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 ジョン・ダニングの『失われし書庫』を読む。
 元刑事の古書店主という主人公を起用し、ハードボイルド風のタッチと古書に関する蘊蓄などで味つけしたダニングの人気シリーズ、クリフ・ジェーンウェイものの第三作目にあたる作品である。
 ミステリ好き、本好きのど真ん中を狙いすぎている観はあるが、なんせ作者自身が元古書店主。ここはあざといなどと邪推せず、本好きの業と解釈しておきましょう。

 さて、肝心の『失われし書庫』だが、こんな話。
 冒険家リチャード・バートンの稀覯本を入手したクリフは、一躍時の人となった。にわか有名人に接近してくる者が後を絶たない中、その本は私の書庫から盗まれた物だと主張する老婦人がいた。彼女の祖父はバートンと交流があり、バートンの献本で埋め尽くされた蔵書があったのだが、祖父の死と同時に騙し取られたのだという。クリフは彼女の依頼で、その他の本を探すことになったが……。

 古書蘊蓄だけでは飽きられると考えたのか、本書ではリチャード・バートンという題材をもってきて、歴史ミステリ風に仕上げているのが大きな特徴。リチャード・バートンは十九世紀の探検家だが、世界中を旅して回った記録を数々の著書として残しており、また、非西欧圏の書物を翻訳して紹介するといった業績でも有名である(『バートン版千夜一夜物語』というのも、このバートンが英語に訳したものをいうわけですね)。
 当然だが、バートンに対する知識があればあるほど楽しめる。しかし心配は無用。作中作ともいえるバートンの友人の手記などを盛り込み、あまり知識がなくとも楽しめるような工夫は十分盛り込まれている。
 気になったのは、むしろ淡泊すぎる事件の方である。扱うテーマは魅力的なのに、それを彩る事件がどうにも浅い。物語の背景とキャラクターを語ることにページを費やしすぎであり、この程度の事件であれば、もっとイキのいい展開で見せてくれないと困る。著者の興味がミステリの本質に向けられていない、といえば言い過ぎか。

 結局、トータルでは楽しめるものの、ミステリを堪能した気分にはなれない。手記の部分などは面白く読めたので、ダニングはミステリから離れた方が、いいものを書けるかもしれない。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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