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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ウィリアム・ゴールドマン『殺しの接吻』(ハヤカワミステリ)

 本日も地震が数度。特に最初のは東京でもかなりの揺れを感じると思ったら、新潟ではやはり震度5弱はあったようだ。社内でも親戚の方などにいろいろと被害があったようで、とにかく痛ましいかぎり。

 今まで読もうと思っていたのに、なぜか後回しにしてきたメジャー作家というのがあって、私的にはウィリアム・ゴールドマンもその一人。一般的には『明日に向かって撃て』とか『華麗なるヒコーキ野郎』とか『大統領の陰謀』などを書いた脚本家として有名だろうが、本来は小説家。なかでも『マラソンマン』はとりわけ知られた作品だろう。しかしこれも買ってはいてもずっと積んだまま。今ではどこにあるかもわからず、ポケミスの名画座シリーズに入った『殺しの接吻』を先に読むことになってしまった。

 主人公は、幼い頃に顔に火傷を負ってしまった刑事。そんな彼のもとに、なぜか連続猟奇殺人事件の犯人から電話が入る。半信半疑だった刑事だったが、その後も犯人からの連絡は続き、いつしか二人の間には奇妙な絆が芽生え出す……。
 ううむ、こんな中途半端な粗筋では、この作品の魅力はまったく伝えられない。最初は屈折した性格の刑事と異常性格者の犯人が交互に描写されるため、よくあるサイコ・スリラーのパターンかとなめてしまったのが敗因。それが中盤から思いもよらぬ展開を見せ始め、最後はどうなるのか見当もつかなかった。とにかくこのオフビートな展開が最大の魅力。読者を驚かせるというより、いい意味で裏切れる作品という感じで、いやいや本当に参りました。こりゃ『マラソンマン』も早く読まなきゃ。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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