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 最近あちらこちらのミステリ系HPで長崎出版のことが話題になっている。あまり耳にしたことのない版元だが、なんとクラシックミステリに名乗りを上げたというではないか。叢書名はGem Collectionというらしく、第一弾はマイケル・イネスの『証拠は語る』。いやはやただでさえ購入&読書のペースが追いつかないのに、さらに追い打ちをかけられる感じだ。とりあえずは買うしかないのだが、このムーヴメントは果たしてどこまで続くのか。

 で、そんなムーヴメントの牽引役としてこの一年を引っ張ってきた感のある論創社から、本日の読了本。ジョン・エヴァンズの『悪魔の栄光』である。
 このシリーズも当初のアトランダムな性格が薄れて本格がメインになりつつあるが、本書は珍しく正統派ハードボイルド。しかも長らく翻訳が待たれていた最後の「栄光シリーズ」なのだ。
 思えばポケミス、河出で同シリーズを読んだのはもう十年以上も前になるが、当時から、なぜシリーズ二作目にあたる本書だけが未訳だったのかが疑問だった。もしかすると極端に出来が悪いか、よほど日本人向けのネタではないか、このどちらかだと思っていたのだが、いや、まったくの杞憂であった。逆になぜ本書が未訳だったのか不思議なほどの出来である。

 私立探偵ポール・パインはマクナマス司教から人捜しを依頼される。数日前、司教の前に現れたワーツと名乗る男が、なんとキリストの直筆だという古文書を売りにきたのだという。しかし、その日、古文書を持っていなかったワーツは、翌日出直すといいながらもぷっつり消息を絶つ。パインはワーツの宿泊するホテルを探し当てるが、そこで何と死体を発見してしまった……。

 上でも書いたが、実にオーソドックスなハードボイルド。主人公のイキの良さ、テンポのよいストーリー、怪しい美女やギャングたちと、お膳立てはばっちり。だが類型的と侮るなかれ。本書はそういったハードボイルドにありがちなキーワードを踏襲しているわけではなく、反対に先駆けとなった側なのだ。ハメットから大きく広がることになったハードボイルドというジャンルを真面目に受けとめ、大人の読み物として熟成させた、そんなイメージ。確かに気軽に消費されるだけの物語ではあるが、それを職人的にきっちりとこなしたのがエヴァンスなのではないかと思う。意外な犯人、どんでん返し、関係者を集めての大団円といい、本格好きもニヤリとする佳作である。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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