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 ぼちぼちと読み進めていた芥川龍之介『芥川龍之介 妖怪文学館』をようやく読了。学研M文庫より刊行中の伝奇ノ函シリーズのひとつで、芥川龍之介による怪奇・伝奇小説や評論等をまとめた一冊だ。伝奇の匣シリーズのラインアップはただでさえ個性的だが、そこにあえて芥川龍之介を加えるところに編者の強烈なこだわりを感じる。
 もちろんただそれっぽい小説を集めただけではない。評論や対談まで網羅し、そういう意味で今回の芥川龍之介『妖怪文学館』は資料的にも価値は高いらしいのだが、残念ながらその辺は門外漢なので猫に小判状態。

 それにしても久々の芥川龍之介である。私的には実に中学以来。当時、文庫本で数冊読んだ程度で、今回の『芥川龍之介 妖怪文学館』に入っているものでは、「河童」や「邪宗門」を読んだぐらいだ。評論や対談などはすべて初読となる。ただ、あらためて読んでみると、さすがに今ではおおっと驚くほどの怪奇小説は残っていないようだ。気にいったものはどうしても「妖婆」「河童」「邪宗門」といった定番がメインになった。長めのものがやはり味わい深く、読み応えがある。
 「妖婆」は怪奇小説本来の武器と魅力をストレートに全面に出した作品。迫力あります。
 「河童」はSF的なパラレルワールドの設定によって、楽しめる現代文明批判、人間批判の書になっている。
 そして「邪宗門」はこれからというところで未完に終わった作品だが、宗教というテーマの重さを考えるとつくづく完成させてもらいたかった作品である。ほんと、これからってところなんだよね。

 ところで怪奇・伝奇小説を芥川が好んでいたことぐらいは知っていたが、ここまで柳田国男の『遠野物語』に影響を受け、海外の作家も追いかけていたとは驚きであった。しかも彼の求めるものが「恐怖」そのものにあるということを読むと、ホラーの内包する力というものを感じずにはいられない。知識や教養、哲学などを飛び越え、いかに人間の根っこの部分に影響力を持つかというこの不思議。日本ではしばらく怪奇小説がさっぱりな時期が続いていたわけだが、近年はまさにホラー全盛。多少の波はあっても、人が営みを続ける限り決して消えることがないであろうジャンル。それが怪奇小説なのだと再認識する。この普遍性は探偵小説やSF小説にはないものではないか?
 ちなみに芥川龍之介は海外のメジャー作品に対してもなかなか厳しい。「怖くないから駄目」と一刀両断するのを読むにつけ、なんだか現代のオタク的感性にも通じるものがあって、それはそれで少し微笑ましかったりする。

テーマ:読書感想 - ジャンル:本・雑誌



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