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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

スチュアート・パーマー&クレイグ・ライス『被告人、ウィザーズ&マローン』(論創海外ミステリ)

 プライベートでいろいろありすぎてバタバタの一週間。精神的にかなりきつくて読書もままならないが、なんとか一冊読んで感想を書いていると、その間は辛いことも忘れられる。読書にはいろんな効能があるけれど、心を穏やかにしてくれたり元気にしてくれるというのは最大の良さかもしれない。

 本日の読了本はスチュアート・パーマーとクレイグ・ライスの合作短編集『被告人、ウィザーズ&マローン』。ライスのシリーズ探偵・弁護士ジョン・J・マローンとパーマーのシリーズ探偵・教師ヒルデガード・ウィザーズの共演作品でもある。
 まずは収録作。

Once Upon a Train「今宵、夢の特急で」
Cherchez la Frame「罠を探せ」
Autopsy and Eva「エヴァと三人のならず者」
Rift in the Loot「薔薇の下に眠る」
People vs. Withers and Malone(Withers and Malone, Crime-Busters)「被告人、ウィザーズとマローン」
Withers and Malone, Brain-Stormers「ウィザーズとマローン、知恵を絞る」

 被告人、ウィザーズ&マローン

 本作の売りはもちろん二人の作家による名探偵の共演というところにあるのだが、マローンはともかく、わが国ではウィザーズの知名度が著しく低いのが残念といえば残念。スチュアート・パーマーのウィザーズものはわずかに新樹社の『ペンギンは知っていた』、原書房の『五枚目のエース』がある程度で、正直こちらが作風やレベル感をはっきりつかんでいない状況である。そんな状態で本作を読んでも、合作の具合がいったいどの程度のものなのか、両探偵の魅力がかみあっているのか、判断しにくいのである。
 もちろん、そんなことを気にせず、ミステリとしての出来だけで判断しても良いのだが、それでは本作の楽しみをかなりの部分放棄してる感じもして、なんだかすごく損をしている気分である(笑)。

 ただ、マローンものとしては普通に楽しめたし、ウィザーズについての理解が少なくてもマローンとウィザーズの掛け合い自体は面白く読めた。
 この手の作品では往々にして共演のみが読みどころとなり、ミステリとしての出来はいまひとつのものも多いが、本作では「被告人、ウィザーズとマローン」のようなキレのある作品も含まれていてよろしい。ただ、「被告人、ウィザーズとマローン」は合作といいながら、ほぼパーマーの筆によるものらしいけれど(苦笑)。
 まあ、傑作とまではいかないが、クレイグ・ライスのファンには嬉しいボーナス的一冊といえるだろう。


クレイグ・ライス『もうひとりのぼくの殺人』(原書房)

 読了本はクレイグ・ライス『もうひとりのぼくの殺人』。
 主人公はパルプ小説作家のジェフリー・ブルーノ。あるとき彼が目覚めると、そこは列車の中だった。なぜその列車に乗っているのかもわからず、ジョン・ブレイクという見知らぬ名前の名刺や同じくブレイク宛ての手紙まで持参している始末。挙げ句の果てには手に取った新聞に、ジョン・ブレイクなる人物が殺人容疑で指名手配されているではないか。載っている写真は、紛れもなくジェフリー本人の顔だ。果たして自分は二重人格者なのか? もうひとりの自分が殺人を犯したのか……?

 巻き込まれ型のサスペンスで、ちょっとアイリッシュのある短編を彷彿とさせる一作。トリックも実はその短編に似ているのだが、あまりに極端な状況設定なので、可能性が限られてしまい、逆にネタは割れやすいかもしれない。また、探偵役のメルヴィルが事件に関与する件も、少々強引すぎる気がする。
 だが何より嫌なのは、人称がころころ変わったり、回想が組み込まれたりする部分。原文がどうかはわからないのだが、少なくとも本書においては文章がこなれていない印象を受け、読んでいてイライラするところも少なくなかった。
 結論。全体的には悪くない作品だ。畳みかけるようなサスペンス、エンディングの鮮やかさはさすが小説巧者のライスであろう。しかし上に挙げたマイナス点が、個人的にはかなり気になり、六十点というところだろうか。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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