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 本日の読了本はマイケル・ナーヴァ『秘められた掟』。知ってる人は知っているゲイの弁護士ヘンリー・リオスを主人公としたシリーズ。ネオ・ハードボイルドの良き継承者って感じで、コンスタントにレベルの高い作品を出している作者の一冊。

 ネオ・ハードボイルドがそれまでのハードボイルドと大きく異なるのは、主人公たちがスーパーマンなどではなく、彼らもまたさまざまな悩みを持つ等身大のヒーローであった点だ。リオスもその例にもれず、彼はスペイン系というマイノリティ、ゲイというマイノリティを同時に抱えており、しかも亡き父の幻影にも悩まされる男として描かれる。自分を押し通すのか、世間と折り合いをつけるのか、それとも押し殺すのか。主人公の生き様が読者を惹きつけるのだ。はっきり言ってしまうと本シリーズの興味はそこに尽き、事件は付け足しといっても過言ではない。また、作者は同時にゲイもまた一般の人間であることを理解してもらいたい、とシリーズを通してアピールすることも忘れない(これは同じくゲイ探偵を作り出したジョゼフ・ハンセンと共通する基盤である。ちなみにこちらのデイブ・ブランドステッター・シリーズもおすすめ)。
 だからといって本書が、ミステリとしてはつまらないとか、ミステリの形を借りたゲイ問題の啓蒙書なのか、といった評価は当たらない。ナーヴァはミステリ作家としても高い水準にいる作家なのだ。
 ただ強いてケチをつけるとすれば(本書でもそうだが)ネオ・ハードボイルドの作家たちは登場人物の心理を説明しすぎである。わかりやすいっちゃわかりやすいが、もう少し抑えた筆致の方が好ましいと感じるのは私だけか?

 さて、今回は市長選出馬も夢ではなかった上院議員の殺害事件をリオスが追う。表面的にはよき家庭人であり人気の高かった議員だが、調査が進むにつれ、公私にわたって抱えるさまざまな問題が浮き彫りにされていく……。

 本書では議員の殺人事件とリオスのプライベートの部分が、ときに交わる形で同時進行し、事件がリオスの内面にうまくオーバーラップされる。深まる謎が解けるとき、読者はリオスの心の奥底をもかいま見ることができるのだ。そしてラストのなんとも切ない余韻。ああ、これはよい! ハードボイルドが苦手な人もこういうのなら意外と楽しんでくれそうだ。
 なお、解説によるとこのシリーズもあと数作で打ち止めとか。作者がミステリから足を洗うらしいのだが、今更ミステリとか純文学とかこだわる必要もないと思うのだが。困ったちゃんである。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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