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 昨年末、師走も押し迫った頃、ネット上で『幻影城の時代』なる本が刊行されるという情報が流れた。『幻影城』といえば乱歩の評論集のタイトルでもあるけれど、もうひとつ、今はなき伝説の探偵小説誌のタイトルでもある。今回の『幻影城の時代』は、その探偵小説誌『幻影城』を回顧する同人誌であるという。これは嬉しいニュースだった。
 私的にはリアルタイムで『幻影城』を読んだことはない。時代的には中学生の頃だと思うが、ミステリは当時から読んでいたにせよ、そこまでマニアックなものを買うはずもないし、第一、北陸の片田舎に住んでいた私の近所の本屋に置いてあるはずもない。なにせハヤカワ文庫すら置いてなかったのだから。
 雑誌の存在を知り、古本屋で買うようになったのは結局、社会人になってからであり、コンプリートもまだしていない(『横溝正史の世界』のみ未入手)。したがって雑誌に対する思い入れみたいなものはむちゃくちゃ強いわけでもないだが、収録されている作品が単純にすごかった。古書店でいにしえの探偵小説の高値に腰を抜かした若輩者には、この小説群は大変ありがたいしろものだったのだ。
 さて、そんな『幻影城』の同人誌が出るという情報は、なかなか興奮を誘うものであった。年明けにさっそく注文を入れ、つい先日手元に到着。一気に読み終えてしまった。
 メインはやはり消息が一時期まったく不明だった元編集長、島崎博氏のロング・インタビュー。だが、それ以外にも当時の編集者、装丁担当のデザイナー、表紙画を描いた画家さんなどが寄稿し、プロの作家や評論家、有名無名の同人の方々も熱い一文を寄せている。資料関係も島崎さんの仕事リストや、通史等、かなりの充実ぶり。もう労作以外のなにものでもない。
 ひとつだけケチをつけさせてもらうとすれば両開きの構成。本家の装丁を踏襲したデザインはなかなかよいのだが、両開きの構成はぶっちゃけ読みにくすぎて、これは勇み足でしょう。

テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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