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 一癖も二癖もある登場人物たちが、フロリダを舞台にドタバタ犯罪劇を繰り広げる。
 これが雑誌やネットでの書評などから私が想像している、今のカール・ハイアセンの作風だ。エルモア・レナードをさらに軽くしてひねった感じかな? 彼の作品は中毒性が高いらしく、また、日本でも一定のファンと評価が定着しているようで、とにかく非常に気になる存在である。
 で、毎回新刊が出るたびに買い続け、翻訳されたものはすべて持っているのだが、いかんせん過去に読んだのは『さらばキーウエスト』のみ。いいかげん積読を減らそうと手にとったのが、モンタルバーノ&ハイアセン『皇帝の墓場を暴け』。

 念のために書いておくと『さらばキーウエスト』や『皇帝の墓場を暴け』は、ハイアセンが日本でブレイクする前の初期の作品である。最初の三冊まではウィリアム・D・モンタルバーノとの合作で執筆しており、作風も最近のものとはけっこう違うはず。『さらばキーウエスト』もそうだったが、どちらかというと正攻法のサスペンスもしくは冒険小説で、両名ともジャーナリスト上がりらしく、取材経験を活かした素材でチャレンジしているのが特徴といえるだろう。
 だがハッキリ言って『さらばキーウエスト』はしょっぱかった記憶しかない。器用な記者が、取材した知識を活かしてちょっと小説を書いてみましたレベルか。キャラクターも類型的で魅力に乏しく、ストーリーもありふれたものだったように覚えている。ハイアセンを積読していた大きな理由は、おそらくこの一冊目との出会いのせいだろう。

 そして『皇帝の墓場を暴け』。
 主人公は東洋美術史を教える大学教授。中国へ観光ツアーにきた彼は、偶然大学での恩師に出会う。恩師は中国系のアメリカ人で、数十年前に別れたきりの弟に会うため、故郷を訪ねてきていたのだ。ところがその恩師が急病で死亡してしまったことから、話は急展開。中国高官やCIA、謎の中国娘らが絡んできて、主人公は大きな陰謀の渦に巻き込まれていく。
 ん~。とりあえず成長の跡はうかがえる彼らの第三作目ではなかろうか。主人公は東洋美術の大学教授でありながら、ベトナム戦争での英雄。しかも実は過去の戦争体験で心に深い傷を負っているという設定。陰謀に巻き込まれて数々のピンチに陥るも、昔取った杵柄で克服していくというのは悪くない。ストーリーも中国を舞台にした中盤までは動きが多く、中国関係の蘊蓄を散りばめながら、ぐいぐいと引っ張っていく。
 しかし、惜しいことにそれもラストで尻すぼみ。舞台がアメリカに移ったとたんに失速し、主人公どころか悪役までも精細を欠いていくのだ。よく言われることだが、冒険小説では魅力的な悪役の存在というのが欠かせないのに、ちょっとこのキャラクターでは弱いなあ。平均点はあげてもよいが、解説の「ラドラムの傑作に勝るとも劣らない」てのは、いくら何でも言いすぎだろう。
 とにかくモンタルバーノとの共著はもう一冊、処女作があるので、とりあえずそれも早く読んでしまいたいもの。あまり期待できないけど。そしてモンタルバーノと別れた後の作品で、ハイアセンのさらなる成長ぶりを見届けるとしましょう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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