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 別に一周年記念というわけではないが、金曜に休みをとって、伊豆の温泉へ骨休めに出かける。本は持っていったが、例によって美味しい酒と料理であっというまに酔いが回り、読書はまったくできず。ま、お約束ということで。
 でも来週から仕事がまた忙しくなりそうなので、ほんとはもっと読んでおきたかったのだがなぁ。今月に入って読書ペースもガタ落ちである。

 土日で何とか片付けたのは、クレイトン・ロースンの『虚空から現れた死』。お馴染みグレート・マーリニではなく、もう一人の奇術師探偵、ドン・ディアボロを主人公に据えた中編集である。収録作は「過去からよみがえった死」と「見えない死」の二編。

 虚空から現れた死

 「過去からよみがえった死」は、ディアボロの楽屋を訪ねてきた謎の女性が、密室で殺害されるという事件。現場を飛んでいた一匹のコウモリに襲われたとしか思えない状況だったが、現場にはディアボロの弟子チャンを告発するダイイング・メッセージが。降霊術やコウモリ男など、オカルト趣味満載の一編。
 「見えない死」はなんと警察署内での警官密室殺人事件が発端。事件はそこから透明人間対デォアボロの様相を呈するが、ルパンを彷彿とさせる敵の怪盗ぶりが見もの。

 正直、読み終えて驚くとともに感動した(笑)。
 この(笑)で察してほしいのだが、まさかクレイトン・ロースンがこういう作品を書いていたのかという驚きである。クレイトン・ロースンといえば、奇術師を探偵役に起用し、カーばりの不可能犯罪をテーマにした作品を残した作家だ。ケレン味は強いのだが、基本はオーソドックスな本格。あくまで古き良き時代のテイストの範囲内の話である。少なくともグレート・マーリニ・シリーズの作品はそうだった。
 それがどうだ。
 このドン・ディアボロものは、本格風味をしっかりと盛り込みつつも、いわゆる謎解き小説の体裁は捨てて、恐ろしいほどのチープな娯楽読み物に徹している。これは初出時がパルプ雑誌だったことが大きな理由と言うことだが、それにしてもロースン、張り切りすぎだろう。
 なんせ相手が小林少年も真っ青のコウモリ男や透明人間なのだ。対する主人公も負けてはいない。自宅内に秘密部屋はあるわ、怪しげなインド人に変装するわ、いかさまポーカーの名手や双子のアシスタントらとのチームプレイまであって、奇術師というだけでも相当、探偵としては反則気味だと思うのだが、ここまでいくとやりすぎ感はかなりのものだ。
 最大の欠点は、ネタを詰め込みすぎた結果、流れそのものが悪くなっていること。派手な割にはメリハリが乏しく、読みにくさが目立つのは実に残念。ただ、プロットは破綻することなくまとめられており、無茶をやりつつも実は相当に練られた感はある。そこが凡百のパルプ雑誌系の読み物と大きく異なるところだ。
 結果的としてはバカミスと紙一重の物語ながら、これだけ詰め込んだ不可能犯罪の謎をきっちりと解明してくれているところを評価したい。個人的にはマーリニよりも上かな。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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