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 『魔王の足跡』読了。不可能犯罪を得意とするミステリ作家として、名のみ知られていたノーマン・ベロウ、その日本初紹介の一冊である。まずはストーリーから。

 雪の朝、田舎町ウィンチャムにある足跡が出現した。新雪に覆われた道に忽然と現れたその足跡は、人々を不安に陥れた。割れた蹄の形をしていること、そのくせ人間のように二本足で歩いているらしいこと、そして人間では不可能な場所にまで足跡が残されていることから、人々はそれが悪魔の足跡ではないかと考えたのだ。人々はどこまでも続くかと思われるその足跡を追った。そして野原の真ん中に立つオークの木に辿りついたとき、人々はそこで枝からぶらさがった男の死体を発見する。しかも足跡は、まるで空中に飛び立ったかのように、その木の傍らで途切れていた……。

 うーむ。ちょっと期待が大きすぎたかな(笑)。面白いことは面白い。オカルト趣味で不可能犯罪をデコレートするのは、カーを例えに出すまでもなく、ある意味ミステリの常套手段である。その不可能性が大きいほど、最後に作者がどんな鮮やかな種明かしを見せてくれるかが楽しみになるわけで、その意味ではなかなかに成功している。かなりシンプルな話で、あまり余計な要素を突っ込まず、ほぼトリック一本で勝負しているところなどは好感が持てるし、謎解きも大変論理的でフェアである。
 ただ、いま読むとさすがにメイントリックは古いかもしれない。足跡トリックはだいたいのバリエーションが知られてしまっているし、ちょっとしたマニア相手にはある程度の予測がついてしまうのは避けられない。また、犯人の方もある伏線のため、すぐに感づかれる嫌いはある。やはり紹介されるのが少々遅かった不運な一冊ということなのだろうか。
 なお、本筋とは関係ないが、ラストシーンでのミス・フォーブズのセリフはかなり不快である。おそらくタイトルと絡めて余韻を残したかったのだろうが、昨今の無軌道な殺人に比べれば、本書の犯人の動機ははるかに理解できるものである。動機についての扱いが作中でかなり軽いだけに、最後の最後で急に道徳的になられてもなぁ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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