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 あれだけ暑かったのが嘘のようなこの一週間。暦も秋に移り、いよいよ読書の秋、なのか? まだ夏休みもしっかりとっていないのだが(苦笑)。


 本日の読了本はピーター・ラヴゼイの『漂う殺人鬼』。
 たくさんの海水浴客で賑わう浜辺で、一人の女性が絞殺されているのが発見された。周囲には多くの人がいたにもかかわらず目撃者は皆無。その大胆な手口に被害者の身元すらなかなか突き止められない始末だった。しかし警察の捜査で、女性がプロファイラーだったことが判明。彼女はある連続殺人の捜査に関係していたことが明らかとなるが……。

 ラヴゼイという作家は、実にそつのない作家である。人物造形、ストーリーの盛り上げ方、プロット、意外な結末などなど、ミステリにおよそ必要と思われる要素を、常に一定以上のレベルで満たしている。本作も現代ミステリのお手本のような作品で、メインのトリックとなる部分は必ずしも斬新なわけではないのだが、見事に新しい器に盛り替えている。

 ただし、本作はミステリとしては悪くないレベルなのだが、個人的にはかなり納得のいかない一冊なのである。その理由はふたつ。
 ひとつはプロファイラーがコンピュータに残していた手記の存在。日記でもない、仕事の記録でもない、正に手記である。仕事の記録とプライベートの日記、恋人との営みに至るまで、自分の日常から思考・感情の一切合切をまとめたものだ。そんなものを、ただのテキストファイルにしてパソコンに保存する人間など本当にいるか? それが仕事に関するメモ書きや日記なら全然かまわないのだが……。この不自然な、まるで私小説のような手記の存在がかなり引っかかって、最初は犯人の擬装かと思ったくらいだ。
 もうひとつ。やはり避けては通れないのが、前作で亡くなったピーター・ダイヤモンド警視の奥さん、ステフのことだ。本作では確かにその事件を引きずったピーターについての言及はあるが、これではあまりにも物足りない。正直、本作から作風もかなり変わるのではないかと予想していたぐらいなので、これは拍子抜けであった。別に文学にする必要などないけれど、単なるシリーズのアクセントとして前作があったのでは、ステフも浮かばれんぞ、ほんと。もしこのままシリーズが続くなら、作家としてのラヴゼイにちょっとガッカリである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ピーター・ラヴゼイ『最期の声』読了。
 ダイヤモンド警視シリーズの最新作だが、ダイヤモンド警視の愛妻ステフが殺害されるというショッキングな事件がすべてといってよいだろう。シリーズキャラクターの死でも読者には辛いところだが、それが主人公の妻とあっては。しかも病死や事故死などではなく、殺人事件の被害者である。
 正直、その事実だけで、読むのをためらったほどだが、ある意味読まずにはいられない。

 結果から言うと、ミステリとしては十分評価に値する佳作である。ラヴゼイのようなベテランともなれば安定度はトップクラス。ミステリとしてはほとんど外れがなく、本作もその意味では満足できる水準である。構成も上手いし、二重三重に施した仕掛けも見事。登場人物の個性も際だち、妻を亡くしたダイヤモンドが徐々に立ち直っていく姿も胸を打つ。

 問題は、なぜラヴゼイは重要なシリーズキャラクターであるステフを葬ってしまったのか、だ。シリーズに変化を求める気持ちはわかるが、なぜステフなのか。
 本作を読んだ人ならわかるだろうが、ミステリとしては、他の警官の妻でもお話しを成立させることは可能である。あるいは小説としての奥行きを持たせたかったのなら、ノン・シリーズにして、別の主人公夫妻を登場させるという手もあるだろう。
 そもそもステフの死によって、作者に何のメリットがあったのか?
 まずは本作の話題性を上げる、という目的が考えられる。つまりPRである。だがステフの人間性や好感度を考えると、逆にその後のシリーズでファン離れの起こる可能性があるため、かえって逆効果であろう。
 次に、妻の死でしか描けない物語があるという理由。だが、これは先述のように、回避する手段はいくらでもあるだろう。
 となると、いま考えられるのはひとつ。ダイヤモンド警視という人間の生き様をより深く描きたいがための創作欲からくる結果ではないか、ということ。ラヴゼイはシリーズを今後も書き続けるようで、当然ながら、最愛の人の死はダイヤモンド警視のその後の人生に影を落としてくるはず。それがダイヤモンドの日々の生活や仕事、そしてシリーズにどう影響してくるのか。答えは以降の作品を読んでみないことにはわからないが、とにかく文学的アプローチは強くなってくる気がする。
 しかし、個人的には、この手のシリーズでそれをやってくれるなよ、という思いの方が強い。


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