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 仕事が大変忙しい。この不況の世の中、これだけ多くの仕事をクライアントから頂けるのは大変ありがたいことだが、それでも会社が大儲けできないという構造は、やはりどこか間違っている。まあ、その原因も分かっているのだが、だからといって大きく打って出るのもリスキーだし。下請けは辛いのう。

 さて、そんな暗い気分を吹き飛ばせるか? 本日の読了本はフレデリック・フォーサイス『マンハッタンの怪人』(角川書店)。もうすぐ文庫になるそうだが、その直前にブックマーケットで百円で拾った本。ラッキー。
 翻訳ミステリのファンなら、今さらこの本の内容を説明してもらうまでもないだろうが、これはあの『オペラ座の怪人』の続編。一般の人にはミュージカルとして、ミステリファンにはガストン・ルルー原作として知られている作品だが、その続編をあのフォーサイスが書いたというのだから驚くではないか。当時、新刊を初めて書店で見たとき、悪い冗談かと思ったほどだ。どう考えてもフォーサイスとガストン・ルルーのイメージが結びつかないんだよなぁ。
 実を言うと『オペラ座の怪人』の方はそれほど面白いとは思わなかった。こちらの教養がないせいもあるだろうが、退屈な描写が多く、正直言ってガストン・ルルーの原作でなかったら、読むことはなかったかも。実際、原書も発表当時はさっぱりだったそうで、『オペラ座の怪人』がここまで有名になったのは、やはり映画や舞台がエンターテインメントとして巧みにアレンジしたおかげだろう。
 じゃあ、なぜにおまえは『マンハッタンの怪人』を読むんだってことになるのだが、もちろんそれはフォーサイス原作だから。フォーサイスのものは単純に全部読みたいからなんだが、まあ、フォーサイスがどういう風にあの素材を料理してくれるのか、これは興味がわくところ。ただし、正直言って、読む前から八割方は失敗作だろうと決めつけていた。だいたい古典の続編なんて書いても、成功例などあまり聞かないし。

 で、読んでみましたが……もう悲しいくらい予想どおり。
 だいたい「怪人」がニューヨークに移り住んで大富豪になっているという前提がひどい。そんなことしたら前作の主人公の苦悩や物語の結末なんて、意味がなくなってしまう。それをしたいなら、せめて大富豪になるまでの話を十分に書き込んで、説得力を持たせるべき。『オペラ座の怪人』から続けて読んだ人なんて、この設定だけでもかなり面食らうだろうね。
 また、本書は手記による構成をとっているが、その必要性をまったく感じない。悪いことに、そのために物語の躍動感がなくなって、当時のニューヨークの雰囲気とかもいまいちぴんと来ない。キャラクターについては面白そうな人物を作ってはいるものの、これも書き込み不足で味気ないことこのうえない。
 言ってみれば小説の前半分は前説みたいな有様で、全体についても梗概を読まされている印象なのだ。「え、そんだけ? もう終わり?」って感じ。一応ストーリー的にはものすごい秘密が隠されているのだが、このネタがまたミュージカルのファンにはぜーったい噴飯もの。フォーサイス<絶対刺されるぞ。
 見事なまでにファンの期待を裏切った、まさに『ハイディングプレイス』と甲乙つけがたい一冊。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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