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 『獲物のQ』読了。いわゆる3Fブームの立て役者の一人、スー・グラフトンのご存じキンジー・ミルホーン・シリーズである。このシリーズも早いもので本作が17冊目。律儀に新刊で読んできたが、そろそろいいかなという気もしてきた。

 こんな話。キンジーの事務所に、旧知の警部補ドーランが訪ねてきた。用件はと聞くと、これが何と事件の依頼である。
 ドーラン警部補の親友に、警察を退職したステーシーという男がいた。彼は現在73歳、悪性リンパ腫に侵されており、すでに生きる気力も失い欠けている。ドーラン警部補も心臓疾患を抱えている身ではあるが、そんなステーシーの姿を見るに忍びなく、何とかして気力だけでも立ち直らせてあげたいと願っている。
 そこで思いついたのが、18年前の未解決事件だった。ドーランとステーシーが発見者となった若い女性の殺害事件だ。
 退屈な日常にうんざりしていたキンジーは渡りに船とばかりにその調査の協力を了解するが、彼女は遺体の発見現場で意外な事態に直面する。

 本書が、従来のシリーズ作と大きく異なるのは、これが実際に起こった事件を元に書かれた作品だからだ。といってもそれだけなら特に珍しいことではない。本書では作者のグラフトンがあとがきにおいて、実際の犯人探しのための情報提供まで呼びかけているという点が特異なのである。
 だが、その点さえ除けば、本書はハッキリ言ってシリーズでも凡庸な出来である。実話という点では確かにある種のインパクトを与えるが、特に大きな社会性を帯びているわけでもなく、事件そのものはよくあるタイプのものだ。この事件の何が作者の心を捉えたのか? いま、このタイミングでグラフトンは何を訴えたかったのか? いたって地味な事件だし、物語としてそれほどの動きもなく、捜査活動もまた然り。娯楽の部分を犠牲にしてまで、この作品を手がける意味があったのだろうか。読み終えた後には、そういう疑問しか浮かんでこない。残念ながら作者の主張が私には伝わってこなかった。

 また、事件の捜査という縦軸とは別に、シリーズ通しての横軸ともいえる家族のテーマがある。それはつまりキンジーと親族との確執でもある。本作ではさらに、大病を抱える二人の老刑事という、魅力的な横軸も加えられている。
しかしこれまた残念ながら、作者はそれらをあまり掘り下げようとはしない。いつのまにかストーリーに埋没し、完全に消化不良である。ステーシーとドーランのコンビが悪くないだけに、よけいもったいない。いったいこの中途半端さはなんなのだ。

 とにかく疲れた。お気に入りの作家だけにZまでは読もうと決めているが、これが続くといささかしんどい。シリーズものは長すぎると、どうしてもグレードが落ちてくるのは否めないが、それにしてもなぁ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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