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 今までの真夏日が嘘のような、実に涼しい一日。これでも28度はあったそうで、28度がこんなに涼しく感じられるというのもすごい話である。

 読了本はジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』。ミステリではなく、新潮社のクレストブックスからの一冊。のっけから話がそれて恐縮だが、このクレストブックスは現代の海外文学を愛好する者にとって大変嬉しいシリーズである。翻訳される早さ、その質の高さもさることながら、美しい装丁も魅力のひとつ。軽めの紙もよし。本書を含め『朗読者』や『アムステルダム』などといったヒット作も生まれているようだし、ぜひこのままがんばってもらいたいシリーズなのだ。
 さて、『停電の夜に』である。
 本書もクレストブックスのイメージを裏切ることのない、美しくもほろ苦い話が詰まった短編集だ。著者はイギリスに生まれ、幼少時代にアメリカへ渡ったインド系アメリカ人。作品のベースにはもちろんある程度の民族性が反映されているが、それを前面に出すようなことはない。また、どの話も比較的淡々と流れてゆき、大きな事件が起こることもない。描かれるのは人の細やかな感情の流れであり、小さな悲喜劇である。文体も淡く儚く、日頃血なまぐさいミステリを読んでいる身には心洗われる思いである。おすすめ。

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌



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