ipod購入。MP3というよりは外付けHDDの代わり。でもさすがにアップルはデザインが上手い。
読了本はデイヴィッド・グーディスの『ピアニストを撃て』。『狼は天使の匂い』もよかったが、これもまたよし。
場末の酒場でしがないピアニストをして暮らすエディ。そこへ久しぶりに再会する兄が現れる。兄はギャングとのトラブルを抱えており、エディに一晩かくまってくれと依頼する。心に暗黒を抱えるエディは兄といえども関わりを拒否するが、否応なくトラブルに巻き込まれることになる……。
巧い。巧すぎ。
主人公の抱える暗黒こそがテーマだが、そこに血の絆や恋愛といったいくつもの心的要素をつぎ込み、さまざまな葛藤をぶつけあう。現代の犯罪小説ほどの仕掛けや激しい描写はない。しかし、この抒情あふれる語りこそノワールなのだ。ラストシーンの余韻のなんと切ないことよ。
今年も年末恒例の『ア・ラ・カルト』を観る。今年は何と十五年目ということで懐かしいキャラも登場。二時間半がアッという間に過ぎてゆく。こっちもすっかり年末恒例のイベントになってしまった。仕事が忙しくても、こればかりは見逃せない。
読了本は『狼は天使の匂い』。「ポケミス名画座」シリーズの一冊で、デイヴィッド・グーディスの作。映画化された名作映画の原作を紹介するシリーズだが、個人的には映画云々よりも、単純に古き良き時代の犯罪小説が読めることが嬉しい。
ストーリーはいたってシンプル。主人公は警察の手を逃れてフィラデルフィアへと逃亡してきた青年ハート。コートを盗んだことがきっかけで、ある犯罪者グループの計画に加わり、決行の日を待つことになる。
ううむ、とりたてて大した話でもないのに、なぜここまで惹きつけられるのだろう? 物語は上記のようにいたって地味な設定だし、強盗計画に邁進するまでの経過もそれほど劇的というわけでもない。そのくせ読み進むうちに、ぐいぐい引き込まれるから不思議だ。
とりあえず言えるのは登場人物たちが際だっていること、そして物語を支える簡潔な文体とセリフの巧さであろう。この二つが融合して、終始、独特の緊張感を保ち続ける。この辺の味わいは、最近の大家といわれるハードボイルド作家でもそうそう感じられるものではない。
超B級というか、犯罪小説の佳作というか。万人向けではないがハードボイルド好きなら押さえておきたい一冊である。