どうもバタバタしていて落ち着かん。水曜はやたらと忙しくて遂に朝帰りとなるし、おかげで勤労感謝の日はほぼ寝て過ごす羽目になってしまった。この日記にももう少し身辺雑記をメモ程度に残しておきたいのだが(これはあくまで自分のため)、仕事以外あまり大した出来事がないのが困ったものだ。たまにあっても、日中にあったことを書こうとするとなぜかネタを忘れてしまうし。
そんなこんなで本日も読書感想。
読了本はH・C・ベイリーの『フォーチュン氏を呼べ』。
フォーチュン氏ものはホームズのライバルたちの中でも、比較的特徴が薄く、目立たない存在である。思考機会や隅の老人、ソーンダイク博士などのアクの強いキャラクターに比べれば、どうしても地味な印象を受けてしまうのは致し方あるまい。私も二十年以上前に『フォーチュン氏の事件簿』(創元推理文庫)を読んだものの、どういう探偵だったのかほとんど印象に残っていない。
ただ、リアルタイムではフォーチュン氏ものはかなり人気があったようだ。今回の読書で少しその良さがわかった気がする。
まず、物語性とトリック・ロジックの部分がほどよいバランスで両立していること。次にフォーチュン氏のキャラクターが、際だった個性に欠ける代わりに、嫌みのない万人に愛される人柄になっていること。そして、自ら法の執行者たる役目をまま負っている場合があること。最後のポイントがけっこうミソで、毒の少ないこの物語群において、絶対的な正義を追求する姿勢はかなり特徴的だ。これがこの短編集だけのものか、あるいはシリーズ全編を通した特徴なのかはわからないが、少なくとも本書を読む限りでは、なかなか興味深いところだった。話によっては、それが終盤のどんでん返しにつながるケースも多く、少なくとも半数の作品ではそれが成功していると思う。
なお、今回読んだ短編集は、日本独自で組んだ傑作集ではなく、フォーチュン氏初登場の「大公殿下の紅茶」を含む第一短編集をまるまる訳したものだ。あえてそうしたからには、今後も順番に訳していく予定があるからだろうか? 個人的にはぜひとも続刊を希望。
最後に収録作。
The Archduke's Tea「大公殿下の紅茶」
The Sleeping Companion「付き人は眠っていた」
The Nice Girl「気立てのいい娘」
The Efficient Assassin「ある賭け」
The Hottentot Venus「ホッテントット・ヴィーナス」
The Business Minister「几帳面な殺人」