
本日の読了本は、ジェラルド・カーシュの『犯罪王カームジン』。
近年、再発掘されまくった感のある異色作家短編だが、ジェラルド・カーシュはその重要な一角を占める作家だろう。特筆すべきはその豊かな想像力か。奇抜なアイディアをひねくれたユーモアで包み込む独特の世界は、カーシュならではのものだ。
そんなカーシュの作品の中でも、とりわけユーモアを前面に押し出したのがカームジン・シリーズ。希代の詐欺師にして大泥棒のカームジンが語る武勇伝、というか抱腹絶倒のホラ話といった方が適切なんだろうが、まあ正直ミステリ的には大した仕掛けはなく、ネタも他愛ないものが多い。やはり読みどころは、馬鹿馬鹿しい犯罪の設定であったり、あるいはカームジンの伝記作家たるカーシュとのやりとりにあるだろう。
ただし、楽しい作品集であることは間違いないのだけれど、こうしていざまとめて読むと、ひとつひとつの作品がライトすぎて、少々飽きやすいのが欠点か。本作にはボーナストラックとしてノン・シリーズの二作「埋もれた予言」と「イノシシの幸運日」も収録されているので、ほどよいタイミングで口直し的に読むのが吉かと。とりあえずイッキ読みにはご注意を。
「カームジンの銀行泥棒」
「カームジンとガスメーター」
「カームジンの偽札づくり」
「カームジンとめかし屋」
「カームジン脅迫者になる」
「カームジンの宝石泥棒」
「カームジンとあの世を信じない男」
「カームジンの殺人計画」
「カームジンと透明人間」
「カームジンと豪華なローブ」
「カームジン手数料を稼ぐ」
「カームジン彫像になる」
「カームジンと王冠」
「カームジンの出版業」
「カームジン対カーファックス」
「カームジンと重ね着した名画」
「カームジンと『ハムレット』 の台本」
「埋もれた予言」
「イノシシの幸運日」