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 月曜は始発で朝帰り。もちろん仕事です。その車中で眠い目をこすりつつ読み進めたのが、モーリス・ルヴェルの短編集『夜鳥』。

 モーリス・ルヴェルは二十世紀初頭に活躍した幻想小説や怪奇小説の名手である。その実力はフランスのポーと称されるほどで、日本ではその作品が『新青年』に多く掲載され、当時の多くの作家たちにも影響を与えた。
 普通ルヴェルを簡単に紹介すると、まあだいたいこんな感じではないか。まあ、我ながら創意工夫もない手垢のつきまくったフレーズではある。ただ、述べられている内容は決して間違ってはいないはずだ。特に「多くの作家たちにも影響を与えた」という部分。
 実はルヴェルの名前は知っていたが、こうしたまとまった形で読むのは初めてである。にもかかわらず、かなりの確率で話の内容を知っていることに驚いた。つまりルヴェルの小説とは知らずに、どこかで読んだり聞いたりしたということである。「多くの作家たちにも影響を与えた」というのは、つまりそういうことだ。怪奇小説のスタンダードのいくつかをルヴェルは生み出し、日本に(やや語弊のある言い方だが)多くの模倣者をも生み出したほど魅力的だったのである。

 そのルヴェルの魅力を語るとすれば、個人的には何といっても簡潔な文章と構成を挙げたい。文章に関しては訳者の田中早苗の功績も大だが、とにかく余計なものを感じさせない、凛としたところに惹かれる。語るべき事実をはっきりと語り、そのくせ含みを持たせ、余韻を残すべき時にはきっちりと残してみせる。今ではストレートに感じられる諸作品だが、ひとつひとつの場面は印象的であり、特にラストの数行で締めて見せる作品のなんと鮮烈なことか。
 また、残酷さといったキーワードが何かとピックアップされるルヴェルだが、その中に時折見せるヒューマニズムにも、思わずハッとさせられる。

 解説によるとルヴェルには過去に長篇の翻訳もあったらしい。願わくばそれも含めて、未発掘の諸作品をぜひとも読んでみたい。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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