グレッグ・アイルズの『神の狩人』読了。
上巻を読む進めるうちに気になったのは、本作がインターネット上でのテクニックを駆使した犯人との駆け引きに大きな比重を置いているのか、それとも哲学的なロジックを操る犯人の異常さに比重を置いているのか、読みどころはどちらなのだろうということだった。上巻ではどっちつかずの感があったのだ。
結論からいうと本書は後者のパターン。
犯人がインターネット上を徘徊し、主人公とのネット上での対決などもあるから前者といえないこともないが、やはり主眼はその特殊な犯人像を描くことに置かれている。したがって先日読んだディーヴァーの『青い虚空』に比べるとストーリー展開やスリルという点では一歩譲るが、その重苦しい雰囲気、迫力はこちらの方が上だろう。
また、ストーリー展開も『青い虚空』に比べるから分が悪いのであって、これだけで見れば十分に楽しめるし、特に終盤の100ページは圧倒的な迫力で一気に読ませる。さらに主人公夫婦やその親族を巻き込む横糸も巧みに絡めてあるのはさすが。凄惨な話ではあるがカタルシスもしっかり得ることができるし、一級の娯楽作品ということができるだろう。
時が経てばそのインターネットに絡む描写などが古くさくなる恐れもないではない。しかしその芯がしっかりしているだけに、サイコスリラーを語る際には今後欠かすことのできない作品と言えるかも。おすすめ。
昼間は相方の買い物のお供で愛犬二匹も連れて吉祥寺に。帰りには井の頭公園をぶらぶら散歩するが、この暑さにもかかわらずけっこうな人出である。
刊行当時はそこそこ話題になったグレッグ・アイルズの『神の狩人』。サイコものであると同時に、インターネットを取り入れたのが特徴だったと覚えている。実は長らく積ん読だったのだが、少し前に読んだディーヴァーの『青い虚空』がハッカーネタだったので、何となく比べてみたくなって読み始める。
まだ、上巻なので詳しい感想は後日となるが、ちょっと意外だったのは巻き込まれ型のサスペンス色が強いこと。しかも一人称の「ぼく」が主人公であること。何となく先入観でプロフェッショナル同士の戦い、みたいなものを思っていたので、物語に入るのに少し戸惑ってしまった。
ただ、前半を読み終えてみた感じでは、可もなく不可もなくといったところ。悪くはないのだが、ディーヴァーを読んだ後ではやや分が悪いかも。さあ、下巻はどうなる?