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 このところのプチ修羅場が一息ついたので、本日はほぼ一日中寝て過ごす。かろうじて書店だけはのぞき、村上春樹訳の『ロング・グッドバイ』とレックス・スタウトの『苦いオードブル』、ウォルター・デヴィスの『ハスラー』を購入。前の二冊は予定どおりだが、『ハスラー』は発売予定を知らなかったので思わず書店でのけぞる。これってあの映画の『ハスラー』の原作なのだ。こんなもん、今頃出すのか? もちろん買うけど。

 ぼちぼちと進めていた石上三登志の『名探偵たちのユートピア』を読み終える。
 名探偵たちが活躍した古き良き時代の探偵小説。今では古典と称されるそんな作品を、著者独自の視点から読み解いてみせた評論集である。元々は東京創元社の『ミステリーズ!』連載されたものだ。
 論旨はなかなか明快である。著者はミステリを「探偵」小説ではなく探偵「小説」として語る。トリックや謎解きという探偵小説に本来必要不可欠な要素を切り離したとき、小説はミステリという呪縛から逃れ、新たな一面を見せてくれる。そんな事例を数々の古典から解説してゆく。
 こういう観点は著者のまったくオリジナルというわけではないが、古典の有名どころをこれだけまとめて考察するケースはあまりなく、非常に面白い。印象や気持ちが入りすぎる文章であり、それほど論理的な解説ではないのだが、積み重ねることによって、その文に説得力を加えることに成功しているように思う。「!」や「…」の多用、断定的な物言いは気になるが、この手の論旨であれば、まあ仕方ないでしょう。熱や勢い優先ということで。
 個人的にもけっこう頷けることは多い。小説としての面白さがあれば、本格として破綻していてもかまわないと考えているので、たとえば『恐怖の谷』の第二部に関しても、子供の頃に面白かったのは明らかにそちらだったのである。本格としては明らかに無駄なその部分を、「無意味」と斬って捨てるのではなく、その「意義」を考えることもそれはそれでやはり重要なことであろう。フィルポッツや乱歩の論もなかなか興味深かった。
 決して直球の評論とはいえないのだけれど、なぜか直球と思ってついつい手が出てしまう、そんな探偵小説愛に溢れた一冊。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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