組織から娘を取り返すというアクション小説を、それはそれとして活かしつつも、最終的な着地点をまったく予想外なところで準備する鮮やかさである。
 正直、ミステリとしてこれ以上何を求めるのか、というレベルにまできているのではないか。それぐらい素晴らしい。

 ただ、シリーズ最初期からのファンからすると、初期の苦悩するボッシュ、怒れるボッシュ、内省的なボッシュだからこそ心打たれたという側面は紛れもなくある。
 そこを抜けた先に現在のボッシュがあるのだが、キャラクター像の変化については人間的成長や年齢が上がってきたことなどもあるからいいとして、気になるのはシリーズとしての興味のポイントまで変化するところだ。
 初期の作品においては、ボッシュという特異な主人公だからこそ成立している内容が主で、そこにハードボイルドや警察小説としての面白みが集約されていた。しかし最近の作品では特別、ジャンル的な重きは置かれていないように見受けられる。むしろミッキー・ハラーやレイチェル・ウォリングなど別シリーズの主人公を登場させ、コナリーランドとでもいうような全方位的エンターテインメント路線に向かっているようだ(本作でもハラーがおいしい形で登場している)。
 その結果として、例えば本作ではボッシュと娘など主要人物との関係がいくつかクローズアップされてはいるのだが、娯楽要素が強すぎるため、人間ドラマがそれほど心に響かない。ミステリだから娯楽要素が強いのは当然なのだが、本来ボッシュものを読んできたファンが求めているのは、おそらくそこではないはずだ。

 まあ、そうはいってもシリーズもこれだけ長くなると、この程度の変化は当たり前なのかもしれない。個人的にはそういうのは別シリーズでチャレンジしてもらいたいところだが、ミステリとしてのレベルアップを考えればむしろこれは喜ぶべきことなのだろう。もちろんコナリーがこのまま単なるエンタメ路線にひた走るとも思えないし、今後の展開にもまだまだ期待したいところである。


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 マイクル・コナリーの『ナイン・ドラゴンズ』をとりあえず上巻まで。久々のボッシュ・シリーズである。

 南L.A.で食料品店を営む中国人が、店で銃殺されるという事件が起きる。当初は万引きに絡んだ逆恨みによる犯行かと思われた。だが捜査にかり出されたロス市警本部殺人事件特捜班のボッシュたちは、事件の背後に中国系犯罪組織"三合会"が存在することを突き止める。
 そして浮かび上がる一人の容疑者。だが、高飛びを企てる男の身柄を拘束したとき、香港に住むボッシュの娘が監禁されている映像が届く……。

 非常に軽快なテンポで展開するストーリー。従来の作品でいうとシリーズ前作の『死角』に雰囲気は近く、内省的ハードボイルドといった雰囲気は今や遠い昔である。それが好ましくもあり、物足りなくもあり、という二面性をもつのが悩ましいところだ。
 詳しい感想は下巻読了時に。

 ナイン・ドラゴンズ(上)


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