本日はカウチポテト(死語)。『X-MEN:ファイナルデシジョン』と『僕の大事なコレクション』を立て続けに観る。『X-MEN:ファイナルデシジョン』は今までの中で最悪。ウルヴァリンを初めとして人間ドラマがほぼ皆無という状況で、アクションと映像だけ楽しめばよい映画とはいえ、これはないだろう。意味のないキャラクターを出したり、そうかと思えば重要なキャラクターのはずなのに説明不足のところが多すぎたり。話にならん。
『僕の大事なコレクション』はそれに比べると遙かにまとも。『ロード・オブ・ザ・リング』でブレイクしたイライジャ・ウッドの主演作品だが、単なる自分探しのロード・ムービーかと思っていると、後半予想以上の重い内容に愕然とする。役者、ストーリー、音楽など、見所は多いし、考えさせられるところも多い。これは観ておきたい映画の一つ。
読了本はちくま文庫の『怪奇探偵小説名作選9 氷川瓏集 睡蓮夫人』。ちくま文庫から刊行された「怪奇探偵小説傑作選」および「怪奇探偵小説名作選」のなかで、おそらくは最も注目された一冊ではないだろうか。まずは収録作から。
「乳母車」
「春妖記」
「白い蝶」
「白い外套の女」
「悪魔の顫音」
「天使の犯罪」
「風原博士の奇怪な実験」
「浴室」
「窓」
「睡蓮夫人」
「天平商人と二匹の鬼」
「洞窟」
「陽炎の家」
「華胥の島」
「路地の奥」
「風蝕」
氷川瓏といえば、江戸川乱歩に見出され、評論家渡辺剣次の兄としても知られる幻想作家。残念ながら創作数はそれほど多くなかったようで、そのせいか過去に氷川瓏の作品集が編まれたことは一度もない。「怪奇探偵小説名作選」の一冊としてちくま文庫から刊行された本書が、なんと氷川瓏初の作品集となるのだ。
ただ、それにしても今まで本にまとめられなかったのは、やはり短編集を構成できるだけの作品が揃わないからという心配も出てくるわけだが、そんな杞憂はまったくの無用であった。
氷川瓏の一番の持ち味はイメージの豊かさではないだろうか。ときには視覚的に、ときには聴覚的に、作品世界や人の情感を描き出す手並みが鮮やかだ。もちろんイメージが鮮烈であればあるほど望ましい。読者に訴える力はいやでも増し、頭の中は著者の醸し出すイメージでいっぱいになるのだ。
少々当たり前すぎて気が引けるが、そういう意味ではやはり「乳母車」や「睡蓮夫人」は本書中でも一、二を争う出来であろう。
また、子供の視点で描かれる小説は珍しくないが、「窓」のようなタイプはやはりご時世柄、胸にこたえるものがある。
ほかには比較的長めの「白衣の天使」もよい。こういう息詰まるようなタイプの犯罪心理小説はあまり得意じゃないのだが、サナトリウムという一種独特の施設で雰囲気を見事に盛り上げ、先を読まずにはいられなくなる佳作である。