本と映画のパンフレットを少し処分する。段ボール3箱分が約七千円。絶版ものが多かったので、今回は相応の古書店に持ち込んだのだが、まあまあの金額になって一安心。
出版エージェントのバーバラは9年前に娘を殺害された過去をもつ。今では何とか立ち直り、仕事も順調になりつつあった。そんなとき彼女のもとに、一本の電話がかかってくる。「ママ、私よ……」それは死んだはずの娘、アンからの電話だったのだ。
ホラー小説はあまり詳しいジャンルではないのだが、本日読んだ『無名恐怖』の著者ラムゼイ・キャンベルは、海の向こうではなかなか人気のあるベテラン作家だ。著作はすでに四十作を優に超えている。なぜか日本では『母親を喰った人形』が紹介されているのみ。解説によると、地味な作風が災いしているとのことだが、確かにキングやクーンツあたりに比べると、ハッタリやケレンに欠けているのは確か。スーパーナチュラルを扱っているのに、それをあえて前面に出すことはなく、一見普通のミステリっぽい進め方に終始する。さすがに最後は多少派手な演出を見せるが、激しいホラーに慣れた読者には物足りないのかもしれない。
ただ、この人、文章はなかなか上手いと思う。主人公バーバラが、仕事や恋愛や娘の事件の狭間で悩み苦しむ様子を、しつこくでもなく、淡々とでもなく、描写していく。このバランスというか匙加減がいい。丁寧すぎて少々だれるところもあるが、読み飛ばしをさせない文章はさすが。考えたらホラーというのは、読み飛ばしをしたら怖くも何ともないわけだしね。