ADMIN TITLE LIST
Selected category
All entries of this category were displayed below.

 内外の大物が次々と亡くなっているが、ミステリ関係でもまたいくつかニュースが飛び込んできた。ひとつはマイケル・ジャクソンと同日だった前にすっかりかき消された感もあるが、ファラ・フォーセットの訃報である。言わずとしれたTV版『チャーリーズ・エンジェル』の看板女優だが、そのため初期の出演作品には『シャレード'79』とか『スペース・サタン』とか、ミステリや冒険、SF系の映画も多い。
 もうひとつは中町信氏の訃報である。一般に広く知られる作家ではなかったが、ここ数年、創元推理文庫版での復刻で、ミステリファンから再評価される機会ができたのは、著者にも読者にも非常に喜ばしいことであった。実は管理人はそれほど読んでいるわけではなかったが、そのうちまとめて挑戦してみたい。合掌。


 サーズビイ君奮闘す

 読了本はヘンリー・セシルの『サーズビイ君奮闘す』。
 本編に入る前に、どうでもいいことをひとつ(いや、ホントはよくないんだけど)。この人、版元によって著者表記がバラバラなのはどうにかならないのだろうか。この論創社版では「ヘンリー・セシル」、創元では「ヘンリ・セシル」、早川では「ヘンリイ・セシル」である。
 創元、早川のは古い訳でもあるし、英語表記はHenryだから、まあ普通に論創社の「ヘンリー」でいいんじゃないのとは思うのだが、ただ、いまさら「ヘンリー」と言われても、創元、早川ので刷り込まれているしなぁ。こういうのって出版社同士で話し合って統一するとかできないものかね。

 それはさておき『サーズビイ君奮闘す』。
 弁護士なりたてのロジャー・サーズビイ君。弁護士事務所に就職できたのはいいが、右も左もわからないうちに法廷に立たされ、案の定とんちんかんな受け答え。おまけにプライベートでは二人の恋人候補に挟まれて右往左往。こんなサーズビイ君だが周りの人に助けられ、経験を積んで、ついに……というお話。

 『判事とペテン師』もそうだったが、これも長篇とはいいながらエピソードをつなぎあわせたような構成で、大きくは三つの事件を扱っている。だが、その合間にも登場人物がいくつものエピソードを語るので、あまり長篇を読んだという印象はない。ただ『判事とペテン師』はそのつなぎが悪かったのに対し、本作はより短編的な性格が強いので、逆につなぎの悪さは気にならない。
 肝心の中身は意外と他愛ない(笑)。ロジャー・サーズビイ君の成長物語をベースに、英国の法廷の内幕や法律の矛盾を、登場人物のやりとりで増幅しつつ、面白おかしく紹介するという形。つまりミステリ色はかなり薄いわけで、いわゆる法廷ものを期待すると肩すかしは必至。成長物語としても演出程度の意味しかないので、ま、エピソードのひとつひとつが楽しければいいや、という程度の一冊か。それなりに楽しくは読めたが、オススメするほどではない。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


判事とペテン師

 ヘンリー・セシルの『判事とペテン師』を読む。こんな話。

 とある法廷で裁かれようとしているのは、競馬の賭け屋の事務所に勤めた若き娘ルーシー。彼女は不正入手した情報により馬券を買っていたと訴えられていた。ところが彼女の情報源とは、実は牧師の父親ウェルズビイであった。血統を重視する長年の研究の成果により、牧師の予想は絶対だというのだ。判事チャールズはその真偽を確かめるべく、牧師に今週のレースの予想をたてさせたところ、正に百発百中。娘は無事に釈放される。それからしばらくのこと、判事のもとへ金に困った息子マーティンが現れ、事態は思わぬ方向へ……。

 『法廷外裁判』や『メルトン先生の犯罪学演習』で有名なヘンリ・セシルだが、その作風は法廷もの+ユーモアという独特のものだ。本書でもそのスタイルはきっちりと守られている。とりわけユーモアという部分に関しては、いちいちくすぐりを入れてなかなか面白い。判事が金に困って牧師を訪ねる場面、判事が競馬で熱くなる場面、マーティンの詐欺講座、法廷でのやりとり等、読みどころは確かに多い。
 というか、むしろ本書はそんな読みどころだけを重ねて作られた構成なのだろう。ただ残念なことに、それがそのまま本書の欠点にもなっている。ストーリー上で重要な話があっても、それは読みどころではないとばかり、作者はエイヤとばかりに説明を大幅にカットする。したがって通しで読むとエピソードのつながりやバランスが悪く、下手をすると梗概を読んでいる気分になることもしばしば。また(敢えてやっている節も見られるが)ハッキリした主人公というものを設定しておらず、これもバランスの悪さを助長している。判事親子により重きをおいて書けば、もっと評価されるべき作品になったはずだ。惜しいなぁ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説