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 『宮野村子探偵小説選II』読了。
 先月読んだ『宮野村子探偵小説選I』と同様、実に味わい深くスリリングな一冊。玉石混淆の感が強い「論創ミステリ叢書」なれど、『宮野村子探偵小説選』の二冊は間違いなくトップレベルである。
 戦後の女流探偵小説家を挙げるとき、仁木悦子はまず外せないところだと思うが、宮野村子はその実力を考えると二番手に挙げられる資格を十分に備えている。仁木を陽とすれば宮野はまさしく陰。確かにトリック等に関してはめぼしい成果を上げていないものの、この息苦しいまでの心理描写を基調とした犯罪劇の数々は、余人を持って代え難い。
 作品のほとんどがこれまで読めなかったという事実にはただただ驚くしかなく、宮野村子は普通に文庫化されて普通に読まれるべき作家であると断言する。

 男女の関係や血の絆など、多少の変化はあるものの、宮野村子の作品のテーマは基本的に人間の愛憎である。彼女はそのテーマに沿って作品内で執拗にそれを繰り返し語り、何層にも塗り固めてゆく。一行一行の描写が濃密で、なんてことを『~I』の感想でも書いたのだが、とにかく読者を洗脳するかのごとく、呪文のように繰り返し語るのである。
 本書の作品のうち、「令嬢殺人事件」から「銀杏屋敷の秘密」までの五作は短編集『紫苑屋敷の謎』を丸まる収録したものだが、これは十年間の作品から著者自らセレクトしたものというだけあって、とりわけ強烈。正直、イッキ読みはおすすめできないし、お子様は避けた方が無難だろう。一作読み終える度に相当のダメージを覚悟すべきで、ラストでどんな結末が待っていようとも、読み手は主人公と共に、それを定められた運命のごとく受け入れるしかないのである。

 宮野村子探偵小説選II

<創作篇>
「令嬢殺人事件」
「いたずら小僧」
「紫苑屋敷の謎」
「夢の中の顔」
「銀杏屋敷の秘密」
--------------------
「考へる蛇」
「猫と鏡」
「愛憎の倫理」
「ナフタリン」
「神の裁き」
「相剋の図絵」
「悪魔の魂」
「ヘリオトロープ」
「二冊のノート」
「悪魔の瞳」
「廃園の扉」
「手紙」
「愛憎の果て」
--------------------
<随筆篇>
「アンケート」
「孫の言葉」
「姉女房」
「ひとりごと」
「私より長生きを」
「某月某日」

 論創社さん、次は長篇の方をぜひ!


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 例のミサイルはとりあえず大きな事故につながらなかったのは幸いだが、あの国の考えることだけはほんとにわからん。国自体の精神年齢が子供過ぎますな。こういう騒ぎは、ほんとスパイ小説や軍事小説だけで十分である。


 『宮野村子探偵小説選I』読了。岩谷選書版の『鯉沼家の悲劇』を丸ごと採録し、プラス短篇九作、随筆四編を収めた作品集である。以下は収録作。

<創作篇>
「鯉沼家の悲劇」
「八人目の男」
「柿の木」
「記憶」
「伴天連物語」
「柿の木」(シュピオ版)
「斑の消えた犬」
「満州だより」
「若き正義」
「黒い影」
「木犀香る家」
「匂ひのある夢」
「赤煉瓦の家」
「薔薇の処女」

<随筆篇>
「はがき回答」
「宿命ーわが小型自叙伝」
「生きた人間を」
「奇妙な関係ー大坪砂男様に」 

宮野村子探偵小説選I

 探偵小説は芸術か娯楽か、なんて論争が戦前戦後とあったわけだが、概ね芸術派の代表だったのが木々高太郎で、宮野村子はその木々に師事し、作家としての位置を固めていった。宮野は元々、木々のファンだったというから、探偵小説を書くに際し、謎解きよりその人間やドラマにより興味を強くもっていたと想像するのは難しいことではない。
 本書はそんな宮野村子の特徴がいかんなく発揮された作品集で、実に読み応えがあった。
 人間関係が壊れた旧家、毎度のように縁談相手に起こる不審な事故、奉公に行った先でその家の娘を溺愛する少女等々……。彼女の作品世界はちょっとヤバ気な設定ばかりであり、そのなかで営まれる登場人物たちのドラマや心理がまたなんとも。それほど予想外に進むわけでもなく、驚くような仕掛けなども少ないのだが、とにかく一行一行の描写が濃密で、しかも実にウェット。個人的にはこのウェット感が好みで、いわゆるサスペンスとも違う、数多の人間関係がじわじわとカタストロフィに向かっていく有様をスローで見せられているという感じ。非常に日本的なサスペンスである。誤解を覚悟で書くと、宮野村子の小説はこの筆力だけで読ませるといっても過言ではないだろう。
 ただ、作品によっては結末を急ぎすぎるきらいがあり、時としてそこが作品のトーンを一気に落とす場合もあるのはいただけない。

 作品単位では、やはり長篇「鯉沼家の悲劇」は外せないのだが、惜しむらくは、上で書いた欠点“急ぎすぎる結末”がある。当時、一週間で書き上げたという事情はあるのだが、もっと余裕のある紙数を使って書き直せば、戦後ベストテン級の傑作になった気もする。いや、今の状態でも十分に凄いのだが、それだけにもったいないのだ。
 実際、「柿の木」は、初稿時のシュピオ版と、単行本に収められた改稿版が両方収録されているのだが、これは圧倒的に改稿版がいい。今なら異常心理ものといえる作品だが、読んだ後かなりブルーになれることは保証する(苦笑)。

 今回、初めて宮野村子の作品をまとめて読むことができたが、とにかく予想以上に安定したレベルであることに驚いた。個人的には好きな作家だったが、そうはいっても過去に読んだのは数作だ。いざ読んでみると、それ以外の作品はダメダメの可能性もあるわけで、得てして幻の作家とはそういうものだから(苦笑)。
 そういう不安を気持ちよく払拭してくれた本書は間違いなく貴重な一冊。既に論創社のHPでは続巻の収録作も発表されており、こちらも期待大である。


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