仕事でトラブル。いつもより2時間早く出社し対策会議。幸い大事に至らずにすんだが、とにかく眠い。
論創海外ミステリの刊行が快調に続いているが喜ばしい限り。昨今の古典ブームにのったシリーズではあるが、評価したいのは本格だけでなくハードボイルドや犯罪小説といったものも含めていることである。その分ポイントが絞れていないといった評もあるようだが、なに、要は読めればいいのだ。本日の読了本はそんな非本格ものから、ジョン・ウェルカム『訣別の弔鐘』。非本格というより、正調英国冒険小説である。
リチャード・グレアムは元諜報部員にして、アマチュア騎手という異色の経歴を持つ男。そのキャリアを買われ、知人の出版社社長から軍事ものの原稿の下読みを依頼されることもある。
そんなある日手渡された原稿を見てリチャードはショックを受けた。著者の名はルパート・ロール。リチャードの元上官でありながら彼を殺そうとし、しかも恋人まで奪ってしまった男なのだ。だが何よりルパートは既に死亡していたはず。だがその原稿が盗まれるにおよび、リチャードは原稿に隠された秘密を探りだす決意をする……。
なかなかうまくまとまった冒険小説である。裏に隠された陰謀などはちょっと雑だが、スパイ小説ではないので、このあたりで十分でしょう。
むしろ読みどころはアクションと男の絆というところであろうか。特にグレアムとルパートの関係がなかなか上手く描かれ、最終的にルパートが主人公を裏切った動機に焦点を当てているのが興味深い。脇役も個性的。それほど期待していなかっただけに意外な拾いものであった。