あまりにもメジャーすぎて、ついつい何十年も読まずにきてしまった本というのがあるものだが、管理人にはサン=テグジュペリの『星の王子さま』がその一冊。
ストーリーから登場人物、エピソードに至るまで、本やテレビなどで知識だけはそれなりにあったのだが、お恥ずかしいことに読むのはこれが初めて。果たしていい年をしたおっさんが今さらこの名作中の名作を読んで感動を得られるのか、あるいは他に得るものがあるのか?

いやあ、素晴らしい。そして驚いた。冗談抜きで、これは本当に読んでおかなければならない一冊である。
砂漠に不時着した飛行士が、とある星からやってきた王子さまから聞く数々の体験談。とにかく表面的にはファンタジーであるし、寓話的であることぐらいは十分想定していたが、これはもう普通に哲学ではないか。そのひとつひとつのエピソードはサラッとした味わいながら、非常に普遍的で深遠なテーマーー愛や命といったーーを含んでおり、それこそいくらでも深読みが可能である。また、戦争の真っ只中を生きた作者ゆえに、ただ愛とか命とかだけではなく、戦争や政治といった要素を抜きに語ることもできないだろう。
それゆえに、ファンタジー小説あるいは児童小説といった体裁の『星の王子さま』ではあるが、本書を読まなければならないのはまず大人なのである。説教臭は若干あるのだが、ここまで示唆に富むメッセージを一冊に詰め込み、人間とその営みについて考えさせてくれる本など、そうそうあるものではない。
食わず嫌いの人、今まで縁がなかった人も、ぜひお試しを。