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 植草甚一の『探偵小説のたのしみ』を読む。戦後の探偵小説界を支えたあの「宝石」誌に掲載された、海外ミステリに関するエッセイ集である。海外ミステリとはいっても翻訳ではなく、海外の雑誌から得た情報や植草さんが自分で集めた原書をもとに書かれたものだ。本書で紹介されている作家はけっこうな量にのぼるが、ざっと挙げるだけでも、ジョン・ル・カレ、セバスチアン・ジャプリゾ、ジョン・フランクリン・バーディン、ライオネル・デヴィッドソン、マーク・マクシェーン、アダム・ホール、ヒュー・ペンティコースト、エマ・レイサンなどなど。現在、翻訳で読めるものを選んでみたが、もちろん当時の日本では知られていなかった作家ばかりで、今、自分たちがこれらの作家の本を翻訳で読めるのは、本書の功績が決して小さくないだろう。
 ところで植草さんのミステリの書評では、事細かにあらすじが紹介されているのが特徴だ(ただし原書の場合)。下手をするとこちらが読むときの楽しみを奪われかねないこともあるのだが、なぜ氏がそのように詳しいあらすじを書いたのか、その理由を作家の海渡英祐氏が解説で推測している。これもなかなか興味深い一文であった。


テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌


 ちょっとミステリ歴の長い人なら、JJおじさんこと植草甚一の名を知らない人はあるまい。ミステリだけではなくジャズや映画等、幅広い評論やエッセイで活躍した人物で、その独特の親しみやすい語り口がとにかく特徴的であった。
 個人的には写真と文体のせいで、「アメリカンナイズされたこじゃれたおじさん」というイメージが大きいが、それは当時の多くの若者にとっても同様だったようだ。テーマがジャズであれ映画であれミステリであれ、氏の書いたエッセイには、植草甚一という人のライフスタイルが強烈に滲み出ており、それがまた高等遊民っぽくてみな憧れたわけである。
 ミステリについての貢献度はもちろん高い。海外の原書によるレビューは当時の翻訳ミステリの指標にもなったほどで、これは植草甚一が作品を評価するとき、オリジナリティを重視したことにもよるだろう。その結果が東京創元社の「クライムクラブ」などに実を結んだのであり、その作品のいくつかは今も文庫化されるなどして版を重ねている(はず)。

 『江戸川乱歩と私』は、晶文社がちょっと前から始めた『植草甚一スクラップ・ブック』復刻シリーズのなかの一冊。江戸川乱歩の思い出を中心に、メグレや007などの評論、海外ミステリーの紹介をまとめたものだ。
 先ほども書いたが、氏のポイントはオリジナリティに置かれているので、今読むときついものもあるかもしれない。ただ氏が書いたものは、紹介文を読むだけで傑作のような印象をもってしまうから不思議。なかには一昨年評判になったマイケル・ギルバートの『捕虜収容所の死』なども採り上げられており、眼力はさすがである。

 ちなみに晶文社の『植草甚一スクラップ・ブック』だが、本書以外のミステリ関係では『クライム・クラブへようこそ』と『探偵小説のたのしみ』が予定されている。こちらも押さえておかねば。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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