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 新年早々、風邪とじんま疹のダブルインパクトで完全にダウン。じんま疹は年末ぐらいからやや再発気味だったのが、今週の火曜頃から急速に悪化し、最終的にはほぼ全身に発生という最悪の状況。木曜あたりは試合後のボクサーのように顔が腫れ上がる始末である。同時に水曜頃から風邪をこじらせて三十八度の高熱が二日ほど続き、もうヘロヘロ。今日になってようやく腫れも熱もひき、少し動けるようになったのだが、まだ予断は許さない状況ゆえ、この週末もほとんど自宅で休養の予定。
 どちらもハッキリした原因はなく、体力が低下しているときに徹夜や深酒、ストレス、気候の変化等で一斉にスイッチが入ったのではという病院の話だったが、ううむ、年末はそれなりに休んで万全のはずだったんだがなぁ。

 火の樹液

 というわけで、更新もぼちぼち再開。
 今年、最初の読了本は、宮田亜佐の『火の樹液』である。明らかに『本格ミステリ・フラッシュバック』や『幻影城の時代 完全版』の影響であるな(苦笑)。まずはストーリーから。

 富岡大衆食堂のオーナー、富岡貞五郎。いまや名誉欲と性欲にしかこだわりのないこの俗な老人のもとへ、橋梁学の権威である桑長教授から面会希望の連絡があった。名誉欲に胸膨らませて約束の場所へ赴いた富岡だったが、そこで知らされたのは、かつての同僚の死であり、そしてかつて彼らが関与したある秘密についての脅迫めいた話であった。やがてその富岡も謎の死を遂げ、K時事新報の若手記者、宮口がフィアンセと共に事件の謎を追う……。

 本書は幻影城ノベルスの一冊だが、『幻影城』とはそもそもかつての名作を復刻・紹介する目的で誕生した探偵小説専門誌である。もちろん乱歩の書いた評論集からまんま拝借したものだ。その雑誌『幻影城』もやがて新人作家を輩出するようになり、泡坂妻夫、連城三紀彦、栗本薫、竹本健治らといった錚々たるメンバーが世に出ることになる。そして宮田亜佐もまた『幻影城』から生まれた作家の一人だ。
 前置きが長くなってしまったが、幻影城に対するそれらのイメージが強すぎてか、本書『火の樹液』を端正な本格ものだと思っていたのは、我ながら不覚であった。
 出だしこそ悪くない。富岡というただの成り上がりに思えた男が、実は元刑事であり、同僚や検事らを巻き込む何かの陰謀に荷担していたらしいことを、読者は早々に知らされる。やがて命を狙われると確信した富岡は防衛策に走るが、その甲斐なく犯人の毒牙にかかってしまう。そして始まる警察の捜査、記者の取材……。
 妙な感じになるのはこの辺りからで、探偵役となる記者、宮口の調査が進むと、次第に汚職をテーマとする社会派っぽく変化する。そのくせダイイングメッセージなどといういかにも探偵小説的なセリフまで飛び出し(そのくせネタはひどい)、やがて宮口のフィアンセまでが調査に協力する展開となってからはますます雲行きがあやしくなって、最終的な着地点ときたら……という具合。
 著者の他の長篇を読んだことがないので、あくまで本書を書いた時点で、という話になるが、とにかく長篇をまとめるほどの力量がないのではないか。それぐらい方向性や風味のハッキリしない作品だ。おまけに時系列や場面転換もギクシャクしている。事件の真相や著者の得意分野を考慮すると、自ずとコンセプトはハッキリしているはずなのに、それを活かす適切な手段を用いていないというイメージ。全体的に軽快な語り口も、本書に関してはもっと抑えた方が、ラストの余韻を活かすためにも良かったはずだ。

 考えたら、本書が傑作であれば、もっと知られているはずなので、この程度の出来なのも致し方あるまい。駄作とまではいかないが、わざわざ古書店で大枚はたいてまで読むほどの作品でないことは確かだ。『幻影城』に関係するものは何でも読んでおきたい、という方であれば。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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