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 天気予報どおり雪の一日。でもそれほどでもなくてちょい肩すかし気味。どうせ本日は仕事なので、降るなら思い切り降ってもらっても良かったのだが。

 本日の読了本はかなりのゲテモノ……っていうか、書かれた当時は普通だったんだろうが。西条八十の『人食いバラ』。唐沢俊一監修による「少女小説傑作選」の一冊で、唐沢氏のコレクションからこれぞ、というものを集めた選集らしい。
 著者の西条八十はもちろん詩人として有名だが、西条八十とミステリの関わりというと、やはり森村誠一の『人間の証明』で使われた「帽子」になるだろう。「母さん、僕のあの帽子……」で始まるあの有名な詩だが、角川映画で大ヒットしたのでご記憶の人も多いと思う。ただ、ほんとにそれぐらいしか関連が思い浮かばないのだが、実は少女小説を山ほど書いていたという事実にまず驚く。で、実際に読んでみると、その内容にもまた驚かされるのである。

 主人公は貧しい生活を送る英子という少女。貧しさ故正月から毛糸を売って歩く彼女だが、七草の日にたまたま通りかかったある大邸宅に招かれてしまう。そしてその家の当主、向井元男爵から、自分が余命いくばくもないことを告げられ、死んだ場合に全財産を相続してくれと頼まれるのだ。驚く英子はいったん辞退するものの、結局は遺産を相続することにする。ところがそこに現れた向井氏の姪、春美。彼女は自分が相続すると思っていた財産を横取りされたと逆恨みし、ついには英子の殺害を企てる……。

 何せ二昔も三昔も前の少女向け探偵小説なので、今読むといろいろ突っ込みを入れたくなる作品ではある。敵味方含めて登場人物たちの言動はかなりヤバイし、展開も壮絶。同じ児童向けでも、乱歩や正史のそれと比べると、やはり完成度が落ちるのは否めないだろう。
 まあ、そういう部分を笑って読んでもいいのだが、ただ、荒唐無稽で笑いどころ満載、という感想だけで終わらせて良いのかとなると、それもまた違う気がする。
 なにしろ個々の要素は凄まじいけれども、一応、全体的には大きな仕掛けを基に構築された作品なのだ。少女向けということで教育的配慮も当然為されているはずだが、それとこの内容のギャップを、作者はどのように消化しようとしたのか。そもそも少女向けの探偵小説を作者はどのように捉えていたのかが気になるところだ。また、こういう作品は西条八十だけしか書けなかったのか、それともこれが普通だったのか、リアルタイムで読んだ人は果たしてどのように受けとめていたのか……興味は尽きることがない。
 残念ながらこの手の本もいまやおいそれとは読める状況ではないので、はっきりとしたところはわからない。まあ、あまり続けて読もうという気もしないが(笑)。そういう意味で、本書にはもっとしっかりした解説をつけてほしかったと思う。注釈にしても、あんな無粋なことをするより、もっとちゃんとした考証などにしてほしかった。これを契機として次の展開があるかもしれないのに。せっかくの素材、もっと大事にしてあげてほしいものである。
 ううむ、あまり本筋とは関係ない感想になってしまった。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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