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 本日の読了本は、アゴタ・クリストフの『どちらでもいい』。『悪童日記』で鮮烈なデビューを飾ったハンガリー出身の作家クリストフの短編集で、そのほとんどがショートショートといってもいいぐらいの短さである。

 どちらでもいい

 実は本書に収められている作品は、彼女の創作ノートなどから採られたもので、長編や戯曲の元になった作品も多いらしい。そういう意味では習作的な意味合いが強いようだが、だからといって本書の価値が下がることはない。アゴタ・クリストフの持ち味が存分に発揮された、実にスリリングな作品揃いなのである。

 例によって現在形を多用した、研ぎすまされた文体は実に強烈である。無駄なことは一切書かず淡々と事実を連ねてゆく。投げやりなどこか虚無的にすら感じられる文体である。なかにはまるで散文詩のような作品もあり、タイプこそ違うけれども城昌幸のいくつかの作品を彷彿とさせる。『悪童日記』をはじめとした三部作では凄まじいテクニックも見せたが、この文体こそが彼女の最大の特徴であり、武器であることは言うまでもないだろう。
 そして、この文体によって語られる話も、毎度のごとく重く暗いものばかりである。その多くには死の影も濃厚であり、読んでいる者を何ともやりきれない気持ちにさせるのもいつもどおり。文体も含めて、こうした作風に、彼女の経歴や出身国であるハンガリーの国情が影響していると考えるのも、あながち間違っているとはいえないだろう。ソ連と西欧諸国の狭間で翻弄され続けた国民である。虚無的な文体なれども、その底にはもちろん著者の苦悩と叫びが流れ続けているのだ。

 ただ、上でも書いたとおり、本書は習作的な作品を集めている。彼女の魅力を削ぐことはないけれども、その他の著作より読みやすいこともまた確か。個人的には初めてクリストフを読む人にこそオススメする次第であり、そのうえでぜひ『悪童日記』三部作を読んでもらいたい。

テーマ:文学 - ジャンル:本・雑誌



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