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 モリス・ハーシュマンの『片目の追跡者』読了。
 作者のモリス・ハーシュマンについては、早川の『密室殺人傑作選』に短編が載っているらしいので、かつて読んだことがあるはずだが、まったく記憶なし。ほぼ100%未知の作家だが、1960~70年代に活躍した中堅どころのハードボイルド系作家とのことだ。今あらためて日本で紹介するほどの価値があるかどうかはともかく、個人的にはツボなので大歓迎。論創社、今後も期待してます。

 それはともかく『片目の追跡者』。こんな話である。
 私立探偵のスティーヴ・クレインは、相棒のベン・ヴァーバーと共同で探偵事務所を開いている。今日もある事件のために張り込みを続け、途中でベンと交替する段取りになっていた。だが約束の時間に姿を見せないベン。やむなく張り込みを最後まで行ったあと、ベンに連絡をとろうとしたクレインだが、ベンは完全に消息不明となっていた……。

 時代的にはハードボイルドとネオ・ハードボイルドの間をつなぐようなポジションか。自らの生活を赤裸々に語るのがネオ・ハードボイルド派の大きな特徴のひとつとすれば、本書はネオ・ハードボイルドに分類されるべきだが、主人公クレインの行動や心理はあくまで旧ハードボイルドのそれだ。しかもクレインの生き方は、完璧に卑しき街を歩く騎士のそれであり、文句のつけようがなく格好いいのである。
 これをキャラクター造形の結果とみればいろいろ他にも思うことがあるのだが、残念ながら、本書の場合、そこまで深く考察された小説とはいえないだろう。他の登場人物たちにしても、明らかに類型的なレベルにとどまっており、本書は結局、書き飛ばした通俗ハードボイルドにすぎないのだ。
 ただ、個人的には決して、こういうタイプの小説は嫌いじゃない。地道な捜査の果てにたどり着くラストはなかなか意外性もあり、正直、惜しい作品だなあと思う。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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