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 セオドア・ロスコーの『死の相続』を読む。昨年秋の刊行以後、ネット上ではまずまず評判がよろしいようで、本格らしからぬ過激な設定&ストーリーと、落とし前の付け方がなかなか見事なのだとか。
 こんな話である。

 主人公は売れない画家のカートとその恋人のピート。生活費にも困る二人の元へ現れたのは、ハイチに住むピートの伯父の顧問弁護士だった。弁護士は、ピートの伯父が莫大な財産を残して殺害されたため、葬儀と遺言状の公開のために出席してほしいという。ピートはカートを伴ってハイチへ渡るが、その遺言は驚くべきものだった。
 一人の人物に全財産を譲る。ただし二十四時間以内にこの屋敷を離れたり死亡した場合は、次の権利者に相続権が譲られ、その者にも同じ条件が課せられる。こうして屋敷に集まった8名に順番に相続権が定められ、ピートは最後の相続権候補者になっていたのである。
 そしてその遺言公開からほどなく、候補者は権利の順番にそって、次々と殺されていく……。

 ううむ、確かに噂に違わぬ破天荒な展開。次々と登場人物が殺されていく様は、名作『そして誰もいなくなった』をも彷彿とさせるが、舞台はハイチ、背景を彩るのは精霊信仰で有名なあのブードゥー教である。そのサスペンスやホラー度は本家をもしのぐ。
 独特の「慌ただしさ」も悪くない。スピード感というほどのスマートさはないのだが、とにかくエピソードを次から次へとたたみ込んでゆく。勢いで読ませる本格ミステリというのは割と珍しいと思うが、本作はその数少ない例外のひとつである。初出がペイパーバック連載ということもあり、毎回ヤマ場を入れなければならないという事情があったということだが、我が国でも同時代(昭和初期)の連載ものは似たような状況であり、むしろ完成度でいえば本作の方が上であろう。
 また、慌ただしいとはいいつつも、全体のバランスを壊すような無茶なものではない。ブードゥー教やゾンビといった小道具による雰囲気作りが上手いことや、24時間という時間設定を設けることで、逆に「慌ただしさ」が活かされているように思う。
 なお、本書はもちろん本格である。ラストの謎解きでは、すべての犯罪、超常現象に至るまでが説明されており、胸のつかえは下りるようになっているのでご安心を。やや力で持っていった感は強いが、これは読んでおいて損はない作品だ。できれば著者が書いたもう一冊のミステリとやらも、ぜひ読んでみたい。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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