リチャード・マシスンの『リアル・スティール』を読む。角川文庫版。
短篇「リアル・スティール」の映画化に合わせ、早川書房と角川書店の競合と相なったわけだが、先月に読んだハヤカワ文庫版は日本オリジナル編纂の短編集。対する角川文庫版は本国で2011年に出た短編集『Steel and Other Stories』をそのまま翻訳したもののようだ。
まあ、こっちも映画化便乗企画らしいのだが、幸いにもハヤカワ文庫版とのかぶりは「リアル・スティール」のみ。その他の作品も初訳だったり、既訳のあるものにしても今では入手しにくいものが多く、こちらもハヤカワ文庫版同様お買い得の一冊といえるだろう。
Steel「リアル・スティール」
To Fit the Crime「因果応報」
The Wedding「結婚式」
The Conqueror「征服者」
Dear Diary「日記さんへ」
Descent「下降」
The Doll That Does Everything「なんでもする人形」
The Traveller「旅人」
When Day Is Dun「時代が終わるとき」
The Splendid Source「ジョークの期限」
Lemmings「レミング」
The Edge「境界」
A Visit to Santa Claus「サンタクロースをたずねて」
Dr. Morton’s Folly「ドクター・モートンの愚行」
The Window of Time「時の窓」

マシスンの作品でも比較的わかりやすいものをセレクトしてある印象。怖い部分とコミカルな部分、ときにはシュールな味つけもされて、全体的にはマシスンの魅力が実に伝わりやすい変な話が満載である。
マイ・フェイバリットは「結婚式」「征服者」あたり。普通の人間には理解できない何らかのルールに則って生きる者はなぜこんなにも怖いのか。一見、コミカルな話だがイヤーな怖さがある。
「下降」は直球勝負の力作。オチとかはないけれど、こういう世界滅亡テーマでコンパクトにまとめる技術が素晴らしい。
「レミング」はショートショート並の短さで、オチは予想できるけれど、それでもやっぱり上手い。
まあ、たまにドリフのコントかよってなものもあるけれど(笑)、マシスンの短編集は基本的にハズレなし。アベレージの高さを信頼して読むべし。