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 本格探偵小説の古典ブームによる影響だろうが、このところその幅がいっそう広がってきた感がある。ハヤカワの名画座シリーズもそうだし、扶桑社がこのところペーパーバック系の古いところを紹介していて、なかなか気になる存在になってきた。本日の読了本はそんなペーパーバック系ライターの一人、ハリイ・ホイッティントンが1958年に発表した『殺人の代償』である。
 ハリイ・ホイッティントンは150作余りの著作を残し、「ペイパーバックの王者」と称されたほどの作者。しかし、当時の評価は結局優秀なペーパーバックライター以上でも以下でもなかった。ただし、フランスではロマン・ノワールという観点から一部では絶大なる評価を得ているという。『殺人の代償』はそんな彼の代表作だ。

 町では弁護士としてちょっとした名士として知られているチャーリー。だが、資産家の妻の援助で弁護士になった過去を持ち、現在でも財布のひもをしっかりと握られている彼は、忍耐も限界に達しようとしていた。そんな折り、彼は秘書のローラと恋に落ち、彼女と共に妻の殺害計画を企てる。持てる能力と経験をフルに使い、綿密な計画は成功するかに思われたが……。

 かつてペーパーバックで出版されたということは、あくまで使い捨ての小説として書かれたものだ。したがって『殺人の代償』も、話そのものは実にシンプル。しかし、この一見薄っぺらに見える話の密度たるや、決して侮れることはできない。特に注目すべきは、チャーリーの精神的に追いつめられていく様か。犯罪を企てる決意、計画の立案、そして実行、さらには計画の綻びが徐々に彼を絶望の淵へ追いやるに至るまで。そのすべてが高い緊張感の上に成り立ち、読者はチャーリーの運命を確認せずにはいられないのだ。
 W・R・バーネット、ジム・トンプスンらとタイプは違うが、暴力への衝動というか破滅志向というか、割と根っこの方ではつながっているように感じた。個人的には好きなジャンルなのでやや甘めの評価だが、その手のファンをガッカリさせないだけの水準をクリアした作品であると思う。とりあえずは文句なく楽しめたので、ぜひその他の作品も訳してもらいたいものだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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