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 仕事は詰まっているが、早めに帰宅。ちょっとへばり気味である。どこかで一度体を休めないと、このままじゃやばいな。

 本日の読了本は世界探偵小説全集から、ダーウィン・L・ティーレットの『おしゃべり雀の殺人』。
 第二次大戦直前、ナチス政権下のドイツを舞台としており、本格探偵小説を旨としたこのシリーズでは異色の作品といっていいだろう。
 主人公の名はウイリアム・タッツォン。アメリカからドイツの磁器タンク製造会社へ働きに来ている技術者だ。その彼がある日ハイデルベルクの街を歩いていると、一人の老人が近寄ってきた。「雀が『捕まっている。助けてくれ!』というんだよ。」あまりに突拍子もないその言葉にウィリアムが戸惑っているその直後、老人は何者かに銃で撃たれ死亡する……。

 うーむ、微妙な作品ですな。本格探偵小説として面白いかどうかという前に、これってやっぱり本格探偵小説というには、ちょっと無理があるんじゃないかなという気がする。だから本格のつもりで読んだ読者には、物足りなさは残るはず。最初のおしゃべりする雀のネタも容易に想像できる範囲だし、犯人も登場人物が絞られてくるとある程度見当がついてしまうだろう。

 だが、本作を本格として捉えなかった場合、また話は違う。実際、本書のストーリーの展開やタッチは、本格というよりハードボイルドやスパイ小説のそれに近い。さらに、この時代にして(原作が書かれたのは1934年)既にナチス政権下の恐怖を訴えているという事実は賞賛に値する。描写も生々しく、作者の怒りは本物であると思うし、確かに当時の読者にもその思いは伝わったはずだ。しかし、そうすると今度は冒頭の雀云々という部分が、何だかお伽話めいてくるのも事実。

 そのどっちつかずのバランスの悪さが、本書の最大の欠点である。
 探偵小説という衣を借りず、素直にドイツの実体を描いた方がよかったのではないか。あるいは徹頭徹尾ハメットの手法でこれを書いたらどうなっただろうか。そんな思いにとらわれる。
 傑作になり損ねた作品、だが、記憶には残る作品と言えるだろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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