何らかのテーマに沿って読書をするということが、あまり出来ない質らしい。今月はミステリーから捕物帳、ファンタジー、国文学に英文学という具合で、広義のミステリーという範疇に無理矢理収められないこともないが、見事にバラバラ。日記では書かないが、仕事の関係で読む本を入れるとさらに脈絡はない。
実はディクスン・カーの作品なども読み残しが多いので、常々一気に読んでしまおうと思っているのだが、なぜか続けて読めない。1冊読むと満足してしまうというか。昔は――特に学生の頃は――同じ作家の作品を立て続けに読んだり、密室ものなら密室ものを続けて読んだり、ということができたのに、これはいったいどういう理由によるものなのだろう?
『パリの狼男』読了。ポケミスの一冊だが、中身はいたってオーソドックスな怪奇小説。直球勝負の狼男ものである。
著者のガイ・エンドアは、マルキ・ド・サドやジャンヌ・ダルク、アレクサンドル・デュマなど、数々の伝記や実在の人物をモデルにした小説をものにしていることもあってか、語り口はかなりノンフィクションっぽい。変にケレン味を出し過ぎるよりは好感が持てる文章だが、事実関係の描写を(本書では歴史)淡々とやられると、あまり興味のない読者には辛い部分もあるかもしれない。また、ホラーという分野にあって、それが100パーセント有効なのかという疑問もある。展開そのものは真っ当なホラーなのに、読んでいてもゾクゾクとする怖さを感じることがほとんどないのだ。
著者が本当に描きたかったのは、パリの暗い歴史の一面ではなかったか、そんな印象を強くした作品である。