仕事絡みで幕張メッセで本日より開催の「東京ゲームショウ2008」へ。ネタ的に書きたいことはいろいろあれども、なんせ仕事絡みだし(笑)、このブログとは趣旨も違うので割愛。
ただ、ミステリファンとしては、フロムソフトウェアのDS用ソフト『犬神家の一族』がさすがに気になった。西村京太郎や赤川次郎あたりは過去にも何度かゲームになっているのだが、おそらく横溝正史は初めてではないか?
金田一耕助の頭を掻くことで推理を進めたり、キーワードを登場人物に投げかけることで心理を揺さぶったりと、原作のネタやミステリ的なギミックをシステムに活かしているのがなかなか楽しそう。雰囲気を出すために、あえてモノクロ・墨絵調というこだわりも良さげである。ただ今時の若い人に受けるかどうかはわからんが。ちなみに第二弾の『八つ墓村』も決まっているそうな。
スコット・スミスの『ルインズ 廃墟の奥へ(下)』読了。
ううむ、これは問題作だわ(笑)。上巻の感想で少し粗筋を書いたが、まさかその内容のまま、ラストまでもっていくとは夢にも思わなかった。

基本的にはジャングルで足止めをくらった若者たちが、超強大なる知恵と食欲を備えた謎の植物からいかにして生き延びるのか、というお話なのだが、上下巻を本当にそれだけで突っ走るのである。
そしてその長丁場を支えるのは、とにかく徹底的な描写だ。植物と人間の戦いは壮絶なまでの心理戦であり、したがって登場人物たちの精神状態が克明に描かれていく。そのときどきで焦点を当てる人物を変え、彼らの主義やエゴのすべてをあぶり出し、壊れていく様を描く。加えてスプラッタ系描写も実にえぐいものであり、間違っても食事をしながら読む本ではない。とにかくいろいろな意味でパワーを秘めた小説であり、読み終えるのにこちらも相当エネルギーを費やした気がする。
ただ、惜しむらくはそのパワーが空回りしている。基本的にこういう設定は別に嫌いではないし、ストーリーが単純だから悪いというわけではない。要は著者自らがプロットを気にせず書いたというように、欠点もまた多いのである。例えば主人公たちの掘り下げ方にもムラがあるし、前半は思わせぶりな描き方も多く、誤った伏線の張り方にいらいらする(特にギリシャ人たちの描き方は非常にひっかかる)。また、「プロットを気にせず書いた」という割には、著者のイメージする結果に、登場人物たちの言動を合わせすぎているきらいもある。だからところどころで腑に落ちない展開もちらほら。ううむ。
とはいえ描写云々や多少のアラは、実はこの際重要ではないのである。本書に限っていえば本質的な問題は、技術というより方向性であろう。スコット・スミスがなぜこういうものを書きたかったのか、本当に十三年待たせた読者にこれを読ませたかったのか、というところに尽きる。
文学賞でも、受賞後の第二作が難しい、とはよく言われることだが、それにしても。